The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (2nd Day)

Regular session » S04. Tectonics

[S04P] AM-P

Tue. Oct 25, 2022 9:30 AM - 12:00 PM ROOM P-1 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

9:30 AM - 12:00 PM

[S04P-05] Strain-rate field of Japan estimated from GNSS data using basis function expansion with ABIC

*Yukitoshi FUKAHATA1, Tomohisa Okazaki2, Takuya Nishimura1 (1. DPRI, Kyoto University, 2. AIP, RIKEN)

GNSS観測により,各観測点におけるある観測期間の変位速度が得られる.得られたGNSS速度データから歪み速度場を推定する方法はいくつもあるが,最近,Okazaki et al. (2021)は,ABIC(赤池のベイズ情報量規準;Akaike, 1980)を用いた基底関数展開に基づく方法を提案した。この方法は,水準測量データから地殻の上下変動を推定したFukahata et al. (1996)の解析法をGNSSデータに応用したものである。具体的には,変位速度場を基底関数展開し,観測されたGNSSデータから平滑化条件付きでその展開係数を求めるインバージョン解析を行う.観測データと平滑化の重みはABIC最小の規準で客観的に決定する.微分可能な関数を基底関数として用いることにより,変位速度場が得られればそれを解析的に微分することで,直ちに歪み速度場を得ることができる.解析では,双三次のBスプライン関数を用いた.
 解析には,国土地理院(GEONET),海上保安庁,京都大学,国際GNSSサービス(IGS),UNAVCO,韓国GNSSデータ統合センターから公開されているGNSS観測点データを使用した。各観測点の日座標値をソフトウェアGIPSY Ver. 6.4 (Bertiger et al. 2010)を用いて算出し,地球基準座標系ITRF2014に準拠したIGS14座標系に変換した。Okazaki et al. (2021)では,2006年1月から4年間のデータを解析したが,本研究ではそれに加えて,1997年1月から3年間,2017年10月から3年間のデータも併せて解析した.使用した観測点数は各期間ごとに880, 1337, 1340点である。得られた変位データから,国土地理院および気象庁より公開されている機器交換のタイミングで生じたオフセット,M6以上の大地震時に生じた変動などを除去した。但し,余効変動については除去していない。そのような補正を施した時系列変位データに対し,東西・南北の各成分ごとに線形トレンドおよび年周成分,半年周成分を最小二乗法で回帰し,得られた線形トレンドの係数を各期間の平均変位速度とした。
 解析の結果得られた各期間の歪み速度場を比較すると,特に最後の期間には東北沖地震の余効変動が含まれていることもあり異なっている部分も多いが,全体的には時間的な変動はそれほど大きくはなく,似通った歪み速度場となった。即ち,日本列島では,最近の四半世紀について,大まかには一定の速度で歪みが進行していることが分かった。その一方,これまでも指摘されてきたように,空間的には大きな変動があることが分かった.日本海東縁〜新潟神戸歪集中帯および奥羽脊梁山脈を初めとする地域で非常に速い東西短縮が生じている一方,中国地方および茨城県北部から北関東を経て愛知県北部に至る前弧域では歪み速度が顕著に小さい.この前弧の低歪み帯は常陸-三河前弧低歪み帯と名付けた.それ以外の多くの地域でも,これまでよりも高い解像度で歪み速度場が得られた.ポスター発表では,各期間の歪み速度場を貼り出すことで議論の助けとしたい.
 なお,本研究の詳細は地学雑誌で印刷中である.