日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

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S19P

2020年10月31日(土) 16:00 〜 17:30 P会場

16:00 〜 17:30

[S19P-01] 2020年7月2日に落ちた火球の落下経路推定

〇関根 秀太郎1、平田 直2 (1.(公財)地震予知総合研究振興会、2. 国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

はじめに

 地球に落ちてくる流星のうち,明るい流星を火球と呼ぶが,火球は落下する際には衝撃波を発生させながら落ちていく事が知られている.今までに落ちた火球でも,そのいくつかにおいては,その衝撃波を地震計が捉え,落下経路等が推定されている(石原・他(2001)).

2020年7月2日の2時32分に関東上空を大きな火球が飛び話題になった.火球は神奈川の上空で光り始め,東に向かって目撃された.火球はいくつかに分割し,それらは習志野市に落ちて回収された(国立博物館プレスリリース).火球から発生した衝撃波は首都圏一円に展開されている首都圏地震観測網(MeSO-net)の地震計に広範囲で観測された.そこで,本研究では,火球が通った際に発する衝撃波を解析することによりその落下方向等を推定することにした.



データおよび解析手法



火球が見えていた時間前後のMeSO-netの波形データを用い,火球が通過した際に生じた衝撃波を地震計が捉えた時刻の読み取りを行った.経路の推定においては,石原・他(2001)で用いられた手法を用い,火球の入射角や速度等のパラメータをグリッドサーチで推定した.その際に大気圏突入後の火球の運動を等速直線運動とし,大気は等温大気であると仮定した.



結果および考察



MeSO-net で明瞭に捉えられた衝撃波の読み取りの時間を図に示す.火球は衝撃波を出している間は超音速であるが,その衝撃波は音速で伝わっている為,火球の高度が高い位置での衝撃波が観測点に到達するのは,より低い位置で発生した衝撃波よりも後に到着するため,到着時の等時線を描くと楕円を描くことになる.図内では西側の方がより遅く到着している為,火球は西から飛来している事がわかる.また,千葉県側では,衝撃波の到達は確認出来ず,習志野で隕石が見つかった事を考えると,衝撃波は火球の経路前方には飛んでいかないという事も示している.

 このデータを用いて,グリッドサーチで経路の推定を行ったところ,火球の入射角は,33度から40度で,方位は東から北方向に5度から15度ぐらいに推定された.一般的に大気圏に突入する高度約80kmで火球が光り始めたとすると,神奈川の上空で光り始めたとされる火球はこの入射角で東京上空まで火球が光っていたという観測結果から,高度約20㎞程度までは衝撃波を出していたと推定できる.また,火球の速度は大体30㎞/s 付近で推定したが,過去の火球の解析と比較すると,火球速度が速く推定されている.

なお,8月21日の22時30分頃に,落下した別の火球においても,MeSO-net で衝撃波の波形が観測されているので,同様に経路等を推定し,比較をする事にする.



謝辞

この研究においては,MeSO-net の波形データを使用いたしました.ここに記して感謝いたします.



参考文献

石原吉明,束田進也,酒井慎一,平松良浩,古本宗充,稠密地震観測網記録による火球経路の決定,地震研究所彙報Vol.76, 87-92, 2001.

国立科学博物館,各地で観測された火球が隕石であることを確認,国立科学博物館プレスリリース, (https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/421874.pdf) ,2020.