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[S16P-12] Long-term monitoring of subsurface changes by a giant magnetostrictive seismic source
東濃地震科学研究所(2022年3月31日閉所)で、2015年度にGPSに同期した任意波形を発生できるシングルフォース型の超磁歪震源を開発した。最大発生力が91kgf(890N)、上限周波数が1.25kHzで、一人でもハンドリングできる小型の震源装置である。直線距離約700mのボアホール観測点でも、1時間程度のスタッキングを行うことで、明瞭なP波の到来を確認できる。この震源装置を、瑞浪地殻変動観測壕内の地震計検定用のコンクリート基台に設置し実験を行ってきた。2016年4月8日から地下の常時モニタリング(弾性波の走時や波形変化の観測)を開始し、研究所の閉所に伴い実験場所を撤収した2021年11月2日までの期間、約5年半にわたって送信実験を継続した。その間、停電やGPS時計の受信不良の対策期間などを除けば、加振部には一度も触れることなく、メンテナンスフリーで稼働を行うことができた。本報告では、これまでの期間で得られた地下の変化について述べる。 ボアホール地震計(土岐花崗岩内に設置)を用いた観測では、熊本地震(2016/04/16 M=7.3)によるP波およびSV波の走時変化が検出され、地震後の走時変化の推移が、土岐花崗岩中の間隙水圧の変化と良く一致していることが判明した(P波については2016年地震学会で報告済み)。送信は地震計のサンプリング周波数(400Hz)を考慮して100-200Hzの帯域で行い、観測データを1日間スタッキングし、クロススペクトル法による走時変化の検出を行った。TRS(深度505m、水平距離490m)では、P波走時に熊本地震に伴う60μsの遅延が観測された。また、TGR350(深度350m、水平距離50m)では、P波の走時変化は25μs以下であったが、後続のSV波の走時には155μsの遅延が観測された。走時遅延の原因は、地震による間隙水圧の上昇に伴うクラックの開口に起因する速度低下であると推定され、また、観測点の方向や波により遅延量が異なるのは、本地域の土岐花崗岩のクラックの卓越方向と弾性波の波線および振動方向により説明できる。地震後の走時変化は、P波SV波ともに、土岐花崗岩中に設置された間隙水圧計(瑞浪超深地層研究所の立坑内、深度200m)による間隙水圧の変化と相関しており、間隙水圧が上昇すると走時は遅れ、下降すると早まった。同様の変化は、瑞浪超深地層研究所の立坑埋め戻しに伴って土岐花崗岩内の間隙水圧が変化する場合も検出されると期待されたが、埋め戻し開始直後に周囲のボアホール観測点が撤収されたため観測を行うことはできなかった。なお、2017年8月から送信を停止する2021年11月2日まで、瑞浪観測壕内に設置した小規模な地震計アレイによる瑞浪層群内の地下構造変化のモニタリングを行っており、1時間毎の差分波形を並べるだけでイベントに伴う波形変化が観測された。一つは、壕壁付近の岩盤破壊現象に伴う波形変化であり、後続波の変化から散乱構造の変化を捉えていると見られる。もう一つは、降雨後の波形変化である。降雨後に特定のフェーズが変化し、時間をかけて徐々に変化が解消されていく。また、より深い場所からの反射波もしくは屈折波であると考えられるフェーズでは、降雨から遅れて波形変化が見られる。こうした変化は、降雨後の地下水流動に対応しているのではないかと考えられる。 (謝辞)実験期間中にアドバイスを頂いた元東濃地震科学研究所の石井紘博士と浅井康広博士に感謝致します。