3:30 PM - 3:45 PM
[S17-11] Probabilistic Tsunami Hazard Assessment based on the long-term evaluation for earthquakes along Kuril and Japan trenches
はじめに 千島海溝沿い根室沖地震(M7.8-8.5程度)および超巨大地震(17世紀型、M8.8程度以上)の30年発生確率はそれぞれ、7〜40%及び70%程度、また日本海溝沿い青森県東方沖及び岩手県北部の地震(M7.9程度)のそれは5〜30%と切迫している(地震調査委員会,2017,2019)。今回、我々は、千島および日本海溝沿いで地震調査委員会によって長期評価された概ねM7.8程度以上の地震を対象に、統合確率論的津波ハザード評価(現時点でのハザード評価)を実施した。
波源断層モデル群の構築 まず長期評価で設定された千島及び日本海溝沿いの地震発生領域に、沈み込む太平洋プレートの三次元形状モデルを用いて、プレート間巨大地震、アウターライズ地震、スラブ内地震および津波地震の特性化波源断層モデル群を設定した。プレート間巨大地震および津波地震の波源断層モデルは約5kmx5km要素断層の集合として表現した。構築した特性化波源断層モデルはMw7.6からMw9.2までの合計3700個余りである。
津波伝播遡上計算 Okada(1992)とTanioka&Satake (1996)の方法を用いて初期水位を計算、最小50m間隔の陸上・海底地形データのネスティング・グリッドを用いて、移流項、海底摩擦項、全水深項を含む非線形長波方程式に、陸側に遡上境界条件、海側に透過条件を課し、差分法を適用して津波予測計算を実施、海岸でのすべてのハザード評価地点60万点余りに対して最大水位上昇量を計算した。
地震発生確率モデル 長期評価(地震調査委員会,2017,2019)がそれぞれの地震に対して適用した地震発生確率モデルを基本的に採用した。30年発生確率に幅があると評価されている場合は中央値を用いた。千島海溝沿いの地震の長期評価で発生確率の言及がないアウターライズ地震の地震発生確率モデルは、当該地域の標準的なGR則を仮定し、定常ポアソン過程に従うと考えた。
確率論的統合 千島および日本海溝沿いで発生するそれぞれの地震の津波計算結果を確率論的に統合するために、以下のように考えた。1.基本的に地震は互いに独立に発生する。2.長期評価によって発生確率が評価された地震の破壊領域(震源域あるいは巨視的波源断層モデル)の位置および形状は多様であるため、破壊領域同士は互いに排反である。3.地震破壊時のすべり量分布は多様であるため、同じ破壊領域(震源域)において、異なるすべり量分布を持つ地震モデル同士は互いに排反である。
確率論的津波ハザード評価結果 現時点でのハザード評価結果の一例として、今後30年間で海岸の最大水位上昇量が3mを超える30年超過確率分布図を示す。概して北海道襟も岬以東の太平洋沿岸一帯で30年超過確率が20%以上、根室半島付近では40%以上と高く推定されていることがわかる。一方、東北地方太平洋岸では八戸付近の30年超過確率がやや高くなっている。今回の評価結果は、長期評価で評価された地震のみが発生した場合に限定される、条件付きのハザード評価結果である。今後、長期評価で評価されていない地震および長期評価で評価された地震規模以上の地震を加味し、実用上有益な現時点でのハザード評価を実施する予定である。本研究は防災科研の研究プロジェクト「ハザード・リスク評価に関する研究」の一環として実施している。
波源断層モデル群の構築 まず長期評価で設定された千島及び日本海溝沿いの地震発生領域に、沈み込む太平洋プレートの三次元形状モデルを用いて、プレート間巨大地震、アウターライズ地震、スラブ内地震および津波地震の特性化波源断層モデル群を設定した。プレート間巨大地震および津波地震の波源断層モデルは約5kmx5km要素断層の集合として表現した。構築した特性化波源断層モデルはMw7.6からMw9.2までの合計3700個余りである。
津波伝播遡上計算 Okada(1992)とTanioka&Satake (1996)の方法を用いて初期水位を計算、最小50m間隔の陸上・海底地形データのネスティング・グリッドを用いて、移流項、海底摩擦項、全水深項を含む非線形長波方程式に、陸側に遡上境界条件、海側に透過条件を課し、差分法を適用して津波予測計算を実施、海岸でのすべてのハザード評価地点60万点余りに対して最大水位上昇量を計算した。
地震発生確率モデル 長期評価(地震調査委員会,2017,2019)がそれぞれの地震に対して適用した地震発生確率モデルを基本的に採用した。30年発生確率に幅があると評価されている場合は中央値を用いた。千島海溝沿いの地震の長期評価で発生確率の言及がないアウターライズ地震の地震発生確率モデルは、当該地域の標準的なGR則を仮定し、定常ポアソン過程に従うと考えた。
確率論的統合 千島および日本海溝沿いで発生するそれぞれの地震の津波計算結果を確率論的に統合するために、以下のように考えた。1.基本的に地震は互いに独立に発生する。2.長期評価によって発生確率が評価された地震の破壊領域(震源域あるいは巨視的波源断層モデル)の位置および形状は多様であるため、破壊領域同士は互いに排反である。3.地震破壊時のすべり量分布は多様であるため、同じ破壊領域(震源域)において、異なるすべり量分布を持つ地震モデル同士は互いに排反である。
確率論的津波ハザード評価結果 現時点でのハザード評価結果の一例として、今後30年間で海岸の最大水位上昇量が3mを超える30年超過確率分布図を示す。概して北海道襟も岬以東の太平洋沿岸一帯で30年超過確率が20%以上、根室半島付近では40%以上と高く推定されていることがわかる。一方、東北地方太平洋岸では八戸付近の30年超過確率がやや高くなっている。今回の評価結果は、長期評価で評価された地震のみが発生した場合に限定される、条件付きのハザード評価結果である。今後、長期評価で評価されていない地震および長期評価で評価された地震規模以上の地震を加味し、実用上有益な現時点でのハザード評価を実施する予定である。本研究は防災科研の研究プロジェクト「ハザード・リスク評価に関する研究」の一環として実施している。