[S01P-02] テクトニック微動のカタログ作成に向けた特徴量の決定
テクトニック微動は西南日本で初めて発見されて以降, 沈み込み帯をはじめとする世界各地で検出されており(e.g. Obara, 2002; Nadeau and Dolenc, 2005; Payero et al., 2008), 巨大地震震源域の物性や応力状態を詳細に理解するための重要な手掛かりとして注目されている.
微動は, 規模が同程度な通常の地震に比べて継続時間が長い傾向にある. また, 通常の地震よりも局所化した時空間分布を持つ(Idehara et al., 2014). そのため, 従来の微動検出手法では, エンベロープ波形の相互相関に基づいて微動の候補となるイベントを検出したのち, 継続時間の基準値を設定したり, 孤立したイベントを棄却することで微動を選別するという手法がとられてきた(e.g. Wech & Creager, 2008).
しかし, 微動は継続時間の短い低周波地震によって構成されるため, 全ての微動の継続時間が長いとは限らない(Shelly et al., 2007). また, 微動の継続時間の長さは, 必ずしも微動の発生プロセスによるものとは限らず, 震源周辺の異常構造に起因する可能性も指摘されている(Toh et al., 2023).
そこで本研究では, 主観的な選別基準を設定することなく, イベントの特徴量に基づいて定量的に微動を検出するためのスキームを構築した. 具体的な特徴量としては, 継続時間, マグニチュード, 深さ, 速度スペクトルの特徴量, 最近接イベント情報などを検討した.
まず, エンベロープ波形の相互相関と最尤法に基づくアルゴリズム(Mizuno & Ide, 2019)を用いて, 微動の候補となるイベントの位置, 震源時間, マグニチュードを決定した. また, エンベロープ継続時間を, エンベロープ波形の振幅がある基準値を超える時間幅として決定した.
次に, イベントの震源決定に使用した各Hi-netチャンネルの速度波形データから, エンベロープ継続時間の2倍にあたる期間を抽出し, 2-8 Hzのバンドパスフィルタをかけ, 2乗したうえで時間積分を行った. その積分値の50 %を占めるような最小の時間幅をチャンネルごとに決定し, それらの中で最小なものを, そのイベントのエネルギー継続時間とした.
また, 同じ速度波形から速度スペクトルを求め, 3.0-6.0 Hzと10-20 Hzという二つの帯域におけるスペクトル強度の違いから, イベントごとに特徴量を抽出した. これは, 微動の卓越周波数が1.0-10 Hzと, 同規模な通常の地震に比べて低い一方で, 10-数10 Hzの帯域は通常の地震の方が卓越することを利用している(Shelly et al., 2007).
さらに, 最近接イベント情報については, イベントの時空間距離に基づいて通常の地震をクラスタリングしたZaliapin & Ben-Zion(2013)の手法を微動にまで拡張することで得た.
最後に, これらの特徴量に密度ベースのクラスタリング手法を適用することで, 検出されたイベントから微動を抽出した.
本手法を西南日本に適用したところ, Mizuno & Ide(2019)が作成した微動カタログの倍以上の微動を検出した. また, その中には従来のカタログでは棄却されていた, 継続時間の短い低周波地震とみられるイベントも数多く含まれていた. さらに, 今回の手法で決定したエネルギー継続時間はこれまで参照されてきたエンベロープ継続時間に比べて系統的に短く, マグニチュードと比較することで, 微動と通常の地震とのスケーリング則の違いについて, これまでは議論できなかった0.5秒程度の領域まで議論することが可能になった. 今後は, このスキームを用いて構築した微動カタログに基づき, スロー地震のより詳細な理解やモデル化を目指す.
微動は, 規模が同程度な通常の地震に比べて継続時間が長い傾向にある. また, 通常の地震よりも局所化した時空間分布を持つ(Idehara et al., 2014). そのため, 従来の微動検出手法では, エンベロープ波形の相互相関に基づいて微動の候補となるイベントを検出したのち, 継続時間の基準値を設定したり, 孤立したイベントを棄却することで微動を選別するという手法がとられてきた(e.g. Wech & Creager, 2008).
しかし, 微動は継続時間の短い低周波地震によって構成されるため, 全ての微動の継続時間が長いとは限らない(Shelly et al., 2007). また, 微動の継続時間の長さは, 必ずしも微動の発生プロセスによるものとは限らず, 震源周辺の異常構造に起因する可能性も指摘されている(Toh et al., 2023).
そこで本研究では, 主観的な選別基準を設定することなく, イベントの特徴量に基づいて定量的に微動を検出するためのスキームを構築した. 具体的な特徴量としては, 継続時間, マグニチュード, 深さ, 速度スペクトルの特徴量, 最近接イベント情報などを検討した.
まず, エンベロープ波形の相互相関と最尤法に基づくアルゴリズム(Mizuno & Ide, 2019)を用いて, 微動の候補となるイベントの位置, 震源時間, マグニチュードを決定した. また, エンベロープ継続時間を, エンベロープ波形の振幅がある基準値を超える時間幅として決定した.
次に, イベントの震源決定に使用した各Hi-netチャンネルの速度波形データから, エンベロープ継続時間の2倍にあたる期間を抽出し, 2-8 Hzのバンドパスフィルタをかけ, 2乗したうえで時間積分を行った. その積分値の50 %を占めるような最小の時間幅をチャンネルごとに決定し, それらの中で最小なものを, そのイベントのエネルギー継続時間とした.
また, 同じ速度波形から速度スペクトルを求め, 3.0-6.0 Hzと10-20 Hzという二つの帯域におけるスペクトル強度の違いから, イベントごとに特徴量を抽出した. これは, 微動の卓越周波数が1.0-10 Hzと, 同規模な通常の地震に比べて低い一方で, 10-数10 Hzの帯域は通常の地震の方が卓越することを利用している(Shelly et al., 2007).
さらに, 最近接イベント情報については, イベントの時空間距離に基づいて通常の地震をクラスタリングしたZaliapin & Ben-Zion(2013)の手法を微動にまで拡張することで得た.
最後に, これらの特徴量に密度ベースのクラスタリング手法を適用することで, 検出されたイベントから微動を抽出した.
本手法を西南日本に適用したところ, Mizuno & Ide(2019)が作成した微動カタログの倍以上の微動を検出した. また, その中には従来のカタログでは棄却されていた, 継続時間の短い低周波地震とみられるイベントも数多く含まれていた. さらに, 今回の手法で決定したエネルギー継続時間はこれまで参照されてきたエンベロープ継続時間に比べて系統的に短く, マグニチュードと比較することで, 微動と通常の地震とのスケーリング則の違いについて, これまでは議論できなかった0.5秒程度の領域まで議論することが可能になった. 今後は, このスキームを用いて構築した微動カタログに基づき, スロー地震のより詳細な理解やモデル化を目指す.