1:15 PM - 1:30 PM
[S09-19] Lower limit of seismogenic zone accompanied with active faults beneath the Kinki region
1. はじめに
近畿地方には、中央構造線より北側の地域で、多くの活断層が高い密度で分布している。丹後半島周辺を走る1927年の北丹後地震を引き起こした山田断層と郷村断層、本州から淡路島にかけて東北東-西南西に走る1995年の兵庫県南部地震を引き起こした六甲淡路断層帯の一部の野島断層をはじめ、山崎断層、上町断層、有馬-高槻断層帯など、大都市直下を走る活断層も多い。2018年6月18日にはM JMA6.1の地震が発生し,最大震度6弱を観測した.防災科学技術研究所(防災科研)では陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)を運用し、高感度地震観測網(Hi-net)を含めた観測網により三次元地震波速度構造やそれを用いた震源決定を行っている。本研究では、三次元地震波速度構造を用いて近畿地方の地震活動を再決定し、活断層に起因すると考えられる内陸の地震発生層の下限について考察した。
2. データ・手法
防災科研MOWLASのHi-net等に加え、気象庁、国立大学等のデータも含めて解析した三次元地震波速度構造や観測点補正値(Matsubara et al., 2022)を用いて2000年10月以降の約22年間の地震について震源を再決定した.Gutenberg-Lichter則を満たすM1.5以上の地震を解析対象とした。ある点を中心に±0.05°(約5km)すなわち1辺0.1°(約10km)の矩形領域内の深さ30kmまでに地震が10個以上ある場合にD90(その深さよりも浅いところで矩形領域内の地震の90%が起きている深さ)を、20個以上ある場合にD95(その深さよりも浅いところで矩形領域内の地震の95%が起きている深さ)を計算した。同様に、±0.1°(約10km)すなわち1辺0.2°(約20km)の矩形領域内の地震、±0.2°(約20km)すなわち1辺0.1°(約40km)の矩形領域内の深さ30kmまでに地震についても地震が10個以上ある場合にD90を、20個以上ある場合にD95を計算し、地震発生層の下限とした。
3. 結果と議論
活断層の直下の地震活動に注目するには1辺0.1°(約10km)の矩形領域内の地震活動の解析が有効である。この結果では、北緯34°以北ではD90は16km以浅となっており、沈み込むフィリピン海プレートの影響を受けずにユーラシアプレート内の地震活動の下限を推定できていることがわかる。中央構造線の南側では、和歌山市付近の群発地震活動が活発であり、地震発生層の下限が深さ8km以浅と非常に浅くなっている。この領域ではヘリウム同位体比の高異常や比抵抗構造から、スラブ由来の流体の上昇が認められている(Umeda et al., 2006)。一方で、活断層が多く走る中央構造線以北では、丹後半島付近で深さ12km以浅の場所が見られるが、それ以外の場所では深さ12~16kmとなっている。しかし中国山地東部や琵琶湖の南東から奈良県にかけての地震活動が低調なところでは下限の推定が困難である。一方、1辺0.4°(約40km)の矩形領域内の地震の解析では、分解能は低くなり個別の活断層との比較は困難であるが、地域の地震活動の下限を考える一助となる。その結果からは、北緯34°以北の近畿地方では、中国山地下、和歌山市付近、伊勢湾周辺を除いてほぼ全域で地震発生層の下限が12~16kmであった。D95についてはD90よりも若干深くなるが、やはり12~16kmであった。中国山地の下や伊勢湾周辺では16-18kmであった。北緯34°以南では、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震活動が含まれるため、D90やD95は深くなっている。
重力異常では、若狭湾から琵琶湖を通り大阪湾に抜ける領域で負の重力異常となっている一方、紀伊半島の山間部では正の重力異常となっている(地質調査総合センター(編),2013)。それぞれ異常領域は活断層に囲まれているが、 地震発生層の下限とはそれほど関係は見られない。
近畿地方の地磁気異常は、ほぼ東北東-西南西の等値線が北から南へ向かって並んでおり、南に向かって徐々に弱くなっている。地震発生層の下限は12~16kmであったものが和歌山市付近で8-12kmと浅くなり、その南では20km以深と急激に深くなるので、単調に変化する地磁気異常とは調和的ではない。
モホ面は伊勢湾から琵琶湖周辺と中国山地で深い一方、紀伊半島中部では浅い(Matsubara et al., 2017)。伊勢湾周辺や中国山地下では地震発生層の下限は16-18km程度であり、やや深いモホ面と調和的である。
近畿地方には、中央構造線より北側の地域で、多くの活断層が高い密度で分布している。丹後半島周辺を走る1927年の北丹後地震を引き起こした山田断層と郷村断層、本州から淡路島にかけて東北東-西南西に走る1995年の兵庫県南部地震を引き起こした六甲淡路断層帯の一部の野島断層をはじめ、山崎断層、上町断層、有馬-高槻断層帯など、大都市直下を走る活断層も多い。2018年6月18日にはM JMA6.1の地震が発生し,最大震度6弱を観測した.防災科学技術研究所(防災科研)では陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)を運用し、高感度地震観測網(Hi-net)を含めた観測網により三次元地震波速度構造やそれを用いた震源決定を行っている。本研究では、三次元地震波速度構造を用いて近畿地方の地震活動を再決定し、活断層に起因すると考えられる内陸の地震発生層の下限について考察した。
2. データ・手法
防災科研MOWLASのHi-net等に加え、気象庁、国立大学等のデータも含めて解析した三次元地震波速度構造や観測点補正値(Matsubara et al., 2022)を用いて2000年10月以降の約22年間の地震について震源を再決定した.Gutenberg-Lichter則を満たすM1.5以上の地震を解析対象とした。ある点を中心に±0.05°(約5km)すなわち1辺0.1°(約10km)の矩形領域内の深さ30kmまでに地震が10個以上ある場合にD90(その深さよりも浅いところで矩形領域内の地震の90%が起きている深さ)を、20個以上ある場合にD95(その深さよりも浅いところで矩形領域内の地震の95%が起きている深さ)を計算した。同様に、±0.1°(約10km)すなわち1辺0.2°(約20km)の矩形領域内の地震、±0.2°(約20km)すなわち1辺0.1°(約40km)の矩形領域内の深さ30kmまでに地震についても地震が10個以上ある場合にD90を、20個以上ある場合にD95を計算し、地震発生層の下限とした。
3. 結果と議論
活断層の直下の地震活動に注目するには1辺0.1°(約10km)の矩形領域内の地震活動の解析が有効である。この結果では、北緯34°以北ではD90は16km以浅となっており、沈み込むフィリピン海プレートの影響を受けずにユーラシアプレート内の地震活動の下限を推定できていることがわかる。中央構造線の南側では、和歌山市付近の群発地震活動が活発であり、地震発生層の下限が深さ8km以浅と非常に浅くなっている。この領域ではヘリウム同位体比の高異常や比抵抗構造から、スラブ由来の流体の上昇が認められている(Umeda et al., 2006)。一方で、活断層が多く走る中央構造線以北では、丹後半島付近で深さ12km以浅の場所が見られるが、それ以外の場所では深さ12~16kmとなっている。しかし中国山地東部や琵琶湖の南東から奈良県にかけての地震活動が低調なところでは下限の推定が困難である。一方、1辺0.4°(約40km)の矩形領域内の地震の解析では、分解能は低くなり個別の活断層との比較は困難であるが、地域の地震活動の下限を考える一助となる。その結果からは、北緯34°以北の近畿地方では、中国山地下、和歌山市付近、伊勢湾周辺を除いてほぼ全域で地震発生層の下限が12~16kmであった。D95についてはD90よりも若干深くなるが、やはり12~16kmであった。中国山地の下や伊勢湾周辺では16-18kmであった。北緯34°以南では、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震活動が含まれるため、D90やD95は深くなっている。
重力異常では、若狭湾から琵琶湖を通り大阪湾に抜ける領域で負の重力異常となっている一方、紀伊半島の山間部では正の重力異常となっている(地質調査総合センター(編),2013)。それぞれ異常領域は活断層に囲まれているが、 地震発生層の下限とはそれほど関係は見られない。
近畿地方の地磁気異常は、ほぼ東北東-西南西の等値線が北から南へ向かって並んでおり、南に向かって徐々に弱くなっている。地震発生層の下限は12~16kmであったものが和歌山市付近で8-12kmと浅くなり、その南では20km以深と急激に深くなるので、単調に変化する地磁気異常とは調和的ではない。
モホ面は伊勢湾から琵琶湖周辺と中国山地で深い一方、紀伊半島中部では浅い(Matsubara et al., 2017)。伊勢湾周辺や中国山地下では地震発生層の下限は16-18km程度であり、やや深いモホ面と調和的である。