11:30 AM - 11:45 AM
[S17-05] Tsunami generation by sea-surface pressure change: A 3-D model for open ocean observations
はじめに
気圧変化によって発生する津波は気象津波と呼ばれる.観測データは験潮記録がほとんどであり,長波を想定した水平2次元のモデルが主にデータ解析に利用されている(例えば,Hibiya and Kajiura 1982; 坂本・他2012; 久保田・他 2020地震学会).
一方,現在では海底圧力計が広く実用化され,沖合や津波発生域での海底圧力変化が観測できるようになり,津波発生プロセスの理解が進展している.例えば,地震による津波発生の場合,震源域内に設置された海底圧力計によって,津波と海底運動の両者を含む海底圧力変化が明瞭に観測され,流体-弾性体力学のシミュレーション (例えば,Saito 2019; Maeda et al. 2020) に基づく解析から破壊継続時間や応力降下量を通常の津波解析より詳細に推定することができる (Kubota et al. 2020).
本研究では,3次元流体運動を考慮することで海面の気圧変化によって生じる津波発生の素過程を明らかにし,発生過程で観測されうる海底水圧変化を検討する.
3次元流体運動
一定水深のもと海面に圧力変化を与えることで,3次元運動方程式で記述される非圧縮流体運動を波数積分法で計算し,海面波高分布,海水流速分布,海底圧力分布を求める.発生メカニズムを理解するために,まず,移動しない気圧変化によって励起される津波を考え,後に,気圧変化が移動する場合を考える.
気圧変化が移動しない場合
急激に海面に気圧変化が起こる場合として,海面にステップ関数で表される気圧変化があるときの3次元流体応答の解を導出した.海面に急激に圧力が加わることで(高気圧の発生),高気圧直下の海面は徐々に鉛直下方に変位し,海水は脇に押し出される.その結果,高気圧の脇では海面が隆起する.隆起した海面は,重力波(津波)として伝播する.この際,高気圧の外に位置する海底圧力計では,海底地殻変動によって海面が隆起した場合と等価な圧力記録となる.一方,高気圧のある領域内の海底に位置する圧力計は,海底地殻変動によって海面が隆起した場合と異なるふるまいをする.高気圧発生と同じタイミングで圧力が増大し,その後,海面が下方に変位するにともない,徐々に圧力が下がっていく,最終的に海底圧力変化はほぼゼロになる.これは,海底の永久変位よって圧力のオフセットがのこる海底地殻変動によって海面が隆起する場合と異なる.
気圧変化が移動する場合
低気圧が移動することで津波が成長する.気圧変化の移動は,移動しない気圧変化の解の重ね合わで表現する.インパルス応答(時間・空間ともにデルタ関数震源の応答)に,一定速度で動く引張圧力源を畳み込で取り入れ,低気圧の移動による津波の発生を計算する.低気圧が平面波的に伝播する場合,3次元流体応答に関する解を得ることができる.これに,長波近似を適用すればProudman (1929) の解と同じになる.低気圧の移動速度が津波の伝播速度と同程度の場合,気圧変化が進行する方向では,海面変位分布は圧力分布の空間微分(もしくは時間微分)の形で与えられ,伝播距離の増大に伴い海面変位が増大する(例 宇野木 1993).気圧変化の空間スケールが小さい場合,分散効果によって,より急激に波高が増大する場合もある.海底の圧力変化は,津波波高だけでなく,気圧変化による圧力変化も加わる.そして,波長が短い場合には,有限波長-水深効果が現れ,静水圧近似から期待される圧力変化より圧力変化は小さくなる.気圧変化の移動により発生する津波は海底圧力計で検知可能である.しかし,海底圧力計から波高を正確に計測するためには,海面圧力分布の情報が必要となる.
気圧変化によって発生する津波は気象津波と呼ばれる.観測データは験潮記録がほとんどであり,長波を想定した水平2次元のモデルが主にデータ解析に利用されている(例えば,Hibiya and Kajiura 1982; 坂本・他2012; 久保田・他 2020地震学会).
一方,現在では海底圧力計が広く実用化され,沖合や津波発生域での海底圧力変化が観測できるようになり,津波発生プロセスの理解が進展している.例えば,地震による津波発生の場合,震源域内に設置された海底圧力計によって,津波と海底運動の両者を含む海底圧力変化が明瞭に観測され,流体-弾性体力学のシミュレーション (例えば,Saito 2019; Maeda et al. 2020) に基づく解析から破壊継続時間や応力降下量を通常の津波解析より詳細に推定することができる (Kubota et al. 2020).
本研究では,3次元流体運動を考慮することで海面の気圧変化によって生じる津波発生の素過程を明らかにし,発生過程で観測されうる海底水圧変化を検討する.
3次元流体運動
一定水深のもと海面に圧力変化を与えることで,3次元運動方程式で記述される非圧縮流体運動を波数積分法で計算し,海面波高分布,海水流速分布,海底圧力分布を求める.発生メカニズムを理解するために,まず,移動しない気圧変化によって励起される津波を考え,後に,気圧変化が移動する場合を考える.
気圧変化が移動しない場合
急激に海面に気圧変化が起こる場合として,海面にステップ関数で表される気圧変化があるときの3次元流体応答の解を導出した.海面に急激に圧力が加わることで(高気圧の発生),高気圧直下の海面は徐々に鉛直下方に変位し,海水は脇に押し出される.その結果,高気圧の脇では海面が隆起する.隆起した海面は,重力波(津波)として伝播する.この際,高気圧の外に位置する海底圧力計では,海底地殻変動によって海面が隆起した場合と等価な圧力記録となる.一方,高気圧のある領域内の海底に位置する圧力計は,海底地殻変動によって海面が隆起した場合と異なるふるまいをする.高気圧発生と同じタイミングで圧力が増大し,その後,海面が下方に変位するにともない,徐々に圧力が下がっていく,最終的に海底圧力変化はほぼゼロになる.これは,海底の永久変位よって圧力のオフセットがのこる海底地殻変動によって海面が隆起する場合と異なる.
気圧変化が移動する場合
低気圧が移動することで津波が成長する.気圧変化の移動は,移動しない気圧変化の解の重ね合わで表現する.インパルス応答(時間・空間ともにデルタ関数震源の応答)に,一定速度で動く引張圧力源を畳み込で取り入れ,低気圧の移動による津波の発生を計算する.低気圧が平面波的に伝播する場合,3次元流体応答に関する解を得ることができる.これに,長波近似を適用すればProudman (1929) の解と同じになる.低気圧の移動速度が津波の伝播速度と同程度の場合,気圧変化が進行する方向では,海面変位分布は圧力分布の空間微分(もしくは時間微分)の形で与えられ,伝播距離の増大に伴い海面変位が増大する(例 宇野木 1993).気圧変化の空間スケールが小さい場合,分散効果によって,より急激に波高が増大する場合もある.海底の圧力変化は,津波波高だけでなく,気圧変化による圧力変化も加わる.そして,波長が短い場合には,有限波長-水深効果が現れ,静水圧近似から期待される圧力変化より圧力変化は小さくなる.気圧変化の移動により発生する津波は海底圧力計で検知可能である.しかし,海底圧力計から波高を正確に計測するためには,海面圧力分布の情報が必要となる.