[S08P-19] 動力学的震源モデルから推定される中央構造線断層帯(四国陸域)の最新イベント像
中央構造線断層帯(MTL)は,日本で最も活動的な断層帯のひとつである.この長大な断層帯は10の区間に区分されて評価されているが,複数区間が連動する可能性についても,検討すべき課題として挙げられている(地震調査研究推進本部,2017).そのため,この断層帯のうち,四国陸域の4区間(讃岐山脈南縁東部区間,同西部区間,石鎚山脈北縁区間,同西部区間)を対象として,連動可能性とその条件を検討するため,地質学的および地球物理学的データに基づいて動力学的震源モデルを構築し,動的破壊シミュレーションをおこなう.今回は,活動履歴を考慮した応力場モデルを構築する手法を検討し,最新イベントで起こり得た連動のパターンを整理することを試みる.
MTLの各区間では,平均活動間隔,最新イベントを含む複数のイベントの活動時期,および,最新イベントでのすべり量の値が得られており(地震調査研究推進本部,2017),四国陸域の最新イベントについては,讃岐山脈南縁東部区間,同西部区間で16世紀周辺,石鎚山脈北縁区間,同西部区間で15世紀以後,16世紀周辺以前の可能性があるとされている.そこで,各区間の平均活動間隔と,最新イベントおよび1つ前のイベントの活動時期から,最新イベント直前の地震後経過率を推定し,これを反映した応力場モデルを作成した.年代値は数百年の誤差を伴うため,平均活動間隔と1つ前のイベント年代について,それぞれ100年刻みで組み合わせを考え,最新イベント年代が調査結果と矛盾しない組み合わせを採用した.また,最新イベント年代が最も古い区間から最新イベントの破壊が始まったと考えると,その候補となるのは,讃岐山脈南縁東部区間もしくは石鎚山脈北縁西部区間のどちらかとなった.その結果,各区間の履歴の組み合わせと破壊の始まる区間の候補との組み合わせで,モデル数は44となった.
断層モデルと媒質モデル,現在の応力場のモデルは,加瀬・浦田(2023, JpGU)と同じものを使用した.現在の応力場は,最新イベントからの経過率分の応力降下量を蓄積した状態であり,イベントが発生すると剪断応力は動摩擦応力まで減少するとして動摩擦応力分布と動摩擦係数分布を求め,最新イベントの破壊が始まる区間に仮定する初期破壊領域中心での強度と応力降下量の比を1.3と仮定して求めた静摩擦係数と,その点での動摩擦係数との差を動摩擦係数分布に加えて,静摩擦係数分布を得た.そして,1つ前のイベントから最新イベントまでの経過率分の応力降下量を動摩擦応力分布に加えて,最新イベント直前の剪断応力分布とした.応力降下量は,シミュレーションで得られる地表のすべり量分布が活断層調査による最新イベントでのすべり量分布と調和的になるような値を探索した.
断層面の境界条件には,Coulombの破壊基準とすべり弱化の摩擦構成則(Ida,1972;Andrews,1976)を仮定し,弾性体の運動方程式を差分法(Kase and Day,2006)で解くことによって,断層面上の破壊伝播過程を求めた.
最新イベントとして得られた連動パターンは,「石鎚山脈北縁西部区間から始まり,石鎚山脈北縁区間までの2連動」「石鎚山脈北縁西部区間から始まり,4区間すべてが連動」「讃岐山脈南縁東部区間から始まり,石鎚山脈北縁区間までの3連動」「讃岐山脈南縁東部区間から始まり,4区間すべてが連動」の4パターンであった.このうち,「石鎚山脈北縁西部区間から始まり,石鎚山脈北縁区間までの2連動」は,活断層調査による変位履歴(産総研・文科省,2023)と調和的である.乗り移り先の地震後経過率が1.0未満でも連動することがあるため,どこまで連動するかは,乗り移り先だけではなく,乗り移り元の区間の地震後経過率にも左右される.そのため,地震後経過率が1.0の区間が連動しないモデルもあった.また,讃岐山脈南縁西部区間,石鎚山脈北縁区間,同西部区間はオーバーラップしているため,石鎚山脈北縁西部区間の連動性に,石鎚山脈北縁区間だけではなく,讃岐山脈南縁西部区間の地震後経過率も影響していることが推測される結果が得られた.これらの結果は,連動型地震を評価する際に,地震後経過率が1未満の区間の取り扱いに注意が必要であることを示唆している.
MTLの各区間では,平均活動間隔,最新イベントを含む複数のイベントの活動時期,および,最新イベントでのすべり量の値が得られており(地震調査研究推進本部,2017),四国陸域の最新イベントについては,讃岐山脈南縁東部区間,同西部区間で16世紀周辺,石鎚山脈北縁区間,同西部区間で15世紀以後,16世紀周辺以前の可能性があるとされている.そこで,各区間の平均活動間隔と,最新イベントおよび1つ前のイベントの活動時期から,最新イベント直前の地震後経過率を推定し,これを反映した応力場モデルを作成した.年代値は数百年の誤差を伴うため,平均活動間隔と1つ前のイベント年代について,それぞれ100年刻みで組み合わせを考え,最新イベント年代が調査結果と矛盾しない組み合わせを採用した.また,最新イベント年代が最も古い区間から最新イベントの破壊が始まったと考えると,その候補となるのは,讃岐山脈南縁東部区間もしくは石鎚山脈北縁西部区間のどちらかとなった.その結果,各区間の履歴の組み合わせと破壊の始まる区間の候補との組み合わせで,モデル数は44となった.
断層モデルと媒質モデル,現在の応力場のモデルは,加瀬・浦田(2023, JpGU)と同じものを使用した.現在の応力場は,最新イベントからの経過率分の応力降下量を蓄積した状態であり,イベントが発生すると剪断応力は動摩擦応力まで減少するとして動摩擦応力分布と動摩擦係数分布を求め,最新イベントの破壊が始まる区間に仮定する初期破壊領域中心での強度と応力降下量の比を1.3と仮定して求めた静摩擦係数と,その点での動摩擦係数との差を動摩擦係数分布に加えて,静摩擦係数分布を得た.そして,1つ前のイベントから最新イベントまでの経過率分の応力降下量を動摩擦応力分布に加えて,最新イベント直前の剪断応力分布とした.応力降下量は,シミュレーションで得られる地表のすべり量分布が活断層調査による最新イベントでのすべり量分布と調和的になるような値を探索した.
断層面の境界条件には,Coulombの破壊基準とすべり弱化の摩擦構成則(Ida,1972;Andrews,1976)を仮定し,弾性体の運動方程式を差分法(Kase and Day,2006)で解くことによって,断層面上の破壊伝播過程を求めた.
最新イベントとして得られた連動パターンは,「石鎚山脈北縁西部区間から始まり,石鎚山脈北縁区間までの2連動」「石鎚山脈北縁西部区間から始まり,4区間すべてが連動」「讃岐山脈南縁東部区間から始まり,石鎚山脈北縁区間までの3連動」「讃岐山脈南縁東部区間から始まり,4区間すべてが連動」の4パターンであった.このうち,「石鎚山脈北縁西部区間から始まり,石鎚山脈北縁区間までの2連動」は,活断層調査による変位履歴(産総研・文科省,2023)と調和的である.乗り移り先の地震後経過率が1.0未満でも連動することがあるため,どこまで連動するかは,乗り移り先だけではなく,乗り移り元の区間の地震後経過率にも左右される.そのため,地震後経過率が1.0の区間が連動しないモデルもあった.また,讃岐山脈南縁西部区間,石鎚山脈北縁区間,同西部区間はオーバーラップしているため,石鎚山脈北縁西部区間の連動性に,石鎚山脈北縁区間だけではなく,讃岐山脈南縁西部区間の地震後経過率も影響していることが推測される結果が得られた.これらの結果は,連動型地震を評価する際に,地震後経過率が1未満の区間の取り扱いに注意が必要であることを示唆している.