日本地震学会2020年度秋季大会

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Room A

Regular session » S17. Tsunami

[S17]PM-1

Sat. Oct 31, 2020 1:00 PM - 2:15 PM ROOM A

chairperson:Yusuke Yamanaka(The University of Tokyo), chairperson:Osamu Sandanbata(NIED)

1:30 PM - 1:45 PM

[S17-08] Study on resonance characteristics along western coasts of Japan Sea and amplification of 1833 Shonai-Oki tsunami

〇Yusuke Yamanaka1, Kiku Shimazu2, Takenori Shimozono1, Yukimasa Higaki3 (1.The University of Tokyo, 2.Central Nippon Expressway Company Limited, 3.East Japan Railway Company)

これまでに日本海東縁部で発生した地震津波は,日本海西部沿岸域で大きく増幅して浸水被害を発生させたことがある.本研究では日本海で過去に発生した大規模地震津波の一つである1833年庄内沖(山形沖)地震津波を対象とし,日本海東縁部で発生した津波が日本海西部沿岸域において増幅するメカニズムを推定することを研究の目的とする.
まず,1833年津波の痕跡高とそれが観測された時間を既往研究の分析結果に基づき精査し,比較的信頼性の高い痕跡高を抽出した結果、鳥取県境港市においては0.5mの浸水が発生していたことがわかった.さらに,同浸水が発生したのは日没後であることが歴史史料から示唆されており、1833年津波の沿岸挙動の解明の一助となる離散的な時間情報が得られた.
次に,1833年地震の発震日時は12月7日14時頃であり,津波の位相特性を考慮すれば同日16時半頃までに第一波目の津波が境港市沿岸域に到達することが推察された.これを念頭に置きながら,1833年12月7日の境港市に対する太陽位置及び恒星時を略算して日没時刻を推定すると,同日同市における日没時刻は16時54分となった.これらのことから, 歴史史料に記述されている境港市における浸水は,津波の後続波が増幅したことによって発生したことがわかった.
境港市沿岸域は美保湾内に位置し,また周辺海域には隠岐海峡が位置するため,湾スケールや海峡スケールの固有振動による津波増幅が1833年津波の氾濫に関与した可能性が考えられる.そこで,数値実験に基づき美保湾や隠岐海峡を含む日本海西部域の固有振動特性を推定することを念頭に置き,境港市境港に容量式波高計を設置して水深変化の時系列データを取得した.そのデータの周波数解析に基づきピーク周期を推定するとともに,数値実験に基づき同海域の波の周期応答特性を推定して前述のピーク周期と比較した.これらの分析結果に基づき,同海域の固有振動特性を実証的に推定した.
上述の分析結果を踏まえながら,1833年庄内沖地震の断層モデルに基づきそれによる津波の伝播及び増幅特性を推定した.まず境港市沿岸域における推定水位の最大値及び出現時刻が観測値と概ね整合していることを確認した.推定された波形では,津波の第一波目の水位上昇量よりも後続波の水位上昇量の方が有意に大きく,後続波が浸水被害を拡大させたことが確認された.さらに,周波数解析に基づき推定水位波形を詳細に分析した結果,湾スケールの固有振動が津波によって励起されていたこと,また複数の固有振動モードが湾内で重合し,津波の後続波を大きく増大させていたことがわかった.