The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08] AM-2

Wed. Nov 1, 2023 11:00 AM - 12:15 PM Room A (F205+206)

chairperson:Yuji YAGI(University of Tsukuba), Yasuhira AOYAGI(Central Research Institute of Electric Power Industry)

11:30 AM - 11:45 AM

[S08-23] Hierarchical Rupture Growth Revealed by High-Degree-of-Freedom Seismic Source Models

*Yuji YAGI1, Ryo Okuwaki1 (1. University of Tsukuba)

地震は断層上で破壊が伝播する現象であり、有限断層インバージョン等の方法により、その震源過程を推定することができる。1980年代に登場した有限断層インバージョンでは、基本的に、破壊フロントは揺らぎながらも震源から遠ざかるように伝播すると仮定し、また断層形状は平面もしくは曲面で定義でき、断層滑りベクトルは断層面の法線ベクトルと直交する方向に制限している。ちなみに断層滑りベクトルは、この制限に加えてリファレンスとするベクトル周辺に分布すると制限されることが多い。観測データの質と量が不十分な場合は、従来型の有限断層インバージョンは観測データを説明できるため、この枠組みに疑問を持つことは少なかったと思われる。しかし、観測データの質と量が向上することによって、従来の有限断層インバージョンで観測データが説明できないケースが多いことが明らかになりつつあり、地震像を正しく理解するためには高自由度な震源過程モデルが必要不可欠になってきている。
私たちのグループが提案しているポテンシー密度テンソルインバージョン(PDTI)は、観測データの質と量の向上に対応できるように、モデルの自由度を高める方向に開発されたものである。PDTIでは、断層面ではなくモデル平面を設定し、断層滑りを5成分の基底ダブルカップルで表現している。このことによって、“断層滑りベクトルは断層面の法線ベクトルと直交する方向に制限される”という、当たり前のように用いられていた強い拘束条件を用いることなく解析することができる。このような自由度の高いモデルを用いても安定に解析できるのは、グリーン関数の不確定性をデータの共分散成分に取り入れることによって、タチの良いデータに改善しているからに他ならない。PDTIでは、モデルの自由度を向上させるために、破壊フロントが反転する現象も許容する震源過程モデルが用いられることが多い。断層構造や強度分布に階層性が存在する場合は、破壊フロントの進行方向が反転する現象も起こりうるため、破壊伝播方向に自由度を持たせることは重要である。
PDTIは多くの地震に適用されてきたが、その中でも、2010 Mw 7.2 El Mayor-Cucapah earthquake、2014 Mw 6.2 Thailand earthquake、2016 Mw 7.1 Romanche transform fault earthquake、2016 Mw 8.0 Kaikoura earthquake、2018 Mw 8.1 Gulf of Alaska earthquake、2019 Mw 8.0 Peru intraslab earthquake、2022 Mw 7.1 Taitung, Taiwan, earthquake、2023 Mw 7.9 South‐Eastern Türkiye and Syria earthquake の8つの地震で、破壊フロントの進行方向が反転する現象が観測されている。これらの破壊フロント進行方向の反転は、初期破壊から主破壊への移行時に発生しており、階層的な破壊成長が発生していることを示している。また、断層形状が複雑な領域では非ダブルカップル成分が卓越し、複数の断層が同時破壊している様相が捉えられている。本発表では、PDTIの解析結果をレビューし、階層的な破壊成長について議論する。