日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S02. 地震計測・処理システム

[S02] PM-2

2022年10月26日(水) 15:00 〜 16:15 C会場 (8階(820研修室))

座長:塩原 肇(東京大学 地震研究所)、佐藤 利典(千葉大学)

15:45 〜 16:00

[S02-09] 極限環境域に適用可能な小型高性能広帯域地震計の開発

*山田 竜平1、浅利 一善2、白石 浩章3 (1. 会津大学、2. 国立天文台、3. JAXA/宇宙科学研究所)

地震の発生メカニズムや天体の内部構造に関する研究は、地震計による観測網拡張に伴い進展してきている。その一方で、一般に、海底、火山地域、極域、月惑星等、いわゆる人が地震計を運搬し、設置するのが困難な極限環境下に、地震観測網を展開するのは決して容易ではない。本研究では、極限環境域への地震観測網展開を目指すため、小型軽量、かつ高性能の広帯域地震計の開発を進めている。
 この開発において、我々は宇宙機用として開発された短周期地震計(図1)をベースに周波数応答の広帯域化を実施してきた。この地震計は固有周波数1Hzの電磁コイル式の短周期地震計であり、同タイプの地震計と比較しても小型軽量(直径5cm×高さ5cm, 重量350g )でありながら、より高い感度(1000V/m/sec)を実現しているため、火山噴火地域や月惑星等、無人で観測装置を運ぶ際に有利となる。また、この地震計は航空機等からの投下により無人でのセンサー設置が可能なハードランディングプローブであるペネトレータにも搭載できる。ペネトレータは槍型の貫入装置であり、地震計を搭載しての地上試験実績も有している。開発した地震計は、このペネトレータの貫入衝撃に耐えて微小振動を観測できるだけの頑健性もすでに実現している (Yamada et al., 2009)。この小型軽量で汎用性の高い短周期地震計を広帯域化する事で、地震計の運搬・設置が困難な極限環境域で例え一点設置であっても、より多くの観測成果を得る事が期待できるようになる。
 本研究では、この短周期計に容量変位検出器とフィードバック機構を取り付けて広帯域化を図り、1Hzよりも長周期側でも高感度 (1000V/m/sec以上)を実現する事を目指した。この広帯域地震計として、我々は図1に示す地震計の振り子とケースの両端面に電極版を取り付けて、検波回路を接続することで、地動変位に伴う容量変化を検出できるようにした。そして、この地震計で固有周期10-30秒を実現するための負帰還回路の設計と製作を行った。この負帰還回路をセンサーに取り付けて、周波数応答の計測を実施したところ、設計通りの応答を示し、少なくとも0.1-20Hzの間で、約2000 V/m/secの感度を実現可能な事を確認する事ができた。そして、広帯域地震計の地動応答の評価のため国立天文台水沢の江刺地球潮汐観測所で、リファレンス用の広帯域地震計(CMG3 ESP)との比較観測を実施した。その結果、現状、0.15~1Hz程度までは、開発した広帯域地震計はリファレンス地震計と同等の応答を示す事を確認できた。一方、長周期側では、リファレンス地震計よりも、ノイズがより多く観測波形に含まれる事も示されたので、現在、負帰還回路の小型化や低ノイズOPアンプの使用などで、地震計の低ノイズ化を図っている。
 本発表では、この小型負帰還回路を使用した結果も含めて、広帯域地震計の設計、これまでの開発状況、及び実験室や江刺での試験結果について、報告・議論する予定である。