[S08P-06] Slow Slip Events (SSEs) detected by borehole and DONET observatories: similarities and differences of SSEs between 2020 and 2023 March
近年、地震や地殻変動を高感度かつ広域にわたって観測する技術の進展によって、通常の地震に比べて時間をかけて断層が滑るために人間では揺れを感じない「スロー地震」の発生が、日本周辺や世界中のプレート沈み込み帯で検知されるようになってきました。「スロー地震」は、規模の大きなものからスロースリップイベント・超低周波地震・低周波微動などに大別されており、規模の大きなスロースリップイベントは超低周波地震および低周波微動を誘発する場合があることが知られています。スロースリップイベントは長期孔内観測装置の間隙水圧計、超低周波地震・低周波微動はDONETの広帯域地震計でそれぞれ捉えられています。 しかしながら、間隙水圧を計測する孔内観測機器および海底に設置されたDONETの海底水圧計では、気象・海象擾乱によって影響を受けたりすると、その圧力変化がスロースリップイベントの発生を示すものかどうかを短時間で正しく判断するのが困難な状況となる、という問題を抱えていました。その解決策として、孔口あるいは近傍にあるDONETの海底水圧計の記録を用いて、相互相関関数から潮汐応答の時間差を推定し、孔内水圧データとの差分を取ることで海洋擾乱成分の軽減を図りました。その結果、2023年3月に発生したスロースリップイベントは、2020年3月に発生したスロースリップイベントと、発生領域・体積歪変化率などの点で類似している他、黒潮蛇行がDONET-1付近で発生していたという共通の特徴も確認できました。本講演では、類似点・相違点についてまとめた上で、解析の現状と課題についても議論する予定です。