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[S02-08] Hypocenter location system with automatic correction of picking data by relative hypocenter location method
1. はじめに 到着時刻の自動読み取り、震源決定システムの開発が行われ、比較的精度の高い震源が自動決定できるようになった。しかし、各種ノイズの混入のため、全ての観測点の読み取りを正確に行うことは難しい。自動震源決定システムは、走時残差の大きさを利用して、間違った読み取りデータの削除を行っているが、地下構造に大きな不均質性が存在するため、読み取り誤差と、不均質性による走時残差とを区別することが難しい。一方、隣接して発生する2個の地震を相対震源決定すると、不均質性の影響が相殺され、走時残差は小さくなる。相対震源決定の走時残差を用いれば、自動読み取りの誤差が大きい観測点を自動検出できる可能性がある。本報告では、一個の地震について、その近傍で発生するマグニチュードの大きい地震を数10個選び、一個の地震と、数10個の地震との相対震源決定を行うことにより、その地震の各観測点での読み取り誤差を検出し、自動修正を行うシステムを開発した。また、自動震源決定に適した相対震源決定手法を開発したので報告する。 2.複数の地震の相対震源決定を用いた読み取り誤差の推定方法 隣接して発生する地震を、相対震源決定すると、パスの違いによる不均質性の影響が相殺され、走時残差を小さくすることができる。また、大きい地震のS/N比は、小さい地震のそれに比べ高く、読み取り精度は高い傾向にある。そこで、自動震源決定された地震Akについて、その近傍に震源決定され、かつ、マグニチュードの大きい地震をN個(Bkm)選ぶ。地震Akと、そのj観測点の読み取り値をAkj、地震Bkmとの相対震源決定の、j観測点の走時残差をRkmjとする。読み取り誤差の推定は、その理論的到着時刻Tkjを推定することにより行う。読み取りが行われ、Akjが存在する場合は、Tkjは、走時残差Rkmjの平均値とAkjとの和で表される。Akjの読み取り値が存在しない場合で、地震Bkmのj観測点の到着時刻が存在する場合は、この読み取りデータを満足するように、地震毎に、Akのj観測点の理論走時を求め、その平均値で理論走時を与えるようにした。この方法の最大のメリットは、地震Akの到着時刻が、N個の地震の読み取りデータから精度よく推定できる点である。ここでは、N=50とした。また、走時残差Rkmjの平均値は、先ず、平均値と、分散を計算し、誤差が2乗平均誤差を超えるデータを削除して、求めるようにした。到着時刻の再読取りは、読み取り値が、推定された到着時刻の2乗平均誤差の2倍を超える範囲外だった場合に行うようにし、顕著な位相の立ち上がりが、その範囲内に存在する場合に、読み取り値を採用するようにした。 3.相対震源決定 Waldhauser & Ellsworth (2000)によるHypoDDは、解析する全領域で発生する全地震の相対震源決定の誤差が最小となるように震源決定する方法である。自動震源決定は、日本列島全域で発生する地震を対象にして行う場合もある。また、地震は、毎日発生することから、地震が発生する度に、過去に遡って、HypoDDを行うと、計算機の負荷は膨大になる。そこで、ここでは、上記N個の地震Bkmの震源位置をレファレンスとして、全てのBkmの地震との相対震源決定の走時残差の2乗和を最小となるように、Akの震源位置を求めるようにした。すべてのAkについて、この震源決定を行うと、Bkmに属する個々の地震も、同様に、周りで発生するN個の地震で相対震源決定される。本震源決定では、この操作を2回繰り返し、相対震源決定されたBkmの地震位置をレファレンスとして、Akの地震の相対震源決定を行うようにした。 4.結果 解析には、2016年10月21日マグニチュード6.6の鳥取県中部地震の発生の翌日の24時間の、京大・九大・東大地震研合同余震観測班(Iio et al.,2020)による地震観測データ,及び、2017年3月―4月の福島県いわき周辺で発生した地震のHi-netデータを用いた。堀内・他(2009)による自動震源決定システムで震源決定されて地震のトリガー波形とピックファイルを用いて、上述の方法で、走時残差の大きい観測点の再読み取り、読み取りが行われていない観測点の再読取りを行ない、相対震源決定を行った。通常の自動震源決定と、本方法による震源決定結果の比較、及び、一元化震源と、本方法によるそれとの比較から、本方法の適用により、詳細な震源分布が得られることが示された。また、鳥取県中部地震のデータを用いた場合の、相対震源決定の走時残差の平均値は、0.11秒であった。東北地方、海域で発生する地震についても、本方法の有効性を調べる予定である。