The 2023 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Sept. 17th)

Regular session » S06. Crustal structure

[S06P] PM-P

Wed. Nov 1, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P6 (F201 and 3 side foyer) (Hall Annex)

[S06P-01] A time-lapse analysis of multi-channel seismic reflection data using seismic attenuation profiling

*Tetsuro TSURU1, Tetsuo NO2, Kazuo YAMAGUCHI3, Jin'Oh PARK4 (1. TUMSAT, 2. JAMSTEC, 3. AIST, 4. AORI)

1. はじめに
 反射法地震探査データは、しばしば地殻構造の幾何学的形状を調べる手法として用いられている。層構造や、その空間変化を調べるのに有効な手法である。また、反射波の側方方向のズレ(オフセット)を検知することにより、断層の発達を特定できる。また、断層破砕帯の間隙圧の検知にも利用される。地震による断層活動に伴う水の移動などによって断層破砕帯内部の間隙圧が上昇した場合、反射法地震探査データ上では反射波の振幅が変化する。しばしば、位相が反転した強振幅の反射波が観察され、いわゆる振幅異常と呼ばれる現象が見られる。しかし、その断層が正断層や横ずれ断層で、傾斜が高角である(急傾斜である)場合、反射波を正確に捉えることが難しい。そのような場合は、たとえ間隙圧が上昇していたとしても、反射法地震探査データ上では何ら振幅異常が観察されないことになる。そのような背景のもと、我々は、反射法地震探査データの減衰特性に着目して岩石物性を推定する解析(seismic attenuation profiling:SAP)を試みている。今回は、日本海溝三陸沖の同一測線において異なる時期に収録された3つのデータセットを用いて、SAP解析を実施した結果について報告する。
2.解析および結果
解析に使用したデータは、1997年10月(測線名SR101)、2009年11月(測線名:A3obs)および2011年9月(D19)の3つであり、いずれも同じ測線上で観測された反射法地震探査データである。それらに対してSAP法(たとえば、Tsuru et al. 2018, EPS)を適用し、減衰特性の空間変化に加えて時間変化を追跡できないか試みた。この手法は、反射法地震探査データから相対的なQ値を求め、その空間変化変化に基づいて岩石の減衰特性を評価するものである。なお、Q値の推定にはスペクトル比法を使用している。解析対象エリアは、日本海溝アウターライズにおいて正断層が多く発達する場所である。解析目的は、その場所においてPark et al. (2021, scientific reports)によって発見された正断層を介した地殻-マントル間の大規模流体循環の時間変化を追跡することである。解析の結果、1997年と2009年のデータでは減衰特性に特に異常は見られなかったものの、2011年のデータには明らかな高減衰異常が見られた。
3.考察
今回の解析結果に現れた高減衰異常を、断層に沿った流体移動による間隙圧上昇に起因する現象であると仮定すれば、その流体移動を招いた地震として、地震の規模から考えると、まずは2011年3月の東北地方太平洋沖地震(Mw9.1)あるいはその余震が候補としてあげられるであろう。特に、この高減衰異常が見られた場所の約95km南南西では、本震の約40分後にMw7.6の正断層型地震が発生しており、地震断層はマントルまで達している(e.g., Obana et al. 2012, GRL)。現時点では未だ検討中であるが、今回検出された高減衰異常は、この地震のようにマントルまで達する大規模な断層活動によって発生した破砕帯およびそこに上昇してきた流体による間隙圧の上昇を捉えている可能性を示唆しているのではないかと考えられる。