9:30 AM - 12:00 PM
[S03P-03] Crustal deformation associated with an earthquake swarm in the Noto Peninsula based on combined analysis of multiple GNSS networks
はじめに
能登半島の石川県珠洲市の地殻内では,2018年頃から地震回数が増加傾向にあり,2020年12月からは活発な地震活動が2022年7月現在まで継続している(地震調査委員会, 2022).2022年6月19日にはM5.4の地震が発生し,最大震度6弱を記録した.地震活動の活発化とともに,周辺の国土地理院の電子基準点において,震源域から遠ざかる向きの地殻変動が観測されている(国土地理院, 2022)が,有意な変動を示す観測点は3点のみであり,地殻変動の全体像は十分明らかにはなっていない.京大防災研と金沢大学では地震活動の活発化を受けて,群発地震震源域近傍に臨時GNSS観測点を設置し,観測を行なっている.また,ソフトバンク株式会社(以下,ソフトバンク)では,全国3,300点を超える独自のGNSS観測網を設置,稼働させており,これらのGNSS観測網で得られたデータを統合解析することによって,地殻変動の全体像が把握できることが期待される.本研究では,GNSSデータの統合解析によって得られた地殻変動の特徴とその変動源モデルの推定結果について報告し,群発地震との関係について考察を行う.
データ解析手法及び観測された地殻変動
本研究では,各機関からRINEXデータの提供を受けて,GipsyX Ver 1.4(Bertiger et al., 2020)の精密単独測位法を用いてITRF2014準拠の日座標値を計算し,地殻変動の解析を行った.解析に用いた観測点数は,ソフトバンク15点,国土地理院GEONET11点,大学6点である.群発地震発生以前のデータが十分あるGEONET観測点データに対しては,群発地震前の日座標値に対して,定常変動や東北沖地震の余効変動,季節変動成分を関数フィティングによって除去し,非定常地殻変動を抽出した.また,ソフトバンクと大学の観測点に対しては,GEONET観測点での群発地震前2年間の速度をOkazaki et al.(2021)の方法で各観測点位置での速度に補間して差し引くことにより,非定常地殻変動を抽出した.非定常地殻変動は,群発地震の震源域を中心として放射状に広がっており,震源域周辺では顕著な隆起も観測され,約1.5年間での最大隆起量は6.5cmに達している.
変動源モデルの推定及び考察
2021年2月から2022年2月までの1年間の変位3成分をデータとして,開口割れ目を仮定してそのパラメータをMatsu’ura and Hasegawa(1987)の非線形インバージョンにより推定した.その結果,4つの群発地震のクラスターのほぼ中央の地震が少ない領域に,上端深さ約14kmで西南西に約30度傾斜する開口割れ目が推定された(図).体積変化量は2.1×107m3となる.開口割れ目以外に球状圧力源や南東傾斜の逆断層を仮定しても,ある程度データを説明するモデルを作成することは可能であるが,開口割れ目によるクーロン応力(ΔCFS)の増加域が群発地震の震源分布と対応することから,対局的には何らかの流体がシル状に地殻内に貫入していると解釈した.活動開始からの1.5年間での体積変化量は4×107m3に達するが,2020年12月からの3ヶ月程度においては,変動源の位置が上記の推定位置よりも南西側に推定されることから,変動源が移動,拡大している可能性も示唆される.
謝辞:本研究で使用したソフトバンク独自基準点の後処理解析用RINEXデータは,ソフトバンク株式会社・ALES株式会社より東北大学大学院理学研究科が提供頂いたものを使用しました.国土地理院の電子基準点RINEXデータ,気象庁一元化震源データを使用しました.京都大学及び金沢大学のGNSS観測点の設置にあたり,珠洲市教育委員会,珠洲市企画財政課,珠洲市産業振興課,珠洲市総務課,能登町教育委員会及び奥能登国際芸術祭実行委員会にお世話になりました.ここに記してこれらの機関に感謝いたします.
能登半島の石川県珠洲市の地殻内では,2018年頃から地震回数が増加傾向にあり,2020年12月からは活発な地震活動が2022年7月現在まで継続している(地震調査委員会, 2022).2022年6月19日にはM5.4の地震が発生し,最大震度6弱を記録した.地震活動の活発化とともに,周辺の国土地理院の電子基準点において,震源域から遠ざかる向きの地殻変動が観測されている(国土地理院, 2022)が,有意な変動を示す観測点は3点のみであり,地殻変動の全体像は十分明らかにはなっていない.京大防災研と金沢大学では地震活動の活発化を受けて,群発地震震源域近傍に臨時GNSS観測点を設置し,観測を行なっている.また,ソフトバンク株式会社(以下,ソフトバンク)では,全国3,300点を超える独自のGNSS観測網を設置,稼働させており,これらのGNSS観測網で得られたデータを統合解析することによって,地殻変動の全体像が把握できることが期待される.本研究では,GNSSデータの統合解析によって得られた地殻変動の特徴とその変動源モデルの推定結果について報告し,群発地震との関係について考察を行う.
データ解析手法及び観測された地殻変動
本研究では,各機関からRINEXデータの提供を受けて,GipsyX Ver 1.4(Bertiger et al., 2020)の精密単独測位法を用いてITRF2014準拠の日座標値を計算し,地殻変動の解析を行った.解析に用いた観測点数は,ソフトバンク15点,国土地理院GEONET11点,大学6点である.群発地震発生以前のデータが十分あるGEONET観測点データに対しては,群発地震前の日座標値に対して,定常変動や東北沖地震の余効変動,季節変動成分を関数フィティングによって除去し,非定常地殻変動を抽出した.また,ソフトバンクと大学の観測点に対しては,GEONET観測点での群発地震前2年間の速度をOkazaki et al.(2021)の方法で各観測点位置での速度に補間して差し引くことにより,非定常地殻変動を抽出した.非定常地殻変動は,群発地震の震源域を中心として放射状に広がっており,震源域周辺では顕著な隆起も観測され,約1.5年間での最大隆起量は6.5cmに達している.
変動源モデルの推定及び考察
2021年2月から2022年2月までの1年間の変位3成分をデータとして,開口割れ目を仮定してそのパラメータをMatsu’ura and Hasegawa(1987)の非線形インバージョンにより推定した.その結果,4つの群発地震のクラスターのほぼ中央の地震が少ない領域に,上端深さ約14kmで西南西に約30度傾斜する開口割れ目が推定された(図).体積変化量は2.1×107m3となる.開口割れ目以外に球状圧力源や南東傾斜の逆断層を仮定しても,ある程度データを説明するモデルを作成することは可能であるが,開口割れ目によるクーロン応力(ΔCFS)の増加域が群発地震の震源分布と対応することから,対局的には何らかの流体がシル状に地殻内に貫入していると解釈した.活動開始からの1.5年間での体積変化量は4×107m3に達するが,2020年12月からの3ヶ月程度においては,変動源の位置が上記の推定位置よりも南西側に推定されることから,変動源が移動,拡大している可能性も示唆される.
謝辞:本研究で使用したソフトバンク独自基準点の後処理解析用RINEXデータは,ソフトバンク株式会社・ALES株式会社より東北大学大学院理学研究科が提供頂いたものを使用しました.国土地理院の電子基準点RINEXデータ,気象庁一元化震源データを使用しました.京都大学及び金沢大学のGNSS観測点の設置にあたり,珠洲市教育委員会,珠洲市企画財政課,珠洲市産業振興課,珠洲市総務課,能登町教育委員会及び奥能登国際芸術祭実行委員会にお世話になりました.ここに記してこれらの機関に感謝いたします.