日本地震学会2020年度秋季大会

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Room B

Regular session » S18. Education and history of seismology

[S18]AM-1

Sat. Oct 31, 2020 10:00 AM - 10:15 AM ROOM B

chairperson:Satoko Murotani(National Museum of Nature and Science)

10:00 AM - 10:15 AM

[S18-01] Effectiveness in raising awareness of disaster prevention through numerical evacuation simulations for junior high school students.

〇Shota Takeichi1, Toshitaka Baba1, Naoyuki Nakayama2 (1.Tokushima University, 2.Tsuda Junior High School)

初等中等教育における防災教育は将来の災害軽減に必要不可欠であり、いくつかの学校では地域住民と連携も含めて意欲的に行われている。例えば、徳島県徳島市津田中学校では防災クラブを結成し、中学校周辺地域の事前復興計画の作成をしている。一方、AIに代表される情報通信技術の進展は著しく、今後、防災分野においても主要な役割は果たすであろうと考えられる。本研究では、このような観点からコンピュータ上で津波避難シミュレーションを中学生に実施してもらい、それによる彼らの考察をもって、有効な防災意識向上効果ついて調査したので報告する。

はじめに、津波避難シミュレーションの概要を説明する。津波避難シミュレーションにマルチエージェントモデルのCrowdWalkを用いた。CrowdWalkは一次元空間モデルを用いた大規模群衆流動にも対応したマルチエージェント歩行者シミュレータであり、実際の花火大会や劇場での避難訓練で群衆移動の検証が行われている。防災クラブの生徒らは、学校周辺地区内の住民に対して、津波避難先として利用する避難場所とそこまでの経路の調査を実施した。(ちなみに、住民は必ずしも最短経路を使って最寄りの避難場所に避難するとは限らない。)調査をもとに、学生らが自ら作成した避難シミュレーションモデルで、エージェントの避難経路を設定し、シミュレーションを行った。その結果、主要な道路で避難やの混雑(渋滞)が発生する可能性が示唆された。避難完了時間は2112秒であった。また、単に最寄りの避難場所に最短経路で避難する場合のシミュレーションも実施し、この場合は、避難完了時間は852秒であった。避難シミュレーションモデルの作成開始から、シミュレーション実施完了まで、およそ2か月かかった。その期間においては、メール等で利用法を説明するだけでなく、防災クラブの活動に数回訪問して、作業を手助けした。

生徒らに、今回の活動についてヒアリング調査を行った。シミュレーションを用いたことで、避難時に混雑が起こる場所がわかったことや避難のイメージをつかめやすくなったなどの回答があった。これらから、生徒たちにとって、避難シミュレーションの実施は防災活動や事前復興計画を考える上で有効なツールとなる可能性があることが分かった。一方、今回利用したCrowdWalkは専門的なツールで、説明書も中学生向けに書かれているわけではないため、シミュレーションの実施には相当のサポートが必要だった。しかし、要点をつかむと入力作業の速度は一気に上がった。これは、情報ツールを使うことに幼いころから慣れ、興味関心が高いからだと考える。