1:00 PM - 1:30 PM
[S23-05] [Invited] Dense seismic observation using seafloor optical fiber cable system off Sanriku by Distributed Acoustic Sensing
光ファイバをセンサとして用いるDistributed Acoustic Sensing(DAS)計測は、空間的に高密度なデータが取得可能であることから自然地震観測に応用されており、海底ケーブルによる先駆的な観測例もある。DAS計測は、光ファイバセンシング技術の一つで、コヒーレントなレーザー光の短いパルスを、シングルモードファイバに連続して送信し、後方散乱を観測する。ファイバ近傍で発生した振動により発生したファイバの微小な変形が後方散乱波のパターンを変化させることから、振動を検出する。パルスを送出してからの時間が観測点までの距離に対応する。また、後方散乱波のパターン変化検出には干渉測位を用いており、散乱源の距離変化(歪変化)を計測する。干渉させる散乱波の散乱源の距離(ゲージ長)が空間的な分解能に相当し、地震観測の場合はゲージ長は数十mに設定することが多い。すなわち、地震計を数十m間隔で、長さが敷設されているファイバに対応するアレイ観測が行うことができる。
地震研究所は、1996年に三陸沖光ケーブル式海底地震・津波観測システムを設置し、2011年東北地方太平洋沖地震の被災による中断を経て、現在も観測に用いている。このシステムは将来の拡張用として、6本(3組)のファイバが用意されている。このファイバは、分散シフト・シングルモードファイバであり、DAS計測が適用可能なファイバである。そこで、次期海底ケーブル式観測システムの新技術として、三陸沖光ケーブル観測システムを用いてDAS技術を用いた地震観測を行うこととした。DAS技術による海底観測は、これまで「点」であった観測を、「線」での観測に変化させる画期的なものである。
パイロット観測として最初のDAS計測を、2019年2月13日から15日までに実施した。DAS計測の計測器を陸上局に設置し、陸上局から100kmまでの区間において、サンプリング周波数500Hz、ゲージ長(空間分解能)10mまたは40mで連続収録した。収録チャンネル間隔は5mとしたので、全20,000チャンネルのデータとなった。収録期間は約46時間である。その結果、マグニチュード1クラスの微小地震を始め観測システム近傍で発生した小さな地震や深発地震など多数の地震が観測された(図)。また、陸上局から70km程度までの区間において地震波の到達を確認することができた。また、雑微動のノイズスペクトルを求めたところ、陸上の歪計に比較可能なレベルであることもわかった。
DAS計測技術は発展中の技術であり、計測装置についても、各社からそれぞれの特徴がある装置が提案されている。そこで、複数の会社の装置をもって試験観測を実施し、開発を進めることとした。2019年6月25日から28日にかけては、1回目とは異なる計測器により、約72時間の観測を行った。計測装置の特徴により、6月の測定では、計測全長は5kmと短くなったが、チャンネル間隔1m、ケージ長は7mから32mとして高精度の観測とした。この観測においても、観測システム近傍で発生した比較的規模の小さな地震や、深発地震など多数の地震が観測され、検出性能としては二つの計測装置にほぼ違いがないこと、また、ノイズスペクトルの比較からも異なる計測装置間でもノイズレベルは同等であることがわかった。
2回のパイロット観測により、海底ケーブルを用いたDAS計測による地震観測は有用であることが明らかとなった。海底におけるモニタリング観測のためには、さらに長期の収録期間が必要となる。また、DAS計測データの評価には、より長期間のデータが必要である。そこで、モニタリング観測を意識して、できる限り長期間で連続したDAS計測を、2019年11月18日から12月2日にかけて実施した。記録期間は記録装置の容量に依存しており、現状は2週間が最長となった。収録パラメータの多くは、2月の実験と同じとした。ただし、収録容量を削減するために、全計測長を18日は約48kmとし、2日目からは70kmとした。データの総容量は15テラバイトとなった。同じく、深発地震を含む多くの地震が収録され、良好な記録が得られた。今後は、このデータを用いて、DAS計測データの評価を進めるとともに、長期モニタリングのためのデータ処理・収録システムの開発を検討する。
図 2019年2月に実施した三陸沖光ケーブル観測システムにおけるDAS計測により収録された地震記録例。横軸は陸上局からの距離、縦軸は時間である。
地震研究所は、1996年に三陸沖光ケーブル式海底地震・津波観測システムを設置し、2011年東北地方太平洋沖地震の被災による中断を経て、現在も観測に用いている。このシステムは将来の拡張用として、6本(3組)のファイバが用意されている。このファイバは、分散シフト・シングルモードファイバであり、DAS計測が適用可能なファイバである。そこで、次期海底ケーブル式観測システムの新技術として、三陸沖光ケーブル観測システムを用いてDAS技術を用いた地震観測を行うこととした。DAS技術による海底観測は、これまで「点」であった観測を、「線」での観測に変化させる画期的なものである。
パイロット観測として最初のDAS計測を、2019年2月13日から15日までに実施した。DAS計測の計測器を陸上局に設置し、陸上局から100kmまでの区間において、サンプリング周波数500Hz、ゲージ長(空間分解能)10mまたは40mで連続収録した。収録チャンネル間隔は5mとしたので、全20,000チャンネルのデータとなった。収録期間は約46時間である。その結果、マグニチュード1クラスの微小地震を始め観測システム近傍で発生した小さな地震や深発地震など多数の地震が観測された(図)。また、陸上局から70km程度までの区間において地震波の到達を確認することができた。また、雑微動のノイズスペクトルを求めたところ、陸上の歪計に比較可能なレベルであることもわかった。
DAS計測技術は発展中の技術であり、計測装置についても、各社からそれぞれの特徴がある装置が提案されている。そこで、複数の会社の装置をもって試験観測を実施し、開発を進めることとした。2019年6月25日から28日にかけては、1回目とは異なる計測器により、約72時間の観測を行った。計測装置の特徴により、6月の測定では、計測全長は5kmと短くなったが、チャンネル間隔1m、ケージ長は7mから32mとして高精度の観測とした。この観測においても、観測システム近傍で発生した比較的規模の小さな地震や、深発地震など多数の地震が観測され、検出性能としては二つの計測装置にほぼ違いがないこと、また、ノイズスペクトルの比較からも異なる計測装置間でもノイズレベルは同等であることがわかった。
2回のパイロット観測により、海底ケーブルを用いたDAS計測による地震観測は有用であることが明らかとなった。海底におけるモニタリング観測のためには、さらに長期の収録期間が必要となる。また、DAS計測データの評価には、より長期間のデータが必要である。そこで、モニタリング観測を意識して、できる限り長期間で連続したDAS計測を、2019年11月18日から12月2日にかけて実施した。記録期間は記録装置の容量に依存しており、現状は2週間が最長となった。収録パラメータの多くは、2月の実験と同じとした。ただし、収録容量を削減するために、全計測長を18日は約48kmとし、2日目からは70kmとした。データの総容量は15テラバイトとなった。同じく、深発地震を含む多くの地震が収録され、良好な記録が得られた。今後は、このデータを用いて、DAS計測データの評価を進めるとともに、長期モニタリングのためのデータ処理・収録システムの開発を検討する。
図 2019年2月に実施した三陸沖光ケーブル観測システムにおけるDAS計測により収録された地震記録例。横軸は陸上局からの距離、縦軸は時間である。