11:00 〜 11:15
[S08-21] 北日本の日本海東縁で発生した小地震の応力降下量解析
1. 研究背景・目的
地震計による地震観測が始まって以降、太平洋側だけでなく、日本海側でも複数の巨大地震が観測されている。一方で、オホーツクプレートとアムールプレート間の相対運動速度が遅いため地震数が少ないこと、両プレート境界の形状が不明瞭であること等を理由として、太平洋側と比べて日本海側の地震には不明点が多い。しかし、日本海側は太平洋側よりもプレート境界が沿岸に近いと考えられるため、防災対策のためにも、地震研究が重要である。本研究では北日本の日本海東縁域における摩擦特性の空間的特徴を把握することを目的として、2003年から2021年に同地域で発生した4.0≦M≦5.0の97地震について応力降下量を解析した。
2. 研究手法
Yamada et al. (2021)と同様の手法を用いて、以下の手順により解析を行った。まず、防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)で観測された時間領域の地震波形をフーリエ変換し、周波数領域に変換した。その後、解析対象地震に近接するM3.5の地震の観測波形を経験的グリーン関数(EGF)として用いることにより、解析対象地震のスペクトルをEGFのスペクトルで割り、解析対象地震の震源特性の比を抽出した。最後にBoatwright (1978)のオメガ2乗モデルを用いてコーナー周波数を推定し、円形断層モデル(Madariaga, 1976)を仮定して応力降下量を算出した。
3. 結果・考察
本研究で得られた応力降下量の空間分布を図1に示す。応力降下量には空間不均質性が見られ、1983年日本海中部地震(Mw7.7)の震源域における応力降下量の値が大きい一方、1993年北海道南西沖地震(Mw7.9)の震源域は小さな応力降下量の値を示していることがわかる。また、2つの地震の震源域に挟まれた領域(図1中のA領域)では応力降下量が大きく、高い剪断強度がさらなる破壊の進展を妨げたと考えられる。本研究の結果は1993年北海道南西沖地震の震源域における剪断強度が低いことを示唆しているが、過去の研究により推定されている両地震の断層面積とすべり量の関係から、本震時の応力降下量は1993年北海道南西沖地震のほうが大きかったと考えられ(地震予知連絡会 1994)、調和的に対応しない。現段階では解釈が難しいが、1993年の震源断層は東傾斜と西傾斜の両方を含む可能性が指摘されている(Murotani et al. 2022)ことから1993年北海道南西沖地震の破壊の複雑性が、震源域における小地震の応力降下量が小さい原因かもしれない。
地震計による地震観測が始まって以降、太平洋側だけでなく、日本海側でも複数の巨大地震が観測されている。一方で、オホーツクプレートとアムールプレート間の相対運動速度が遅いため地震数が少ないこと、両プレート境界の形状が不明瞭であること等を理由として、太平洋側と比べて日本海側の地震には不明点が多い。しかし、日本海側は太平洋側よりもプレート境界が沿岸に近いと考えられるため、防災対策のためにも、地震研究が重要である。本研究では北日本の日本海東縁域における摩擦特性の空間的特徴を把握することを目的として、2003年から2021年に同地域で発生した4.0≦M≦5.0の97地震について応力降下量を解析した。
2. 研究手法
Yamada et al. (2021)と同様の手法を用いて、以下の手順により解析を行った。まず、防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)で観測された時間領域の地震波形をフーリエ変換し、周波数領域に変換した。その後、解析対象地震に近接するM3.5の地震の観測波形を経験的グリーン関数(EGF)として用いることにより、解析対象地震のスペクトルをEGFのスペクトルで割り、解析対象地震の震源特性の比を抽出した。最後にBoatwright (1978)のオメガ2乗モデルを用いてコーナー周波数を推定し、円形断層モデル(Madariaga, 1976)を仮定して応力降下量を算出した。
3. 結果・考察
本研究で得られた応力降下量の空間分布を図1に示す。応力降下量には空間不均質性が見られ、1983年日本海中部地震(Mw7.7)の震源域における応力降下量の値が大きい一方、1993年北海道南西沖地震(Mw7.9)の震源域は小さな応力降下量の値を示していることがわかる。また、2つの地震の震源域に挟まれた領域(図1中のA領域)では応力降下量が大きく、高い剪断強度がさらなる破壊の進展を妨げたと考えられる。本研究の結果は1993年北海道南西沖地震の震源域における剪断強度が低いことを示唆しているが、過去の研究により推定されている両地震の断層面積とすべり量の関係から、本震時の応力降下量は1993年北海道南西沖地震のほうが大きかったと考えられ(地震予知連絡会 1994)、調和的に対応しない。現段階では解釈が難しいが、1993年の震源断層は東傾斜と西傾斜の両方を含む可能性が指摘されている(Murotani et al. 2022)ことから1993年北海道南西沖地震の破壊の複雑性が、震源域における小地震の応力降下量が小さい原因かもしれない。