日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

特別セッション » S22. 琉球弧のジオダイナミクス

S22P

2020年10月31日(土) 16:00 〜 17:30 P会場

16:00 〜 17:30

[S22P-06] 強震波形記録と海陸統合3次元地下構造モデルを用いた沖縄本島近海で発生した地震のCMT解析

〇小松 正直1、小割 啓史2、渡邉 禎貢1、岡元 太郎3、中村 武史4、竹中 博士1 (1.岡山大学、2.阪神コンサルタンツ、3.東京工業大学、4.電力中央研究所)

沖縄本島近海では地震活動が活発である.本研究では2007年10月から2013年6月に発生したMJMA5.2~5.8の7つの地震の強震波形データから,CMTインバージョンを行い,地震の位置,規模,震源メカニズムを推定した.

CMTインバージョンにはFAMT (Okamoto et al., 2017, EPS)の方法を用い,グリーン関数の計算には陸上,海底地形を考慮できる3次元差分法の計算コードHOT-FDM (Nakamura et al., 2012, BSSA)を使用した.沖縄本島南東沖に南北方向,東西方向,鉛直方向に各2 km間隔でセントロイド震源の候補点を設定し,相反定理を用いてグリーン関数を計算した.グリーン関数の計算に用いた海陸統合の3次元地下構造モデルは以下のように構築した.陸上地形は国土地理院の250 mメッシュ(標高)を,海底地形はJTOPO30を導入し,海水層を考慮した.モホ面は反射法探査の結果 (Nishizawa et al., 2019, EPSなど)の結果をコンパイルし,モデル化した.フィリピン海プレート上面はIwasaki et al. (2015, AGU)のモデルを採用した.これらの地震波速度や密度は公開されている広域モデル(たとえば,全国1次地下構造モデル)を参考に設定した.上部地殻より上の地盤はJ-SHIS深部地盤モデルを採用した.

本研究で使用したデータは防災科学技術研究所が展開する強震観測網(K-NET)の8観測点(KGS033, KGS034, KGS035, OKN001, OKN002, OKN003, OKN004, OKN005)で観測された強震波形である.これらを速度波形に積分しバンドパスフィルタをかけて使用した.

解析した結果をFigure 1に示す.イベント番号は発生日時の順に付けた.セントロイド震源はF-netによるものと比べて北西側に移動した.また,深さのばらつきはF-netによるものよりも小さくなった.メカニズムはイベント①と⑥の横ずれ成分を除き,北西・南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型であり,圧縮軸の方向はフィリピン海(PHS)プレートの沈み込む方向に対応する.本研究で求まった震源はイベント①と⑥は海洋マントル,それ以外は海洋地殻内に位置している.なお,発表ではさらに最新のイベントやマグニチュードの小さなイベントを含めて解析数を増やす予定である.

謝辞:本研究では,防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET)の強震波形記録,国土地理院の数値地図250 mメッシュ(標高),JTOPO30,J-SHIS深部地盤モデルを使用しました.プレート境界モデル(Iwasaki et al., 2015, AGU)は,国土地理院の数値地図250mメッシュ(標高),日本海洋データセンターによる500mメッシュ海底地形データ(J-EGG500, http://www.jodc.go.jp/data_set/jodc/jegg_intro_j.html)及びGeographic Information Network of Alaska(アラスカ大学)の地形・水深データ(Lindquist et al., 2004, Eos Trans. AGU)から作成したものです.グリーン関数の計算は学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点の支援により(課題番号: jh190075-NAH),名古屋大学情報基盤センターの超並列スパコンFX100を利用し,および東京大学地震研究所の共同利用における援助を受け(課題番号:2020-S-08),同大情報基盤センターのシステム(Oakforest-PACS)を利用しました.