日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08P] PM-P

2022年10月24日(月) 15:30 〜 18:00 P-2会場 (10階(1010〜1070会議室))

15:30 〜 18:00

[S08P-14] 不均質な摩擦パラメータを伴う断層における本震前のb値の減少とその要因

*伊東 良1、金子 善宏1 (1. 京都大学)

前震活動のメカニズムを理解することは,震源物理学の根本的な理解のみならず地震の予測にもつながりうる重要な問題である.大地震前の地震活動の観測により,Gutenberg-Richterの累積地震数とマグニチュードの関係における傾き,すなわちb値が,大地震の発生前に減少することが多数観測されている.例えば2011年Mw9.0東北地方太平洋沖地震では,震源域におけるb値が本震前に減少したことが報告された(Nanjo et al.,2012).しかし,観測されたb値の時間変化を物理的に解釈することは依然として困難である.そこで本研究では,摩擦不均質性を伴う地震サイクルシミュレーションを用いてb値の時間変化の再現を試みるとともに,b値の時間変化の要因について検証する.まず,本震開始前に活発化する前震がみられるような摩擦パラメータの範囲を特定し,モデル内の前震の時空間分布に注目すると,観測と定性的に類似した複雑に遷移する前震分布が現れた.また,得られた前震を統計的に解析しb値を求めたところ,モデル内においても本震前にb 値が減少することを確認できた.さらに,活発化する前震活動がみられる際の断層面のせん断応力は,安定すべり領域においては時間とともに増加していた一方,断層全体の平均せん断応力はほぼ一定であった.これらの結果から,大地震の前にb値が減少する要因は,多くの前震によって安定すべり領域内のせん断応力が増加し,安定すべり領域内においても地震性すべりが起こりやすくなったことで,より大きな地震が時間とともに起こりやすくなったためであると考えられる.