11:45 〜 12:00
[S01-05] 時空間境界積分方程式法の高速化手法FDP=Lattice H行列法の近似精度評価
1. はじめに
動的破壊シミュレーションの時空間領域に関する境界積分方程式を解くためには、空間方向に積分、時間方向に畳み込みを行うため、積分核行列と滑り速度ベクトル積を多数回実行する必要があり、ナイーブな実装では境界要素数N,時間ステップ数Mとして、計算量O(N^2M^2)を要する。Sato & Ando(2021)で提案されたFDP=H行列法は、空間依存性の強い行列に関する近似圧縮手法であるH行列法(Hackbusch,1999)を走時近似を介して時空間境界積分方程式法に組み込むことで計算量をO(NlogNM)に抑える近似計算手法であり、2次元波動伝播問題に対して精度が確認されている。本研究では、大規模並列計算に対応するために、格子H行列(Ida,2018)を導入したFDP=Lattice H行列法を提案し、実装を行った。また、3次元問題に対して適用し、その精度評価を行う。
2. 手法
FDP法(高速領域分割法, Ando(2016))をベースに時空間領域をP波,S波の到着前後で積分核の性質が異なる3つの領域に分けて考える。Domain FはP波,S波のwavefrontに対応し、時間方向の幅がO(1)という性質を持つ。積分核の時間変化が激しいことから時間方向に積分することで、振幅項と時間依存項に分離を行い、振幅項に対して格子H行列法を適用する。Domain IはP波とS波の間の領域であり、積分核が空間依存項と時間の冪乗項に分離が可能であるという性質を用いて時間方向の畳み込みをO(1)で更新していくことで高速化を行う。Domain SはS波が過ぎ去った後の静的な領域であり、積分核が時間変化しないため、時間方向の畳み込みを高速に行うことができる。全領域ともに、畳み込み計算を全観測点,震源ペアに対して行うのではなく、格子H行列内の小行列の観測点クラスタの代表点を用いて計算することで空間方向の計算量も抑えることができる。今回は、3次元モデルを用いて、FDP=LH行列法の各近似の誤差への依存性評価を行った。
3. 予備的結果
低ランク近似自体の精度は、全体のシミュレーション精度に対してボトルネックにはならず、低ランク近似による代表点を用いた畳み込み近似が全体のシミュレーション精度に効くことが判明した。また、走時近似自体の精度は非常に高く、低ランク近似のしにくさを定めるパラメータηが小さいほど走時誤差が0に集中する傾向がみられた。 今後は実際の地震に適用し、シミュレーション誤差を評価するとともに、パラメータスタディへの適用可能性についての検討を目指している。
動的破壊シミュレーションの時空間領域に関する境界積分方程式を解くためには、空間方向に積分、時間方向に畳み込みを行うため、積分核行列と滑り速度ベクトル積を多数回実行する必要があり、ナイーブな実装では境界要素数N,時間ステップ数Mとして、計算量O(N^2M^2)を要する。Sato & Ando(2021)で提案されたFDP=H行列法は、空間依存性の強い行列に関する近似圧縮手法であるH行列法(Hackbusch,1999)を走時近似を介して時空間境界積分方程式法に組み込むことで計算量をO(NlogNM)に抑える近似計算手法であり、2次元波動伝播問題に対して精度が確認されている。本研究では、大規模並列計算に対応するために、格子H行列(Ida,2018)を導入したFDP=Lattice H行列法を提案し、実装を行った。また、3次元問題に対して適用し、その精度評価を行う。
2. 手法
FDP法(高速領域分割法, Ando(2016))をベースに時空間領域をP波,S波の到着前後で積分核の性質が異なる3つの領域に分けて考える。Domain FはP波,S波のwavefrontに対応し、時間方向の幅がO(1)という性質を持つ。積分核の時間変化が激しいことから時間方向に積分することで、振幅項と時間依存項に分離を行い、振幅項に対して格子H行列法を適用する。Domain IはP波とS波の間の領域であり、積分核が空間依存項と時間の冪乗項に分離が可能であるという性質を用いて時間方向の畳み込みをO(1)で更新していくことで高速化を行う。Domain SはS波が過ぎ去った後の静的な領域であり、積分核が時間変化しないため、時間方向の畳み込みを高速に行うことができる。全領域ともに、畳み込み計算を全観測点,震源ペアに対して行うのではなく、格子H行列内の小行列の観測点クラスタの代表点を用いて計算することで空間方向の計算量も抑えることができる。今回は、3次元モデルを用いて、FDP=LH行列法の各近似の誤差への依存性評価を行った。
3. 予備的結果
低ランク近似自体の精度は、全体のシミュレーション精度に対してボトルネックにはならず、低ランク近似による代表点を用いた畳み込み近似が全体のシミュレーション精度に効くことが判明した。また、走時近似自体の精度は非常に高く、低ランク近似のしにくさを定めるパラメータηが小さいほど走時誤差が0に集中する傾向がみられた。 今後は実際の地震に適用し、シミュレーション誤差を評価するとともに、パラメータスタディへの適用可能性についての検討を目指している。