日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

一般セッション » S17. 津波

S17P

2020年10月31日(土) 16:00 〜 17:30 P会場

16:00 〜 17:30

[S17P-05] 北米西岸で観測された安政東海・南海地震津波の特徴

〇楠本 聡1、今井 健太郎1、大林 涼子1、高橋 成実1,2、堀 高峰1 (1.海洋研究開発機構、2.防災科研)

1854年12月23日及び25日に南海トラフ沿いの沈み込み帯で安政東海地震及び安政南海地震が発生した.これらの地震に伴う津波は太平洋を横断し,北米西岸の検潮所でその波形が記録されている(例えば,Bache 1856; Kusumoto et al., 2020).これまでの研究で津波伝播の数値シミュレーションから求まった計算波形と観測波形の比較を基に安政東海・南海地震の津波励起時刻を推定する試みが行われている一方で,観測波形に対する解析は十分ではない.そこで本研究では,サンフランシスコ及びサンディエゴで記録された安政東海・南海地震津波の観測波形に対して波形解析を行い,その特徴を調べた.
観測波形として,大森 (1913)の潮位記録をデジタル化して理論潮汐曲線の山谷を基に時刻補正した潮汐波形を使用した(図1;Kusumoto et al., 2020).いずれの波形も湾口部から約5 km離れた検潮所で記録されたものである.まず1.3E–4 Hzをカットオフ周波数とするハイパスフィルターで潮汐成分を除去し,次に短波長のノイズを除去するため,振幅スペクトルを基に5.0E–4 Hzのローパスフィルターを適用した.振幅は地震発生当時の潮位計の水理フィルターが不明のため最大値で規格化した.
図1にサンフランシスコ及びサンディエゴの検潮所における安政東海・南海地震津波の観測波形を示す.安政東海地震津波は初動より後続波の振幅が大きく,最大波の出現時刻は初動到達からおよそ2~3時間後である.観測波形の卓越周期はどちらの検潮所でも40~50分前後である.安政南海地震津波の初動到達時刻ははっきりとしない.サンフランシスコの検潮所では12月25日の午前2時~午後2時(GMT),サンディエゴの検潮所では12月25日の午前2時~午後6時(GMT)にかけて大きな振幅を持つ長波が記録されている.これらは安政南海地震の後続波であると考えられる.
安政南海地震津波は安政東海津波と比較して,どちらの検潮所でも振幅がやや大きく波長もわずかに長い.これらの特徴は安政東海地震及び安政南海地震の津波波源に起因している可能性がある.本発表では,以上の解析結果を基に安政東海・南海地震津波の観測波形の特徴について議論する.

謝辞:本研究は R2-6年度文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」(研究代表者:海洋研究開発機構 小平秀一)の一環として行われました.

参考文献
Bache, A.D. (1856) Notice of earthquake waves on the western coast of the United States, on the 23rd and 25th of December, 1854, American J. Sci. Arts, 21, 37–43.
Kusumoto, S., Imai, K., Obayashi, R., Hori, T., Takahashi, N., Ho, T.–C., Uno, K., Tanioka, Y., & Satake, K. (2020) Origin time of the 1854 Ansei–Tokai tsunami estimated from tide gauge records on the west coast of North America, Seismol. Res. Lett.