日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

D会場

特別セッション » S23. 観測地震学のフロンティア~稠密地震観測の未来像~

[S23]PM-1

2020年10月30日(金) 13:00 〜 14:15 D会場

座長:高木 涼太(東北大学大学院理学研究科)

14:00 〜 14:15

[S23-08] 人工的振動によるDAS記録の特徴

〇田中 昌之1、小林 昭夫1、勝間田 明男1、溜渕 功史1、木村 恒久2、久保田 俊輔3、依田 幸英4 (1.気象研究所、2.シュルンベルジェ、3.有限会社ワイケー技研、4.日本電気株式会社)

近年、分布型音響センシング(DAS; Distributed Acoustic Sensing)の技術を用いた地震観測について多数報告されている。DASは、光ファイバ(コア部分)の一端から非常にコヒーレントな短波長の光パルスを入射し、コア内に存在する多くの分子レベルの不純物や欠陥に衝突して発生する後方散乱光が入射端に戻るまでの時間を計測する。光ファイバは振動や温度等の外乱で変形し、変形した場所で光パルスに位相差が生じる。光パルスの波長変化はひずみ変化速度に対応し、光パルスを等間隔で連続的に入射することにより、ピコストレインレベルのひずみの時間変化が観測できる。しかも、一回のパルスでファイバ全域を細かい間隔で観測できる。

2020年3月、静岡県浜松市天竜区船明地区にある延長約900mの船明トンネル内にて、シングルモード4芯1kmの光ファイバケーブルを敷設し、アダプタで芯同士を接続して総延長4kmのファイバケーブルでDASの試験観測を実施した。これまでの調査で、DASと地震計の双方で観測された近地自然地震の波形記録を比較したところ、地震計記録で見られるP相、S相の実体波はDAS記録でも見られる。また、DASの波形記録はファイバに沿う方向と同じ南北方向の地震計記録と相関が強い。ファイバ近傍で稼働中の真空ポンプのモーター振動及びその高調波などが明瞭に観測された。

しかしながら、DASのデータは、①ゲージ長で区間平均された値である、②不純物や欠陥に当たり発生する散乱光は非常に微弱で、入射する光パルスの強度には上限があり、かつファイバには伝送損失があるため、より遠方の散乱光の信号強度は装置近傍よりも弱くなり、そして、より遠方ほど測定精度は劣るため、S/N比を上げるため加算平均等の処理が行われている、③DASで観測されるデータの物理量はひずみ速度である、など、地震計とは異なる点がある。地震観測で規模推定にDAS記録を用いるには、少なくとも同じ地点で入力振動に対して観測値が線形性を有していることが必要である。また、通常の地震波動解析を行う上で再現性が重要である。

船明トンネル内に敷設したファイバは、約30mを2往復半折返している箇所があり、固有周期1秒の三成分速度型地震計が1台設置されている。そこで、敷かれているファイバと直角に30、60、100、130、160、200cm離れた場所で、ハンマーで地面を叩いて振動を起こし、DASの記録に、地震計のように振動源からの距離に応じて振動の減衰が見られるか、同じ設置環境にある同じ場所の異なるファイバで観測される記録と大きく変わらないかなどについて調べたので紹介する。