[S06P-03] Seismic velocity structure off the east coast of Aomori Prefecture revealed by airgun ocean bottom seismometer survey.
1. はじめに
青森県東方沖は北米プレートに太平洋プレートが沈み込む海域であり、走向の異なる日本海溝と千島海溝の接合部の西方にあたる領域である。中期中新世以降、東北日本弧と千島弧が衝突し、このプロセスは日高衝突帯下での層間剝離構造など複雑な地殻構造の形成に関連している。また、青森県東方沖では過去には1896年の明治三陸地震、1933年の昭和三陸地震、1968年の十勝沖地震、1994年の三陸はるか沖地震が発生している。千島海溝では津波堆積物研究からM9レベルの大地震の発生可能性が指摘されている。このように複雑なテクトニクスが働いていると考えられるこの海域で地殻構造を明らかにすることは、地震の発生過程や特性を理解する上でも重要である。そこで青森県東方沖のテクトニクスや地震活動と不均質構造の関係を考察するために、海底地震計(OBS)とエアガンを用いて行われた構造探査のデータを解析した。
2. データ・解析
解析に用いたデータは、2005年10月10日から12日にかけて実施された、18台のOBSによる受震器、容量25Lのエアガン3台による発震源で構成する十勝沖地震、三陸はるか沖地震震源域での4測線、および、2007年5月28日〜6月4日に実施された42台のOBSによる受震器と、容量25Lのエアガン1〜3台による発震源で構成する海溝寄りの4測線の探査データである(図1)。
解析でははじめに得られた走時データから屈折波初動読み取りを行い、1次元モデルを作成し、続いて過去に周辺海域で行われた調査も参考にしながら2次元初期モデルを作成した。その後レイトレーシングプログラムRAYINVR(Zelt and Smith, 1992)によって2次元モデルから計算される屈折波と反射波の理論走時を計算した。観測走時と理論走時を比較し、走時残差が小さくなるようにモデルの修正を試行錯誤的に行うことによって最終モデルを決定した。
3. 結果・考察
解析の結果、測線下25kmまでのP波速度構造をイメージングすることができた。最上部には1.6-4.8㎞/sのP波速度を持つ堆積層が見られ、その層厚は最大9㎞である。堆積層の下にはP波速度がそれぞれ4.9-5.5㎞/s、5.5-6.3㎞/sを示す上部地殻、中部地殻が見られ、その層厚は2~8㎞の間で変化している。さらに中部地殻の下部にはP波速度6.3-7.0㎞/sの下部地殻が見られ、その層厚は2~10㎞の間で変化している。このように本研究領域の陸側地殻は、層内の水平方向の速度変化や層厚変化が大きいことが分かった。地殻内には層境界が不明瞭になるなど速度構造が特に不均質である領域がみられるが、これらは日高衝突帯と横ずれ断層が存在している領域の延長線上に位置する。また、下部地殻内にはP波速度が6.4km/sから7.0km/sに大きく変化する領域が見られるが、この領域は十勝沖地震の2つのアスペリティの間に当たり、この不均質構造はアスペリティの不連続と関連する可能性がある。このように青森県東方沖の複雑な地殻構造が地震活動に影響を及ぼしている可能性がある。
4. 謝辞
本研究を行うにあたり、観測の際に白鳳丸・新世丸、第五海工丸の船長以下乗組員の皆様には多大なご協力を頂きました。厚くお礼申し上げます。
青森県東方沖は北米プレートに太平洋プレートが沈み込む海域であり、走向の異なる日本海溝と千島海溝の接合部の西方にあたる領域である。中期中新世以降、東北日本弧と千島弧が衝突し、このプロセスは日高衝突帯下での層間剝離構造など複雑な地殻構造の形成に関連している。また、青森県東方沖では過去には1896年の明治三陸地震、1933年の昭和三陸地震、1968年の十勝沖地震、1994年の三陸はるか沖地震が発生している。千島海溝では津波堆積物研究からM9レベルの大地震の発生可能性が指摘されている。このように複雑なテクトニクスが働いていると考えられるこの海域で地殻構造を明らかにすることは、地震の発生過程や特性を理解する上でも重要である。そこで青森県東方沖のテクトニクスや地震活動と不均質構造の関係を考察するために、海底地震計(OBS)とエアガンを用いて行われた構造探査のデータを解析した。
2. データ・解析
解析に用いたデータは、2005年10月10日から12日にかけて実施された、18台のOBSによる受震器、容量25Lのエアガン3台による発震源で構成する十勝沖地震、三陸はるか沖地震震源域での4測線、および、2007年5月28日〜6月4日に実施された42台のOBSによる受震器と、容量25Lのエアガン1〜3台による発震源で構成する海溝寄りの4測線の探査データである(図1)。
解析でははじめに得られた走時データから屈折波初動読み取りを行い、1次元モデルを作成し、続いて過去に周辺海域で行われた調査も参考にしながら2次元初期モデルを作成した。その後レイトレーシングプログラムRAYINVR(Zelt and Smith, 1992)によって2次元モデルから計算される屈折波と反射波の理論走時を計算した。観測走時と理論走時を比較し、走時残差が小さくなるようにモデルの修正を試行錯誤的に行うことによって最終モデルを決定した。
3. 結果・考察
解析の結果、測線下25kmまでのP波速度構造をイメージングすることができた。最上部には1.6-4.8㎞/sのP波速度を持つ堆積層が見られ、その層厚は最大9㎞である。堆積層の下にはP波速度がそれぞれ4.9-5.5㎞/s、5.5-6.3㎞/sを示す上部地殻、中部地殻が見られ、その層厚は2~8㎞の間で変化している。さらに中部地殻の下部にはP波速度6.3-7.0㎞/sの下部地殻が見られ、その層厚は2~10㎞の間で変化している。このように本研究領域の陸側地殻は、層内の水平方向の速度変化や層厚変化が大きいことが分かった。地殻内には層境界が不明瞭になるなど速度構造が特に不均質である領域がみられるが、これらは日高衝突帯と横ずれ断層が存在している領域の延長線上に位置する。また、下部地殻内にはP波速度が6.4km/sから7.0km/sに大きく変化する領域が見られるが、この領域は十勝沖地震の2つのアスペリティの間に当たり、この不均質構造はアスペリティの不連続と関連する可能性がある。このように青森県東方沖の複雑な地殻構造が地震活動に影響を及ぼしている可能性がある。
4. 謝辞
本研究を行うにあたり、観測の際に白鳳丸・新世丸、第五海工丸の船長以下乗組員の皆様には多大なご協力を頂きました。厚くお礼申し上げます。