The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S17. Tsunami

[S17] PM-2

Tue. Oct 25, 2022 3:00 PM - 4:15 PM ROOM D (5th floor (Training Room 520))

chairperson:Yutaka Hayashi(Meteorological Research Institute, Japan Meteorological Agency), Toshitaka Baba(Tokushima University)

3:45 PM - 4:00 PM

[S17-12] Deep-sea bore: Trench-slope ascent of discontinuities in current speed, water temperature and pressure

*Yoshio FUKAO1, Hiroko Sugioka2, Hajime Shiobara3, Aki Ito1, Taewoon Kim1, Ryo Furue1 (1. JAMSTEC , 2. Kobe Univ., 3. Univ. Tokyo)

1.序
我々は2013年から2014年までの10か月、Paro社開発の水晶式傾斜計の試験観測を兼ねて、宮城沖の深海底(深さ約3400m)で傾斜観測を実施した(図1の地図参照)。その間、多くの傾斜イベントを検出したが、これらは海底傾斜現象ではなく純粋に海洋現象であった。即ち、(恐らくは内部潮汐波に伴って)海底斜面に発生する内部孤立波(ボア)が測器を通過する際に測器が傾く現象であった(Fukao et al., JGR-O, 2016)。ボアは大陸棚斜面で起こる現象として海洋学分野では良く知られているが、海溝斜面のような深い場所での観測例はこれまでなかった。そこで深海ボアの実態をより明らかにするために、表記発表者中の3人(H.S., H.S., A.I.)は2015年9月から2016年9月までの1年間、前回と同じ場所で従来観測項目に加えて、水温、水圧、2成分流速などの海洋物理観測を行った。こうした海洋物理観測を加えた結果、深海ボアの実態は前回と比べてはるかに明瞭となった。
2.観測と記録解析
2015年9月から翌年9月までの1年間、宮城沖の日本海溝急斜面から深海平坦面への変換点(水深約3400m)において1点観測を実施した。海洋物理学的な観測項目は、絶対海底水圧計PARO-8B7000-I-005(詳細はFukao et al., Sci. Adv., 2018)による水圧、Infinity-Deep(詳細はFukao et al., JGR-O, 2016)による水温と流速2成分(東西・南北)である。サンプリング速度は0.25Hzとした。得られた記録からボアを検出するため、全観測項目1年間分を縦横自在にスケールを変えて表示できるようにし、また1年間分の動画を用意した。その結果、ボアは小さいのも含めれば殆ど毎日のように起きていることが判明した。またJCOPE-Tを圧力のレファレンスに取ることにより、ボアによる微弱な圧力変化を検出することが可能となった。
3.結果と議論
図1は観測期間中に起きた最大ボアの12時間記録である。以下、その特徴を図2と対応させて列挙する。図2は1年分の記録から得られる平均的なボアの描像である。
水温変化(図1青線):Temperature change (Blue line)
ボアの到来前、水温は徐々に上昇し(図2-1)ボア到来直前は高止まりの状態になる(図2-2, 3)。ボア到来による水温低下は突然且つ急激に起こる(図2-4)。ボア内部の低温状態は長時間続く(図2-5)。
西→東流速(図1黒線):Down-sloping current
ボアの到来前、流れは斜面を下る方向にある(図2-1)が徐々に流速を減じ、ボア到来直前にはほぼ静止流体状態となる(図2-2)。ボアの到来は突然の流速方向の反転(斜面上り流速の発生)によって予測することができる。この時点ではボアフロントを表す急激な温度変化は見られない(図2-3)。斜面上り流速がピークに達する頃、水温の極めて急速な低下が起こる(図2-4)。その後、水温が長く低温のままでいるのに対し、斜面上り流速は急速に減速していく(図2-5)。
水圧(図1赤線):Ocean bottom pressure
ボア到来に伴い水圧低下が起こる。水圧低下は水温低下と同時に起こることが殆どで(図2-4)、それに先立つことは殆どない。
ボアの終わり方は多様で、始まりのような共通性を見出すことは一般に難しい。
4.結語
近年、津波観測や海底地殻変動観測に海底水圧計が多用されるようになり、今後は海底傾斜計観測も進むと考えられるが、ボアは測器の周りの水温、水圧、流速を突然変化させるため、得られたか海底観測記録の解釈には注意が必要である。