4:00 PM - 5:30 PM
[S24P-03] Denoise and seismic phase detection with Convolutional Neural Network
気象庁は2016年4月から, 自動震源決定手法であるPF法(溜渕・他, 2016, Tamaribuchi, 2018)の運用を開始した. PF法では, まず, 連続地震波形データから分散比, Characteristic Function(Allen, 1978), AR-AIC(横田・他, 1981)などを用いて地震波検知・検測を行う(一次検測). その後, 一次検測値を元にグループトリガ(清本・他, 2013)や重点サンプリング法などを用いて震源を計算し, 決定する. PF法は従来の自動震源決定手法に比べ, イベント検知能力や震源精度の大幅な向上をもたらしたものの, 一次検測の段階でノイズの誤検知やP相・S相の取り違えにより, 誤った震源を決定してしまうことも多い. 一次検測の段階でノイズの誤検知や相の取り違えを減らすことができれば, PF法の震源精度はさらに向上すると期待される. 本研究では, ノイズ/P相/S相の識別を行うモデルを畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により構築し, 気象庁の保有する検測値, 地震波形データを与えて学習させ, その精度を検証する. また, PF法と組み合わせることによって, PF法の震源がどのように変化するかを検証する.
2017年から2018年4月1日までの間に, 気象庁一元化地震カタログに記載のあるK,k登録(精度が良く, 手動で検測された, 低周波地震以外の)イベントの各観測点でのP・S相の検測時刻周辺の4秒間を入力する波形データ(計80万個以上), 相の種類をラベルとして学習モデルに与える. なお, ノイズ波形データはP相到達前の4秒間の波形とする. そして, 学習する地震のマグニチュードや, 波形のフィルターバンクの有無を変更することにより, 複数の学習済みモデルを作成する. フィルターバンク無しの場合は, 2Hzのハイパスフィルターを適用した3成分 (上下・南北・東西) 波形のみを入力として, 学習を行う. 一方, フィルターバンク有りの場合は, フィルターなし・2-8Hzのバンドパスフィルター, 5Hzのハイパスフィルターの異なる周波数帯域でのフィルターを適用した, 3種類の3成分波形を入力として, 学習を行う. その後, 一元化作業で使用される全ての観測点の, 2019年4月1日に記録された24時間の連続地震波形データを用いて, 学習済みモデルの性能を検証する. 検証では, まず連続波形に対しPF法による一次検測を行う(PF法一次検測値).PF法一次検測値周りの波形を, 上記モデルで相分類することにより, ノイズと判定された検測値の削除(デノイズ)や相種別の変更を行う(デノイズ済み一次検測値). それとは別に, 連続波形を4秒間ずつ1秒シフトで直接上記モデルに供給して相判別させ, その結果をさらに検測用CNNモデル(Ross et al., 2018に準拠)に入力した検測値(GPD一次検測値)も用意する. この3つの、PF法一次検測値、それぞれの学習モデルによるデノイズ済み一次検測値, GPD一次検測値をもとに, PF法による震源決定を行い, 一元化地震カタログに記載のある震源と一致する数, および過剰な数の変化を比較することにより, 各手法の評価を行う.
フィルターバンク無し・M2以上の地震波形を学習データに使ったモデルを, ノイズ確率99%以上の波形を削除するデノイザーとして使用したところ, 一致数が410個, 過剰が102個と, PF法一次検測値を用いた震源(一致:412; 過剰:144)に比べて, 一致数をほぼ減らさずに, 過剰を減らすことができた. 一次検測値数に関しても, デノイズ前の1,243,804から81,620と, 3割以上削減する. つまり, PF一次検測値のデノイズ処理により, 計算処理時間の短縮や, 過剰イベントの抑制といった, 震源計算処理の効率化が期待される. 同モデルを用いて, 一定のP・S相確率値(60%, 70%, 80%, 90%)以上のGPD一次検測を行ったところ, PF法に比べて, 一致数が大幅に減り, 過剰数が増えてしまう. フィルターバンク有り・M2以上のモデルでも, デノイザーとして使った場合には、一次検測値数を大幅に減らした上で, 一致数を減少させないが, GPD一次検測値では一致が減り, 過剰が増えるという, 同様の傾向が見られる.
一方, フィルターバンク有り・M0以上のモデルのGPD一次検測値(P・S相確率が99%以上)を用いたところ, PF法一次検測に比べ, 一致数が422・過剰数が238と, 一致・過剰ともに増加した. 過剰のうち, 一元化地震カタログに登録にない地震は97個とPF法(34個)の約3倍, ノイズ誤検知により決まった震源は23個でPF法(51個)の半分程度に留まった. これらは, ノイズによる誤震源を抑制しつつ, 地震検知能の更なる改善に寄与する可能性を示している. 一方で, 発破も108個とPF法(51個)の2倍以上となっており, 発破検知による過剰震源を抑制することが, 今後の課題である.
2017年から2018年4月1日までの間に, 気象庁一元化地震カタログに記載のあるK,k登録(精度が良く, 手動で検測された, 低周波地震以外の)イベントの各観測点でのP・S相の検測時刻周辺の4秒間を入力する波形データ(計80万個以上), 相の種類をラベルとして学習モデルに与える. なお, ノイズ波形データはP相到達前の4秒間の波形とする. そして, 学習する地震のマグニチュードや, 波形のフィルターバンクの有無を変更することにより, 複数の学習済みモデルを作成する. フィルターバンク無しの場合は, 2Hzのハイパスフィルターを適用した3成分 (上下・南北・東西) 波形のみを入力として, 学習を行う. 一方, フィルターバンク有りの場合は, フィルターなし・2-8Hzのバンドパスフィルター, 5Hzのハイパスフィルターの異なる周波数帯域でのフィルターを適用した, 3種類の3成分波形を入力として, 学習を行う. その後, 一元化作業で使用される全ての観測点の, 2019年4月1日に記録された24時間の連続地震波形データを用いて, 学習済みモデルの性能を検証する. 検証では, まず連続波形に対しPF法による一次検測を行う(PF法一次検測値).PF法一次検測値周りの波形を, 上記モデルで相分類することにより, ノイズと判定された検測値の削除(デノイズ)や相種別の変更を行う(デノイズ済み一次検測値). それとは別に, 連続波形を4秒間ずつ1秒シフトで直接上記モデルに供給して相判別させ, その結果をさらに検測用CNNモデル(Ross et al., 2018に準拠)に入力した検測値(GPD一次検測値)も用意する. この3つの、PF法一次検測値、それぞれの学習モデルによるデノイズ済み一次検測値, GPD一次検測値をもとに, PF法による震源決定を行い, 一元化地震カタログに記載のある震源と一致する数, および過剰な数の変化を比較することにより, 各手法の評価を行う.
フィルターバンク無し・M2以上の地震波形を学習データに使ったモデルを, ノイズ確率99%以上の波形を削除するデノイザーとして使用したところ, 一致数が410個, 過剰が102個と, PF法一次検測値を用いた震源(一致:412; 過剰:144)に比べて, 一致数をほぼ減らさずに, 過剰を減らすことができた. 一次検測値数に関しても, デノイズ前の1,243,804から81,620と, 3割以上削減する. つまり, PF一次検測値のデノイズ処理により, 計算処理時間の短縮や, 過剰イベントの抑制といった, 震源計算処理の効率化が期待される. 同モデルを用いて, 一定のP・S相確率値(60%, 70%, 80%, 90%)以上のGPD一次検測を行ったところ, PF法に比べて, 一致数が大幅に減り, 過剰数が増えてしまう. フィルターバンク有り・M2以上のモデルでも, デノイザーとして使った場合には、一次検測値数を大幅に減らした上で, 一致数を減少させないが, GPD一次検測値では一致が減り, 過剰が増えるという, 同様の傾向が見られる.
一方, フィルターバンク有り・M0以上のモデルのGPD一次検測値(P・S相確率が99%以上)を用いたところ, PF法一次検測に比べ, 一致数が422・過剰数が238と, 一致・過剰ともに増加した. 過剰のうち, 一元化地震カタログに登録にない地震は97個とPF法(34個)の約3倍, ノイズ誤検知により決まった震源は23個でPF法(51個)の半分程度に留まった. これらは, ノイズによる誤震源を抑制しつつ, 地震検知能の更なる改善に寄与する可能性を示している. 一方で, 発破も108個とPF法(51個)の2倍以上となっており, 発破検知による過剰震源を抑制することが, 今後の課題である.