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[S14-01] 東北地方太平洋沖超巨大地震の発生確率について
東北地方太平洋沖を震源とする超巨大地震(東北地方太平洋沖型)について、政府地震調査委員会は、繰り返し発生する地震に対するBrownian Passage Time 分布(BPT分布)モデルを用いて、今後50年における地震発生の確率を評価している。長期評価報告書(平成31.2.26)によると、仙台平野で採取された5層の津波堆積物に基づき、5回の地震発生が確認されている。最初の2回の発生時期には、200年程度の不確定性がある。第3番の地震は869年の貞観地震、第5番は2011年の東北地方太平洋沖地震であるが。第4番については2つの歴史地震(1454年享徳地震、1611年慶長三陸地震)が候補とされている。報告書では、発生年が不確定な3個の地震については乱数により発生年を仮定し、再現し得る多数の時系列ついてBPTパラメータを最尤法で求め、その出現頻度を基に最適解を求めている。
地震発生年の不確定性に関しては、別の報告書「長期的な地震発生確率の評価手法について」(評価手法、平成13年6月)で、モデルパラメータ推定のための尤度関数が多重積分の式で与えられている(Ogata,1999 JGR)。この手法の適用対象と見られる地震として、東北地方太平洋沖型の他に、相模トラフ沿いのM8クラス地震(関東M8:調査委員会報告書,平成26年4月)と、千島海溝沿いの超巨大地震(17世紀型:平成29年12月)が挙げられる。このうち関東M8の評価では、評価手法に記載された多重積分と同等なモンテカルロ法(Parsons,2008)によって最尤パラメータが推定されている。その後の報告書(17世紀型,東北地方太平洋沖型)ではこれとは異なる方法(上記)が採用されている。ここでは、評価手法記載の方法によって、BPTモデルパラメータの最尤解を求め、報告書の値と比較する。
モデルパラメータの最尤解を推定する際に、第3番目の貞観地震を境に計算を分ける。第1番~第3番では、評価手法の方法に従い尤度を数値積分により求める。第1番と第2番の地震発生年が、積分変数となる。尤度は、平均発生間隔300年~900年、ばらつきパラメータ 0.1~2.0の範囲でデタラメに選んだ10,000点において計算する。また、後半の第3番~第5番については、重み付き尤度法に従って、2通りの第4番発生年に対応する2個の尤度の相乗平均を尤度とする。後半については、この期間における最尤値を基準として、先に選んだ10,000点における尤度の相対値を求める。この相対値と第1番~第3番の数値積分との積として、第1番~第5番における尤度を得る。
検算として、第1番~第3番の数値積分に代えてParsons(2008)によるモンテカルロ法を実施する。計算時間短縮のため時間軸を反転し、第3番地震から遡ることとする。パラメータの各点において5000時系列を生起し、不確定期間に合致する時系列を計数する。合致時系列数は第1番~第3番の積分値とよい比例関係を示す。尤度は 平均間隔560年ばらつき0.2で最大となる。全期間に対する尤度の分布を図に示す。
報告書(平成31.2.26)の図4-10と比較すると、違いは次の通りである。報告書では、平均発生間隔は全て約550年から約600年の50年間に収まっている。今回の結果では、800の等高線がほぼ同じ範囲になっている。尤度400の等高線では、約500年から670年の範囲に広がっている。報告書の方法では再現可能な時系列の平均間隔が最尤解となるため、第1地震の不確定性200年が50年(4分の1,地震間隔数の逆数)に縮小したと推察できる。これに対して、評価手法の方法では、任意のパラメータ値に対して尤度が計算される。また、ばらつきパラメータについては、図4-10では0.22付近に頻度の不連続が見られる。第4の地震が1611年慶長三陸地震の場合には、ばらつきパラメータが0.22以上となるため不連続が生じたと推察される。
平均的な発生確率は、各パラメータに対する発生確率の加重(通常は尤度)平均で表される。図4-10と今回の結果を比べると、ばらつきパラメータ0.22以下や平均間隔約550年以下あるいは約600年以上のパラメータに対する確率の寄与が、報告書の方法では少ないことになる。今回の例では最新地震(2011年)からの経過年数が短いため平均的確率値に差は生じていないが、経過年数の長い地震で有意な差が生じることもあり得る。手法の妥当性について検討が必要である。
地震発生年の不確定性に関しては、別の報告書「長期的な地震発生確率の評価手法について」(評価手法、平成13年6月)で、モデルパラメータ推定のための尤度関数が多重積分の式で与えられている(Ogata,1999 JGR)。この手法の適用対象と見られる地震として、東北地方太平洋沖型の他に、相模トラフ沿いのM8クラス地震(関東M8:調査委員会報告書,平成26年4月)と、千島海溝沿いの超巨大地震(17世紀型:平成29年12月)が挙げられる。このうち関東M8の評価では、評価手法に記載された多重積分と同等なモンテカルロ法(Parsons,2008)によって最尤パラメータが推定されている。その後の報告書(17世紀型,東北地方太平洋沖型)ではこれとは異なる方法(上記)が採用されている。ここでは、評価手法記載の方法によって、BPTモデルパラメータの最尤解を求め、報告書の値と比較する。
モデルパラメータの最尤解を推定する際に、第3番目の貞観地震を境に計算を分ける。第1番~第3番では、評価手法の方法に従い尤度を数値積分により求める。第1番と第2番の地震発生年が、積分変数となる。尤度は、平均発生間隔300年~900年、ばらつきパラメータ 0.1~2.0の範囲でデタラメに選んだ10,000点において計算する。また、後半の第3番~第5番については、重み付き尤度法に従って、2通りの第4番発生年に対応する2個の尤度の相乗平均を尤度とする。後半については、この期間における最尤値を基準として、先に選んだ10,000点における尤度の相対値を求める。この相対値と第1番~第3番の数値積分との積として、第1番~第5番における尤度を得る。
検算として、第1番~第3番の数値積分に代えてParsons(2008)によるモンテカルロ法を実施する。計算時間短縮のため時間軸を反転し、第3番地震から遡ることとする。パラメータの各点において5000時系列を生起し、不確定期間に合致する時系列を計数する。合致時系列数は第1番~第3番の積分値とよい比例関係を示す。尤度は 平均間隔560年ばらつき0.2で最大となる。全期間に対する尤度の分布を図に示す。
報告書(平成31.2.26)の図4-10と比較すると、違いは次の通りである。報告書では、平均発生間隔は全て約550年から約600年の50年間に収まっている。今回の結果では、800の等高線がほぼ同じ範囲になっている。尤度400の等高線では、約500年から670年の範囲に広がっている。報告書の方法では再現可能な時系列の平均間隔が最尤解となるため、第1地震の不確定性200年が50年(4分の1,地震間隔数の逆数)に縮小したと推察できる。これに対して、評価手法の方法では、任意のパラメータ値に対して尤度が計算される。また、ばらつきパラメータについては、図4-10では0.22付近に頻度の不連続が見られる。第4の地震が1611年慶長三陸地震の場合には、ばらつきパラメータが0.22以上となるため不連続が生じたと推察される。
平均的な発生確率は、各パラメータに対する発生確率の加重(通常は尤度)平均で表される。図4-10と今回の結果を比べると、ばらつきパラメータ0.22以下や平均間隔約550年以下あるいは約600年以上のパラメータに対する確率の寄与が、報告書の方法では少ないことになる。今回の例では最新地震(2011年)からの経過年数が短いため平均的確率値に差は生じていないが、経過年数の長い地震で有意な差が生じることもあり得る。手法の妥当性について検討が必要である。