日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

一般セッション » S17. 津波

S17P

2020年10月31日(土) 16:00 〜 17:30 P会場

16:00 〜 17:30

[S17P-03] 宮崎県沖で発生した1662年日向灘地震の津波波源の考察

〇伊尾木 圭衣1、山下 裕亮2、加瀬 善洋3 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター、2.京都大学防災研究所宮崎観測所、3.北海道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所)

南海トラフ西端部に位置する日向灘では,フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込むため,M7クラスのプレート境界型地震が繰り返し発生している.歴史記録上,日向灘で発生した最大規模の地震は西暦1662年日向灘地震(外所地震)とされている.この地震により津波が発生し,宮崎市沿岸部では津波の高さが4-5 mと推定され,大きな被害をもたらした.また日向灘は,浅部スロー地震活動が活発な地域である.2011年東北地方太平洋沖地震の震源域に含まれる浅部スロー地震の震源域は,巨大津波生成の要因の1つと考えられている.1662年津波は,日向灘における通常のM7クラスの地震により発生した津波より,はるかに大きな津波となった.これをもとに本研究では,1662年津波は,浅部スロー地震域が1662年日向灘地震の震源域となって巨大津波が発生した可能性を考え,その検証を予察的に行った.はじめに,日向灘で観測された最近の地震活動をもとに,1662年日向灘地震の断層モデルを仮定した.次に,1662年津波の波源を推定するため,宮崎県の太平洋沿岸一帯(延岡市から串間市)で津波堆積物調査を行った.その結果,複数地点において1662年津波の可能性があるイベント堆積物を確認した.仮定した断層モデルを用いて津波の数値計算を行い,宮崎県の宮崎市宮崎平野と日南市小目井で,確認されたイベント堆積物の分布と計算浸水範囲を比較した.その結果,大きな津波を発生させるには,プレート境界浅部のすべりが必要であることが分かった.一方で,歴史記録より揺れによる建物被害も大きいことから,強震動を生成させるには,陸に近いプレート境界深部のすべりも必要である.これらの考察から仮定した断層モデルにより計算された浸水範囲は,地質調査により確認されたイベント堆積物の分布を説明することができた.今後,他の地域においても津波堆積物の分布や歴史記録と,計算浸水範囲を比較することで,仮定した断層モデルの精度を上げる.