日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S03. 地殻変動・GNSS・重力

[S03P] PM-P

2023年10月31日(火) 17:00 〜 18:30 P5会場 (F201・3側フォワイエ) (アネックスホール)

[S03P-07] 2004年紀伊半島沖地震による余効変動解析:3次元粘弾性構造の影響

*橋間 昭徳1、堀 高峰2、飯沼 卓史2、藤田 航平3、村上 颯太3、市村 強3 (1. 東京学芸大学、2. 海洋研究開発機構、3. 東京大学地震研究所)

2004年M7.1・M7.4紀伊半島沖地震は同日に起こったフィリピン海プレート内部の2つのスラブ内地震である。この地震による地殻変動は西南日本の広範囲のGNSS観測点で捉えられた。震源位置と地殻変動の規模から、この地震の余効変動は西南日本弧-南海トラフ下の粘性構造を代表していると考えられる。水藤(2017)は3次元粘弾性構造モデルを用いてこの地震の余効変動を解析し、特にリソスフェア-アセノスフェア境界にそった薄層(LAB層)について粘性率5e18 Pa sの値を得た。しかし、この研究の解析で用いた観測点(10点)、観測期間(2007年1月-2011年1月)は限定されたものであり、地震発生から20年弱経過した現在においては再検討の余地がある。一方、粘弾性有限要素モデルによる地殻変動の計算能力も向上し、もっともらしい粘性構造を用いて精度が保証された大規模計算が可能となっている(Ichimura et al., 2016; Fujita et al., 2017)。本研究では、Hori et al. (2021)、Murakami et al. (submitted)に基づいた有限要素モデルにより、2004年M7.1・M7.4紀伊半島沖地震の余効変動解析を行う。本研究で用いるモデルは地球楕円体を考慮し、詳細な地表地形と全国一次地下構造モデル(JIVSM)の弾性構造およびプレート境界形状を取り入れ、西南日本を中心とした2496 km × 2496 km × 1100 kmの大規模モデルである。両紀伊半島沖地震はプレート内部の地震であるため、震源は水藤(2017)の2面のモデル断層にダブルカップルの点震源を配することにより表現した。粘性構造については、陸側のウェッジマントル(WM)、スラブ下のLAB層、LAB層より深部の海洋マントル(OM)の3領域を考慮し、3領域で粘性が同じモデル(一様モデル)、LAB層はOMと同じ粘性率とし、WMとの粘性率の比を変えたモデル(海陸モデル)、海陸モデルに加えてLAB層に非常に低い粘性率(5e17 Pa s)を設定したモデル(海陸LABモデル)を設定した。それぞれの粘性構造モデルにおける各断層面の応答について計算結果を得た。Murakami et al. (submitted)で指摘されたとおり、LABの低粘性率の効果は震源にほど近い地域に現れる。本発表においては、3つのモデルの振る舞いの特徴および、地殻変動データとの比較結果について述べる。