The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (1st Day)

Regular session » S16. Subsurface structure and its effect on ground motion

[S16P] AM-P

Mon. Oct 24, 2022 9:30 AM - 12:00 PM ROOM P-2 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

9:30 AM - 12:00 PM

[S16P-10] Application of Bayesian Optimization to Estimate 1D Subsurface Layered Structure from Near-filed Seismic Waveforms

*Hisahiko KUBO1 (1. NIED)

三次元地下速度構造モデルに基づく地震波伝播シミュレーションは昨今では一般的となっているが、近地地震波形の理論的な計算には一次元地下成層構造モデルが近年でもよく用いられている。これは計算の手軽さという理由が大きいが、観測地点直下の速度構造を深さ方向に複数の層で構成されるモデルで近似しても近地地震波形記録がよく再現できるケースが多いという側面もある。一次元地下成層構造モデルの作成においては、既存の三次元地下速度構造モデルからの観測点直下の構造の切り出しやボーリング調査に基づくモデル構築だけでなく、アレイ探査や地震観測などに基づくモデル推定も行われており、例えば中小規模の地震における近地観測波形記録のモデリングを通じた構造推定は有力なアプローチの一つである(e.g., Ichinose et al. 2003; Kakehi 2004; Asano and Iwata 2009)。既存研究では、一次元地下成層構造の推定に、グリッドサーチや勾配法、遺伝的アルゴリズム、焼きなまし法、マルコフ連鎖モンテカルロ法などが用いられてきた。本研究では、近地地震波形に基づく一次元地下成層構造の推定問題に、ブラックボックス最適化問題における効率的な探索手法として近年注目されているベイズ最適化(Mockus 1989; Jones et al. 1998; Frazier 2018)を適用する。一次元地下成層構造モデルは各層の厚さと物性値の組み合わせで構成されるが、各パラメータの間にはトレードオフがあり、どのような組み合わせが観測波形を最もよく再現できそうかを予め予想することは困難である。そのため同推定問題は、波形残差というブラックボックス関数を最小にするモデルパラメータの組み合わせを最適化するブラックボックス最適化問題と言える。ベイズ最適化は可能な限り少ない試行回数でブラックボックス関数の性質を解明し、それを最適化することを目的とした機械学習手法である。具体的には、それまでの試行結果に基づいてガウス過程などによりブラックボックス関数を近似した代理モデルを作成した上で、その代理モデルにおける期待値や標準偏差などに基づく獲得関数を最大化するように次の試行を行う、という流れを繰り返していく。なお既存の研究では各層の厚さもしくは物性値のどちらかを固定した上で、もう片方を推定するということが行われてきた。それに対して本研究では各層の厚さと物性値を同時に解くことにも挑戦している。

本手法における一次元成層地下構造モデルは各層の厚さと5つの物性値(P波速度Vp・S波速度Vs・密度・P波減衰係数Qp・S波減衰係数Qs)で構成される。これらの物性値の間には緩やかな対応関係があることが分かっているため、経験式を用いることで推定すべき物性値の数を減らす。本研究ではVsを推定パラメータとし、Vpおよび密度はBrocher (2005)の経験式によりVsから求める。またQpおよびQsはKawabe & Kamae (2008)およびKoketsu et al. (2009)を参考にしてVsから求める。層の数に関してはあらかじめ設定する。一次元成層地下構造モデルから理論波形を求める際には、離散化波数積分法(Bouchon 1981)と反射・透過係数行列法(Kennett & Kerry 1979)を用いた。ベイズ最適化のツールとしてPreferred Networksによるオープンソースのハイパーパラメータ自動最適化フレームワークOptuna(Akiba et al. 2019)を用いる。Optunaはdefine-by-runスタイルのユーザAPIを有するpythonライブラリであり、各種のベイズ最適化アルゴリズムを備えているほか,様々な可視化や枝刈り、並列化の機能も有する。ベイズ最適化のアルゴリズムにはTree-structured Parzen Estimator(Bergstra et al. 2011, 2013)を用いた。

予備的な理論テストからは、各層のVsを一定範囲内でフリーに探索するよりも、深いほどVsが大きくなるという制約を入れる形で解の探索範囲を絞った方が、同じ試行回数でより真値に近い解にたどり着くことが分かった。今後さらなる理論テストや実記録を用いた解析を通じて手法のアップデートを図るとともに、同手法の妥当性やその有用性を検証する。

謝辞:本研究はJSPS科研費21K14019の助成を受けたものです。