4:00 PM - 5:30 PM
[S16P-04] Influence of Seismic Source Locations of Interplate Earthquake along the Nankai Trough on Long-Period Ground Motions in Osaka Bay Area
2011年東北地方太平洋沖地震 (以下,3.11本震) の際には,震源から遠く離れた大阪湾沿岸部で周期6~8秒の成分が卓越する長周期地震動が発生した。これにより,超高層建物内で国内最大級の応答変位が観測され,スプリンクラーの破損やエレベーターの停止などの建物被害の発生が報告された。3.11本震時の強震記録の分析や計算から,大阪平野内の堆積地盤により沿岸部で周期6~8秒の地震動成分が増幅したことが指摘されている。今後,南海トラフを震源とするM 8~9クラスの巨大プレート境界地震の発生が危惧されている中で,2025年には大阪府夢洲において大阪・関西万博の開催が予定されており,大阪湾沿岸部での地震動予測は重要な課題といえる。
不整形な地盤構造を有する堆積平野では長周期地震動の最大振幅や卓越周期が震源位置によって変動することが指摘されており,変動の一因として不整形な地盤構造への地震波の入射方向による伝播経路の違いが挙げられている。大阪平野は上町断層帯などが伏在する複雑な地盤構造を有しており,震源位置によって長周期地震動の性状が変動することが推察される。天藤・他 (2015) は大阪湾沿岸部における長周期地震動の地震波入射方向の影響について,水平SH波入射による地盤応答解析を三次元差分法により行い,南海トラフ沿いを想定した方向から地震波が入射した場合,3.11本震時と比較して長周期地震動が励起される可能性を示唆している。一方,南海トラフ沿いで発生するプレート境界地震について,断層面内の震源位置が大阪湾沿岸部における長周期地震動評価に与える影響を評価した例は少ない。
本稿では、図1に示す大阪湾沿岸部の埋立地に位置するKiK-net此花 (OSKH02) を対象地点とし,南海トラフ沿いで発生するプレート境界地震の震源位置が大阪湾沿岸部における影響を数値計算により評価した。大阪平野の堆積層やプレート境界の地盤構造を考慮した地震動評価には三次元差分法[永野(2004)]を利用し,相反定理に基づき多数の震源点に対するグリーン関数を算定し地震動を評価した。震源位置が与える影響を検討するため,震源は全て点震源とし,フィリピン海プレートの上面付近に震央位置を10km間隔で設定した。震源域は,地震調査研究推進本部 (2013) において示された,南海トラフ沿いの想定震源域とした。以上より,計算された速度波形について水平二方向の合成を行い,それぞれの震源での最大速度を求めることで震源位置が与える影響を評価した(図2)。設定した震源の中から,図2に示す震源1および震源2を選択し,通常の三次元差分法を用いた順解析を行った(図3および図4)。以下に得られた知見をまとめる。①僅かな震源位置の違いで,OSKH02および大阪平野内の地震動の空間分布が大きく変動した(図2~図4)。②特にOSKH02の南東方向の位置からの地震動が大きく増幅した。南北方向に縞状の速度分布がみられた(図2)。③南海トラフ沿いの付加体(図5)を地震基盤(VS=3200m/s)に置換したところ,縞状の速度分布はみられなかった(図6)。
図の作成にGMTを利用させて頂きました。ここに記して御礼申し上げます。
不整形な地盤構造を有する堆積平野では長周期地震動の最大振幅や卓越周期が震源位置によって変動することが指摘されており,変動の一因として不整形な地盤構造への地震波の入射方向による伝播経路の違いが挙げられている。大阪平野は上町断層帯などが伏在する複雑な地盤構造を有しており,震源位置によって長周期地震動の性状が変動することが推察される。天藤・他 (2015) は大阪湾沿岸部における長周期地震動の地震波入射方向の影響について,水平SH波入射による地盤応答解析を三次元差分法により行い,南海トラフ沿いを想定した方向から地震波が入射した場合,3.11本震時と比較して長周期地震動が励起される可能性を示唆している。一方,南海トラフ沿いで発生するプレート境界地震について,断層面内の震源位置が大阪湾沿岸部における長周期地震動評価に与える影響を評価した例は少ない。
本稿では、図1に示す大阪湾沿岸部の埋立地に位置するKiK-net此花 (OSKH02) を対象地点とし,南海トラフ沿いで発生するプレート境界地震の震源位置が大阪湾沿岸部における影響を数値計算により評価した。大阪平野の堆積層やプレート境界の地盤構造を考慮した地震動評価には三次元差分法[永野(2004)]を利用し,相反定理に基づき多数の震源点に対するグリーン関数を算定し地震動を評価した。震源位置が与える影響を検討するため,震源は全て点震源とし,フィリピン海プレートの上面付近に震央位置を10km間隔で設定した。震源域は,地震調査研究推進本部 (2013) において示された,南海トラフ沿いの想定震源域とした。以上より,計算された速度波形について水平二方向の合成を行い,それぞれの震源での最大速度を求めることで震源位置が与える影響を評価した(図2)。設定した震源の中から,図2に示す震源1および震源2を選択し,通常の三次元差分法を用いた順解析を行った(図3および図4)。以下に得られた知見をまとめる。①僅かな震源位置の違いで,OSKH02および大阪平野内の地震動の空間分布が大きく変動した(図2~図4)。②特にOSKH02の南東方向の位置からの地震動が大きく増幅した。南北方向に縞状の速度分布がみられた(図2)。③南海トラフ沿いの付加体(図5)を地震基盤(VS=3200m/s)に置換したところ,縞状の速度分布はみられなかった(図6)。
図の作成にGMTを利用させて頂きました。ここに記して御礼申し上げます。