日本地震学会2020年度秋季大会

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Room A

Special session » S24. Pioneering the future of seismology with machine learning

[S24]AM-1

Sat. Oct 31, 2020 9:00 AM - 10:15 AM ROOM A

chairperson:Takahiko Uchide(Geological Survey of Japan, AIST), chairperson:Hisahiko Kubo(NIED), chairperson:Yuki Kodera(Meteorological Research Agency, JMA)

9:30 AM - 9:45 AM

[S24-03] False alarm and its measure on the earthquake early warning for the off-Torishima earthquake on July 30, 2020

〇Masumi Yamada1 (1.DPRI Kyoto Univ.)

2020年7月30日に鳥島近海で発生した地震では、震度5弱以上を予測して一般向けに緊急地震速報が発表された。しかしながら、 実際には震度1を観測した地点はなく、結果的に過大な警報となった。緊急地震速報が発表された原因として、(1) 地震の場所を誤って予測し、実際の震源より400㎞以上北側に決めてしまったこと(2)誤った震源により、マグニチュードを過大評価してしまったこと、が挙げられる。

 現在の緊急地震速報では、震源決定手法として、IPF法(気象庁の地震観測網+S-net)、着未着法(Hi-net観測網)、EPOSによる自動震源決定法(気象庁の地震観測網+Hi-net)と3つの手法を利用している。鳥島沖の地震では、島嶼部で観測点の数が少なかったため震源決定精度が悪く、実際の震源より400㎞以上北側に決めてしまった。これが第一の問題点である。

 2つ目の問題点はマグニチュードの過大評価である。たとえ震源位置が誤っていたとしても、震源近傍の観測点を利用してマグニチュードを計算していれば、振幅が小さいため地震のマグニチュードは小さく予測されるはずである。しかしながら、マグニチュードの決定には予測震源から800㎞以上離れた小笠原諸島の母島観測点で観測されたデータを用いていた。マグニチュードの計算には閾値があり、振幅の小さい観測点(<50μm)はマグニチュード推定に利用されない。また、2018年1月5日の茨城県沖の地震の誤報の後の改修により、理論P波到着時刻よりも前の振幅は、マグニチュード推定に利用されなくなった。おそらくこれらの制約条件によって、マグニチュードの計算に利用できたのは母島観測点のみとなり、その振幅値を利用したために、過大なマグニチュードを予測する結果となった。なお、気象庁では9月上旬より、マグニチュードの算出には震源からの距離が700km以下のものを使用する予定である。
 島嶼部での震源決定精度を上げるための改善策は、観測点の密度を増やすことである。現在、気象庁の地震観測網、Hi-net、S-netのデータは上述のように別々の手法によって計算されている。しかしながら、これらのデータを統合して同じ手法で利用する事ができれば、新たな観測網を設置することなく、既存の観測網を利用して観測点密度を増やすことが可能である。本研究では、全国地震観測データ流通ネットワークを利用して、防災科学技術研究所のHi-netとS-netのデータを統合して解析した。解析には、パーティクルフィルタを利用して統合的にデータを処理するIPF法の改良版を使用している。この計算は、10秒程度のバッファを設けているが、オンラインで逐次計算されている。その結果、震源の誤差は30km程度とほぼ正確に震源決定することができ、予想されるマグニチュードも5.8と正しく推定できることが分かった。発表では詳細な解析結果について報告する。