The 2022 SSJ Fall Meeting

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Poster session (2nd Day)

Regular session » S04. Tectonics

[S04P] AM-P

Tue. Oct 25, 2022 9:30 AM - 12:00 PM ROOM P-1 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

9:30 AM - 12:00 PM

[S04P-04] Estimation of the crustal deformation using radiated energy of tectonic tremors in the northern Kii Peninsula

*Tsukasa Yamamoto1, Yoshihiro Hiramatsu1 (1. Kanazawa University)

はじめに
 プレート境界浅部での地震発生過程を考察する上で遷移帯でのすべりや地震活動をモニタリングすることは重要である。テクトニック微動と短期的SSEは時空間的に同期して発生することが知られている。微動は地殻変動量の推定に使用でき、Maeda and Obara (2009)では微動の累積放射エネルギーの時間的なパターンが観測された傾斜量変化とよく一致することを示した。しかしながら、微動を伴わないすべりも観測されており(e.g. Wech and Bartlow, 2014)、微動とすべりの関係はいまだ不明瞭である。そこで、本研究では微動の震源位置と放射エネルギーを使用して地殻変動量を推定することを目的とする。

データと方法
 本研究の対象地域は紀伊半島である。産業技術総合研究所のアレイ観測網の地震波形データを解析したNakamoto et al. (2021)で報告された微動の震源と放射エネルギーを使用する。Nakamoto et al. (2021)で報告されたETSのうち微動のクラスターが十分多く、かつ測地データの解析から短期的SSEが1つのみ発生しているETSを選択する。まず、Shiomi et al. (2008)のプレート境界面モデルを使用し、10 km×10 kmの小断層を配置する。次に、各小断層に微動を分配して累積放射エネルギーを求める。累積放射エネルギーから地震モーメントへの変換にはscaled energyを使用し、さらに地震モーメントから小断層のすべり量を推定する。その後、各小断層の断層パラメータを使って地殻変動量を計算する。このとき、Scaled energyは各ETSの累積放射エネルギーとそのETS期間中に発生した地震モーメントの比として使用する。まず、Scaled energyを空間的に均質と仮定して走向、傾斜、すべり角の条件を以下の通りにする。①走向、傾斜はプレート境界面モデルを使用し、すべり角を90°とする、②ETS期間中に発生したSSEの走向、傾斜、すべり角を使用する、③①と同様に走向、傾斜はプレート境界面モデルを使用し、45°から135°の間で観測値と計算値の差が最小になるすべり角を各ETSで決める、④走向、傾斜はプレート境界面モデル、すべり方向を一定にしたときのすべり角を使用する、⑤プレート境界面モデルをIwasaki et al. (2015)に変更し、①と同様の条件を使用する。

結果と考察
 各ETSにおいて、微動の累積放射エネルギーから推定した傾斜量は観測値と比較するといずれの条件でも数倍程度の違いとなった。観測値と計算値の違いを定量的に評価するために、傾斜量の東西成分と南北成分の観測値と計算値の差の二乗和を計算すると、③のすべり角を変化させたときが最も観測値との差が小さくなった。 微動の累放射エネルギー分布は空間的に均質ではないため、変換係数であるscaled energyの空間分布を変化させることでより観測値と合う傾斜量が得られる可能性が考えられる。そこで、scaled energyが空間的に不均質な場合について考察する。全ETSの微動の累積エネルギーが1.0×108Jを超える小断層を高放射エネルギー領域とし、scaled energyを変化させた。その他の領域の0.1, 0.2, 0.5, 1, 10, 20, 50倍として①の条件で計算した。結果として、scaled energyが1倍、つまりその他の領域と同じ値のときに観測値と計算値の差の二乗和が最小となった。したがって、scaled energyは空間的に均質に分布すると考えられる。