日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S15. 強震動・地震災害

[S15] PM-3

2022年10月25日(火) 16:30 〜 17:45 B会場 (4階(大会議室))

座長:津田 健一(清水建設技術研究所)、平井 敬(名古屋大学大学院環境学研究科)

17:15 〜 17:30

[S15-04] 観測できていない強烈な衝撃的鉛直地震波動について - その7-
- この地震波の発生が危ぶまれる地盤変動の兆候 -

*前原 博1 (1. 一般財団法人地球システム総合研究所)

1.はじめに
  昨年に続いて同じシリーズの主題の下に,副題を変えて発表します.昨年の予定では-その8-として,「衝撃的鉛直地震波動の新しい定義とその発生原因」を話すことでした.しかし、一つ前の発表の採択に手続きミスが生じたのと,現在の地殻変動の兆候は悠長な話をしている事態ではないことに,後述の通り5月になり気付きました.すでに-その5~7-は投稿済で,-その7-は採択漏れでしたので、2回の発表はそれぞれの副題に簡単に触れ、危険な地殻変動の後述の状況を緊急の話題として報告しました.ここでは-その7-として、表記の副題で緊急の報告をさせて戴きます.

2.衝撃的鉛直地震波動の発生メカニズムの骨子
  この問題の地震波の発生原因自体は物質の相変化であることは明確なことです.未解明なのはそのメカニズムの詳細です.しかし,これまでの研究から地盤は弾性や塑性的な変形だけでなく,剛体的なブロックの動きをすることが分かりました.そしてこの波動は主震動の前、初期、最中及び終息後も発生し,多くは断層帯部や山体の境界部で生じており,そのメカニズムの骨子は次のように定まります.
・①地盤のブロック的な動きで,②ブロック境界の一部に周囲より低圧部(間隙)が発生し,
   ③その低圧部内の遷移点や臨界点を超える物質の相変化が起き,④相変化に伴い体積が膨張し,
 ⑤低圧部の収容体積を超える部分が、周囲より圧力が低い上方に噴出(エネルギーの流動)して,
   ⑥噴出物質が上方の閉塞面にぶつかり,上向きの圧縮波動(非線形的性質)として伝播する.

3.強烈な衝撃的鉛直地震波動が発生し易い場所(危ぶまれる地盤変動の兆候)
  問題の地震波動は地盤ブロックの境界で発生するので,地表の基準点の移動状況を分析すると,その候補地が探せるとの発想から,国土地理院の地殻変動情報を探しました.図1a-cは3.11東日本太平洋沖地震の,前後の日本の地殻変動図で少し長期間の図です.この地震直後は図2に示す図柄の印象(関東を含む東日本の大部分が並行的に東南東に移動)があるのですが,現実には図1b,c,の通り東北部が酒田-石巻付近を軸に東南東に漏斗状に変動をしています.今年3月16日に福島県沖地震(M7.4)が起き,図3はその地表変動図で,福島県の海岸部は阿武隈山地とは動きが違っています.図4は震源断層の推定図です.ほぼ同じ場所で,昨年2月13日に地震(M7.3)が起き,牡鹿半島沖では昨年3月20日(M6.9)と5月1日(M6.8)に起き,近年大地震が続いています.
   図5,6は東北地方の10年前と,5年前から現在の地殻変動状況で,酒田-石巻付近を軸にした東南東に漏斗状の変動の他に,その南側に渦状の変動があります.今年5月22日に茨木県沖地震(M5.8)起き,図7はその震度分布です.この図と町名の資料より猪苗代町から富岡町や双葉町の,内陸部から沿岸部に直線的な地盤の伏在弱線があることが分かりました.図7は図6の地盤変動図を拡大して,沿岸部の活断層位置[紫破線]と伏在弱線[青破線]を記入したものです.細い赤矢印は地盤変動で,青の丸印は原発の位置です.活断層と地盤の弱線が交わる付近は,地盤が小グロック化します.地殻の渦変動で沿岸部は地盤の拡大域で地震を誘発し易くなっています.地殻の大余効変動の影響で,この周辺で大地震が起きると,強烈な衝撃的鉛直地震波動が多発することが危惧されます.この問題の地震波は耐震基準にはないので,地殻の大変動の現状から,柏崎や女川も含めた,原発と関連施設の衝撃的鉛直地震波動に対する安全性の確認と検証が急務です.