3:00 PM - 3:15 PM
[S17-13] Characteristics of tsunami flotsam behavior on vulnerable of embankment foundation by strong motion
1.研究目的
既報(例えば,今井・他,2018)において,矢作川河口域において高度な土地利用展開されてきた愛知県碧南市を対象として,南海トラフ巨大地震による地震動に対する堤体基礎の沈下量を水~土骨格連成有限変形解析(Noda et al., 2008)を津波氾濫解析に組み込んだ氾濫解析を実施し,堤体基礎の強震動脆弱性を考慮した氾濫解析の重要性を示した.解析対象とした蜆川下流部には河道内にプレジャーボートが停泊しており,より現実的な津波被害予測には津波漂流物の影響についても検討する必要がある.本研究では,建物を地形と底面摩擦として取り扱う合成地形モデル(今井・他,2013)を用い,プレジャーボートを対象とした津波漂流物の拡散解析を行い,河岸堤体基礎の強震動脆弱性,建物の影響による漂流物の拡散過程,その影響範囲と集積状況について検討を行う.
2.研究内容
本研究の解析対象領域である愛知県碧南市において地震動応答解析を行い,堤体の沈下量を津波氾濫解析に反映させた.津波氾濫解析には,蜆川河岸の堤体高およびその周辺の地盤高はGEOASIAによる解析結果,詳細建物データ(碧南市),5 mDEM(国土地理院)とGNSS測量に基づいて最小空間分解能3.3 mの合成地形モデルを利用し,堤体天端のパラペット被害の有無,河口から約2.5 km上流にある樋門の開閉についてを計算条件とした.波源は内閣府モデルの津波断層Case 9とし,朔望平均満潮位(T.P. +1.0 m)とした.対象とする漂流物は蜆川下流部に係留されているプレジャーボートとし,その配置や船体諸元について現地調査を行った.漂流物の拡散解析には後藤(1983)による漂流物拡散モデルを適用した.漂流物の水平方向の運動は慣性力,水流の圧力勾配,付加質量,流水抵抗と拡散により記述される,本解析では拡散を除く4種類の力の釣り合いを決定論的に扱い,拡散については決定論的に定まる漂流物の位置を踏まえて確率論的に取り扱った.漂流物の移動および停止について,漂流物(船舶)諸元で設定した喫水0.5 m(浸水深0.5 m)以上の場合で移動し,それ以下では停止条件とした.
3.主な結論
蜆川流域の堤体基礎の被害状況に応じた浸水過程や浸水域の拡大に対応して,漂流物の拡散過程や集積状況も大きく変化することを明らかにした.とくに,樋門の開閉の影響は大きく漂流過程に影響することを示した.また,合成地形モデルによる建物構造物の水流遮蔽効果の影響により津波氾濫の流束が道路に沿うようになるため,漂流物もそれに従って漂流するようになる.合成地形モデルと漂流物拡散解析を組み合わせることで,より現実的な漂流予測が可能となる.中小河川や一部の港湾施設を擁する地域においては,これら構造物の耐震化の重要性を示していることはもちろんのこと,強震動による海岸・河岸構造物や堤体基礎部の脆弱性が津波ハザード評価に与える影響を無視できないことを示している.
謝辞:本研究は R2-6年度文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」(研究代表者:海洋研究開発機構 小平秀一)の一環として行われました.
既報(例えば,今井・他,2018)において,矢作川河口域において高度な土地利用展開されてきた愛知県碧南市を対象として,南海トラフ巨大地震による地震動に対する堤体基礎の沈下量を水~土骨格連成有限変形解析(Noda et al., 2008)を津波氾濫解析に組み込んだ氾濫解析を実施し,堤体基礎の強震動脆弱性を考慮した氾濫解析の重要性を示した.解析対象とした蜆川下流部には河道内にプレジャーボートが停泊しており,より現実的な津波被害予測には津波漂流物の影響についても検討する必要がある.本研究では,建物を地形と底面摩擦として取り扱う合成地形モデル(今井・他,2013)を用い,プレジャーボートを対象とした津波漂流物の拡散解析を行い,河岸堤体基礎の強震動脆弱性,建物の影響による漂流物の拡散過程,その影響範囲と集積状況について検討を行う.
2.研究内容
本研究の解析対象領域である愛知県碧南市において地震動応答解析を行い,堤体の沈下量を津波氾濫解析に反映させた.津波氾濫解析には,蜆川河岸の堤体高およびその周辺の地盤高はGEOASIAによる解析結果,詳細建物データ(碧南市),5 mDEM(国土地理院)とGNSS測量に基づいて最小空間分解能3.3 mの合成地形モデルを利用し,堤体天端のパラペット被害の有無,河口から約2.5 km上流にある樋門の開閉についてを計算条件とした.波源は内閣府モデルの津波断層Case 9とし,朔望平均満潮位(T.P. +1.0 m)とした.対象とする漂流物は蜆川下流部に係留されているプレジャーボートとし,その配置や船体諸元について現地調査を行った.漂流物の拡散解析には後藤(1983)による漂流物拡散モデルを適用した.漂流物の水平方向の運動は慣性力,水流の圧力勾配,付加質量,流水抵抗と拡散により記述される,本解析では拡散を除く4種類の力の釣り合いを決定論的に扱い,拡散については決定論的に定まる漂流物の位置を踏まえて確率論的に取り扱った.漂流物の移動および停止について,漂流物(船舶)諸元で設定した喫水0.5 m(浸水深0.5 m)以上の場合で移動し,それ以下では停止条件とした.
3.主な結論
蜆川流域の堤体基礎の被害状況に応じた浸水過程や浸水域の拡大に対応して,漂流物の拡散過程や集積状況も大きく変化することを明らかにした.とくに,樋門の開閉の影響は大きく漂流過程に影響することを示した.また,合成地形モデルによる建物構造物の水流遮蔽効果の影響により津波氾濫の流束が道路に沿うようになるため,漂流物もそれに従って漂流するようになる.合成地形モデルと漂流物拡散解析を組み合わせることで,より現実的な漂流予測が可能となる.中小河川や一部の港湾施設を擁する地域においては,これら構造物の耐震化の重要性を示していることはもちろんのこと,強震動による海岸・河岸構造物や堤体基礎部の脆弱性が津波ハザード評価に与える影響を無視できないことを示している.
謝辞:本研究は R2-6年度文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」(研究代表者:海洋研究開発機構 小平秀一)の一環として行われました.