日本地震学会2020年度秋季大会

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Session for Selection of Student Presentation Award

Session for Selection of Student Presentation Award » Room A (S01, S15, S16)

[SPA]PM-3

Thu. Oct 29, 2020 4:00 PM - 5:00 PM ROOM A

chairperson:Wataru Suzuki(NIED)

4:10 PM - 4:20 PM

[S15P-08] Theoretical analysis of the long-period velocity pulses observed in the 2016 Kumamoto Earthquake Sequence

*Kotaro Tarumi1, Tomotsugu Watanabe1, Masanao Komatsu1, Hiroshi Takenaka1 (1. Okayama University)

1.Introduction
2016年熊本地震では,震源断層ごく近傍で震度7を記録した地震動が観測され,地殻変動を伴った大きな被害が発生した.特に本震(MJMA 7.3)では,西原村小森(熊本県自治体震度観測計)において,観測された加速度記録からの積分によると,地動速度では時間幅約3秒の長周期速度パルスがEW成分とUD成分で見られ,地動変位では水平動,上下動共に約2 mの永久変位が生じたと推定されている.2016年熊本地震の前震と本震に関する震源断層のすべりインバージョンの研究は複数行われており,その多くで西原村の直下にアスペリティが存在し,その内部における破壊フロントはアスペリティ下端付近から地表面に向かって進行したことが示唆されている.そのため,西原村小森で観測された長周期速度パルスの原因が,破壊フロントの進行方向で遠地S波に起因して大振幅パルスが生じる破壊指向性(Forward directivity)なのか,あるいは震源断層ごく近傍で卓越する近地項,中間項の効果なのかが議論されている.そこで本研究では,震源断層を単純化したモデルを設定し,全無限均質媒質中の有限矩形断層から生じる近地項,中間項,遠地項を分離した変位の解析解(垂水・竹中,2020,JpGU-AGU)を用いて,長周期速度パルスの成因について理論的に検討した.

2.Simple Asperity Model
Figure.1は本研究で設定した非常にシンプルなアスペリティモデルと西原村を模した観測点の例である.本研究では,Asano & Iwata (2016)を参考に,西原村直下と推定されたアスペリティのみをモデル化し,その寄与のみを考慮した.均質媒質中のP波速度は6.0 km/s,S波速度は3.5 km/sとし,アスペリティの長さは10 km,幅14 km,すべり3.7 m,ライズタイム1.5 s,すべり角-140°とした.アスペリティ内部を進行する破壊フロントは水平で,破壊伝播速度はS波速度の0.78倍とし,地表面に向かって進行すると仮定した.また,地表面では自由表面の効果として,振幅を2倍している.

3.Numerical results
Figure.2に地動速度(水平成分)の数値計算結果を示す.全変位に加えて,近地項(本研究では近地項と中間項の和)と遠地項も同様に示している.結果は,非常にシンプルなモデルを用いたにも関わらず,西原村で観測された(加速度記録から推定された)速度波形の特徴,特にEW成分とUD成分で観測された時間幅約3秒の長周期速度パルスを再現できている.この結果により,長周期速度パルスの生成には,近地項が主に寄与しているが,EW成分では遠地項(主に遠地S波)も寄与しており,破壊指向性の効果も考えられる.実際の震源過程の複雑さや背景領域の寄与等を考慮した綿密なモデリングをすることによって,より良く観測波形を再現できるかもしれない.