日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

D会場

一般セッション » S14. 地震予知・予測

[S14] AM-1

2022年10月24日(月) 09:30 〜 10:15 D会場 (5階(520研修室))

座長:井元 政二郎(防災科学技術研究所)

09:45 〜 10:00

[S14-02] 南海トラフ地震の連発確率について

*福島 洋1、西川 友章2、加納 靖之3 (1. 東北大学災害科学国際研究所、2. 京都大学防災研究所、3. 東京大学地震研究所)

現在、南海トラフ地震の発生する確率が平時より高まったと評価された場合、南海トラフ地震臨時情報が気象庁より発表される仕組みになっている。特に、ひとたび南海トラフ地震が発生して後発の地震が懸念される場合(いわゆる半割れケース)には「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」が発表されることとなっており、このケースが後発地震の発生確率が最も大きく、社会が最も厳しい状況に置かれることになる。

国の「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン」には、ISC-GEMグローバル地震カタログを使った解析に基づき(橋本・横田, 2019, JpGU)、半割れケースの場合に後発地震は十数回に1回程度の頻度で一週間以内に発生するという目安が示されている。しかし、昭和東南海地震(1944)と昭和南海地震(1946)が約2年、安政東海地震(1854)と安政南海地震が約30時間の時間差で連発したという事実は、南海トラフでの連発確率が世界での平均的な連発確率よりも大きい可能性を示唆している。そこで本研究では、南海トラフ地震連発確率について、過去の発生履歴を考慮した算出を行った。

南海トラフ地震の発生履歴に関する既往の研究成果の調査から、1361年(康安)、1498年(明応)、1605年(慶長)、1707年(宝永)、1854年(安政)、1944–1946年(昭和)の6事例のうち、時間差を置いた連発が3年以内に発生したのは2事例(安政と昭和)〜4事例(康安と明応も追加)と評価した。これらから3年以内の連発確率を推定したところ、4.3% – 96%(95%信頼区間)となった。この確率をグローバル地震カタログから推定した確率(5.3% – 18%;福島・西川, 2020, 地震学会秋季大会)と比べると、推定範囲が重なっていることから、南海トラフでの連発確率が世界での平均的な連発確率と同程度であるという可能性(つまり、南海トラフでも本当に「十数回に1回程度」の頻度で連発する)は否定できないものの、南海トラフでの連発確率のほうが大きい可能性が高いと言える。

また、グローバル地震カタログの解析からは、連発の時間差と後発地震の発生頻度が一般的な余震発生経験則である大森・宇津則に従うことがわかった。そこで、同法則が南海トラフにも当てはまると仮定し、南海トラフでM8以上の地震が発生したあとに同規模の後発地震が発生する確率の時間的推移を算出したところ、6時間以内、1日以内、3日以内、1週間以内の後発地震発生確率は、それぞれ1.0% – 53%、1.4% – 64%、1.3% – 72%、2.1% – 77%と算出された。この結果は、先発地震の発生直後ほど後発地震が起こりやすく、しかもその確率がかなり高い可能性があることを数字で示すもので、後発地震への対応体制をできるだけ迅速に取る必要性を示している。