日本地震学会2020年度秋季大会

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Room A

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15]AM-1

Fri. Oct 30, 2020 9:00 AM - 10:15 AM ROOM A

chairperson:Susumu Kurahashi(Aichi Institute of Technology), chairperson:Masatoshi Miyazawa(DPRI, Kyoto Univ.)

9:30 AM - 9:45 AM

[S15-12] Generation of long period velocity pulses near surface fault during the 2008 Wenchuan earthquake

〇Susumu Kurahashi1, Kojiro Irikura1 (1.Aichi Institute of Technology)

2008年中国四川省を震源としたWenchuan earthquake (Mw8.0)が発生した。この地震では、地表地震断層が200 km以上に渡って現れ、最大で水平成分で4.9m、上下成分で6.5mの断層変位が確認されている(Yu et al, 2010)。また、既往のInSARによる地殻変動結果や波形インバージョン結果では,断層の北部と南部では傾斜角が異なるモデルが設定され解析がなされるなど,断層形状が複雑であることが示唆されている。(例えば国土地理院;2008, Koketsu et al.;2008)。さらに、図1(右)に示すように、この地域周辺のテクトニクスや余震分布などの結果より、南部のセグメントでは平行に延びる2本の断層での活動がみられ、震源断層は同じで地表に近づく際に2手に別れる形であることが示唆されている(例えばZhao et al;2011, Zhang et al.;2018)。

 強震動記録については、China's National Strong Motion Observation Networkにより地表断層周辺地域においても複数の観測点で貴重な記録が得られている。地表地震断層付近には2観測点(MZQ観測点とSFB観測点)があり、最大加速度(フィルターなし)はMZQ観測点で約800gal,SFB観測点で約600galであった。また、最大速度、永久変位(ローパスフィルター:~1.0Hz)は、MZQ観測点では約100cm/s、100cm、SFB観測では約50cm/s、50cmであり、特にMZQでは長周期速度パルスおよび比較的大きな永久変位が観測されている(図1右)。

 これらの観測記録を再現する震源モデルとして、Kurahashi and Irikura(2010)により、経験的グリーン関数法(Irikura, 1986)と離散化波数法(Bouchon, 1981)のハイブリッド法により強震動生成域(Strong motion generation area : SMGA)の震源モデルが構築されているが、単純化された一枚断層が想定されたもので、複雑な地表断層の幾何形状は考慮されていない。最近では、2016年熊本地震の事例のように地表付近に長周期速度パルスや永久変位を生成する領域(ここでは長周期地震動生成域(Long period generation area):LMGAと呼ぶ)が存在する可能性が指摘されており(例えばIrikura et al.;2019)、Wenchuan earthquakeでもLMGAの存在がするか否かの検証は、強震動予測の観点からもきわめて重要である。

 本研究では、Wenchuan earthquakeで活動した平行に走る2本の断層(図1右)を想定断層モデルして、MZQとSFB観測点の観測記録およびInSARによる永久変位値を再現する震源モデルを構築する。


謝辞:強震動記録は,中国地震局によるthe National Strong Motion Observation Networkの観測データを使用させていただきました。記して感謝申し上げます.