2:00 PM - 2:15 PM
[S02-13] Initial test of borehole fiber optic strainmeter at Kamioka Mine
地殻変動観測のための新たな海底深部長期孔内観測システムが2023年秋に、地球深部探査船「ちきゅう」によって紀伊水道沖の南海トラフに設置される予定である。この長期孔内観測システムは、孔内計測用に新たに開発した光ファイバー歪計と従来の海底深部長期孔内計測システムでも採用され、実績のある間隙水圧計(例えば、Araki et al., 2017)により構成されている。本研究では、光ファイバー歪計について、その特性を把握するために神岡鉱山で行っている陸上試験の結果を報告する。
孔内計測用の光ファイバー歪計は、周辺地殻と接するセンシングファイバーと耐圧容器内に格納される基準ファイバーから構成され、両ファイバーの長さの差をマイケルソン干渉を用いて精密に計測することにより歪を測る。センシングファイバーは円筒形のフレーム上の約2mの区間に巻き付けられており、掘削孔の孔壁とはセメントで固着させる。そのため、センシングファイバーは鉛直方向に中心軸を持つらせん形状に敷設される。この光ファイバー歪計は機械的な駆動部がないため、長期的な運用に関して信頼性が高いことが期待される。さらに、センサーがらせん形状であるため、直線状の同様の歪計と比較して様々な方向の歪みを計測することができると期待される。一方、従来の地震・地殻変動計測機器とは特性が異なるため、観測される物理量を理解する必要がある。
特性を把握するため、岐阜県の神岡鉱山にあるテストサイトで、長期孔内観測システムで利用する測器と同等の模擬観測システムを用いた試験観測を行っている。模擬観測システムは、2023年3月9日にテストサイト内の深さ約20mの掘削孔内に設置された。テストサイトでは、広帯域地震計(CMG3TC, 固有周期360s)や、南北方向に直線状に展張された光ファイバー歪計も同時に観測している。
試験観測では、模擬観測システムによって脈動や遠地地震、近地地震を観測し、広帯域地震計や直線状の歪計による観測と比較することができた。ノイズのパワースペクトルを計算したところ、脈動のピークが確認でき、その周波数帯域は、直線状の光ファイバー歪計と一致していた。一方、振幅は直線状の光ファイバー歪計より大きかった。これは、直線状の歪計が展張方向の歪成分を計測するのに対し、模擬観測システムのらせん状の光ファイバー歪計は様々な方位の歪が合成されたものを計測しているためと考えられる。遠地地震について、観測期間内に起きた最大の地震(2023年5月19日にLoyalty Islandsの南東で発生した地震, MW=7.7)の直達S波を、200秒から100秒の長周期に注目し、波形を比較した。その結果、模擬観測システムの歪波形の振幅は直線状の光ファイバー歪計の歪波形の振幅より約1.2倍大きく、その形状は広帯域地震計の東西・南北成分の速度波形の特徴が混ざって見られた。近地地震について、2023年3月12日から2023年6月23日までの期間について、気象庁の日々の震源リストから、テストサイト周辺100km四方に震源を持つ地震の震源時刻を取得し、観測波形でP波の立ち上がりを読み取ることができるか調べた。その結果、実証試験装置は333個、広帯域地震計は303個の地震についてP波初動を読み取ることができ、広帯域地震計では確認できない微小な地動もとらえることができることが分かった。一方、広帯域地震計では読み取れたが模擬観測システムでは読み取ることができなかった地震も存在していた。
今後はこれらの観測記録をより定量的に比較し、模擬観測システムのらせん形状の光ファイバーの観測する物理量の推定を試みる予定である。
孔内計測用の光ファイバー歪計は、周辺地殻と接するセンシングファイバーと耐圧容器内に格納される基準ファイバーから構成され、両ファイバーの長さの差をマイケルソン干渉を用いて精密に計測することにより歪を測る。センシングファイバーは円筒形のフレーム上の約2mの区間に巻き付けられており、掘削孔の孔壁とはセメントで固着させる。そのため、センシングファイバーは鉛直方向に中心軸を持つらせん形状に敷設される。この光ファイバー歪計は機械的な駆動部がないため、長期的な運用に関して信頼性が高いことが期待される。さらに、センサーがらせん形状であるため、直線状の同様の歪計と比較して様々な方向の歪みを計測することができると期待される。一方、従来の地震・地殻変動計測機器とは特性が異なるため、観測される物理量を理解する必要がある。
特性を把握するため、岐阜県の神岡鉱山にあるテストサイトで、長期孔内観測システムで利用する測器と同等の模擬観測システムを用いた試験観測を行っている。模擬観測システムは、2023年3月9日にテストサイト内の深さ約20mの掘削孔内に設置された。テストサイトでは、広帯域地震計(CMG3TC, 固有周期360s)や、南北方向に直線状に展張された光ファイバー歪計も同時に観測している。
試験観測では、模擬観測システムによって脈動や遠地地震、近地地震を観測し、広帯域地震計や直線状の歪計による観測と比較することができた。ノイズのパワースペクトルを計算したところ、脈動のピークが確認でき、その周波数帯域は、直線状の光ファイバー歪計と一致していた。一方、振幅は直線状の光ファイバー歪計より大きかった。これは、直線状の歪計が展張方向の歪成分を計測するのに対し、模擬観測システムのらせん状の光ファイバー歪計は様々な方位の歪が合成されたものを計測しているためと考えられる。遠地地震について、観測期間内に起きた最大の地震(2023年5月19日にLoyalty Islandsの南東で発生した地震, MW=7.7)の直達S波を、200秒から100秒の長周期に注目し、波形を比較した。その結果、模擬観測システムの歪波形の振幅は直線状の光ファイバー歪計の歪波形の振幅より約1.2倍大きく、その形状は広帯域地震計の東西・南北成分の速度波形の特徴が混ざって見られた。近地地震について、2023年3月12日から2023年6月23日までの期間について、気象庁の日々の震源リストから、テストサイト周辺100km四方に震源を持つ地震の震源時刻を取得し、観測波形でP波の立ち上がりを読み取ることができるか調べた。その結果、実証試験装置は333個、広帯域地震計は303個の地震についてP波初動を読み取ることができ、広帯域地震計では確認できない微小な地動もとらえることができることが分かった。一方、広帯域地震計では読み取れたが模擬観測システムでは読み取ることができなかった地震も存在していた。
今後はこれらの観測記録をより定量的に比較し、模擬観測システムのらせん形状の光ファイバーの観測する物理量の推定を試みる予定である。