14:15 〜 14:30
[S02-04] 三陸沖海底光ケーブルを用いた分散型音響センシング計測による制御震源と地震記録の特性
散乱波の干渉計測による分散型音響センシング(DAS)は光ファイバセンシングの一つであり、ファイバに沿って短い計測間隔で、長距離に渡って記録が得られることから、地震観測にも適用されている。干渉計測を用いたDAS計測は徐々に正確さが向上しており、現在は、質の高い記録が得られるようになってきている。現在海域において地震観測を行っている観測点はまだ数が少ないが、海底ケーブルを用いたDAS計測は線状ではあるが、海底観測点数を大幅に増加させることが可能で、今後が期待されている。 1996年に東京大学地震研究所により設置された三陸沖海底光ケーブル地震津波観測システムは、拡張用に6本の予備ファイバがあり、この予備ファイバをDAS計測に使うことができる。そこで、2019年2月以降、予備ファイバを用いて、計8回の臨時観測を行っている。それぞれの観測期間は2日から2ヶ月である。収録チャンネル間隔が10m以下で、収録距離は長いときで100kmに達する。計測精度を示すケージ長は10mから100mである。それぞれの観測において、微小地震を含む多数の地震が記録された。2019年2月の第1回の観測では、気象庁が決定したマグニチュード1.8以上のケーブルシステムから震央距離200km程度までの地震はすべて確認することができた。また、震央距離が約2,300kmであるマグニチュード6.6の遠地地震も記録された。三陸沖海底光ケーブル観測システムには、3地点において3成分加速度計が接続されており、DASデータとの比較が可能である。DASはファイバ方向の歪を計測しているが、単純な仮定の基で加速度に変換できる。その結果、現在の干渉計測によるDAS観測のノイズレベルは、ケーブルシステムに接続されている加速度計とほぼ同程度であることが確かめられた。DAS計測は陸上局から約100km沖合までを空間的に高密度で観測していることから、海岸線から沖合に至るノイズスペクトルの空間変化を求めることもできた。 2020年11月に三陸沖海底光ケーブルのDAS計測と制御震源による構造探査実験を行った。使用した制御震源はBolt社1500LLエアガン(1台あたり容量1500cu.in.)4台とSercel社GIガン(1台あたり容量355 cu.in.)2台の2種類である。陸上局舎において、2本のファイバ末端にそれぞれ計測器を接続し、2台による同時DAS観測を行った。DASの収録はサンプリング500Hz、チャンネル間隔5m、ゲージ長40m、観測総距離100km(一部80km)である。1500LLエアガンの測線は、海底ケーブル敷設ルートとその延長の全長約200kmである。発震間隔は約100mとした。GIガンの測線は、海底ケーブル敷設ルートのみの約100kmであり、この測線上を2回発震した。発震間隔は約50mである。エアガン発震中はDAS計測を実施すると共に、発震を行う観測船から、ストリーマケーブルを曳航して、記録を収録した。収録されたデータは、2つの計測器間に大きな差はないことが確認された。また、DAS計測による制御震源の記録とケーブルシステムの加速度計による記録を比較したところ、DAS記録ではP波振幅が小さいことが確認された。 構造探査実験では、海底において5mの間隔で全長80km以上の収録が行われており、高分解能な反射断面が得られることが期待される。そのため、得られたDASデータに対して基本的な反射処理を施し評価を行った。まず、DAS計測により記録された制御震源の水中直接波の走時を用いて、ケーブル位置の再決定を行った。その後、CMPソート、bandpass処理、単純なdeconvolution処理を行った後に、定速度重合により反射断面を作成した。DASデータは反射波の連続性が高くないために、定速度重合法による速度解析を行った。震央距離が3km以内のCMP gatherにおいて、1500LLエアガン記録に対しては1.0km/s、GIガン記録に対しては0.8km/sとして、定速度重合により反射断面図を作成した。DAS計測による反射断面図をストリーマケーブルによる反射断面と比較したところ、反射面の走時は異なるが、基本的に同じ反射面を示していると解釈された。DAS計測による反射断面における反射面の海底面からの往復走時は、ストリーマケーブルによる反射断面における同じと思われる反射面の海底面からの往復走時の約2〜5倍となっている。反射面まで比較的長い往復走時やCMP重合の遅い重合速度などから、得られたDAS計測による反射断面は変換されたS波による反射波が卓越していると考えられる。