3:30 PM - 3:45 PM
[S14-02] Evaluation of crustal deformation and seismicity data for earthquake probability estimation in the southwest Japan
はじめに
内陸地震発生の長期的な評価として、主要活断層の確率予測や活断層の地域評価が地震本部によって行われている。これらの長期評価では、地質学的手法による活断層調査に基づくデータが主に用いられていて、地震活動データは参考として示されているが、測地データは用いられていない。地域評価では、地表の長さが短い活断層も評価対象となっているが、伏在活断層や、そもそも活断層が存在しない地域での評価が課題となっている。Nishimura (2021)では、GNSS速度データから得られるひずみ速度の空間分布を用いて西南日本の内陸地震の発生確率の推定が行われているが、南海トラフのプレート間固着の影響をモデルに基づき除去したデータを用いている。日本列島の地殻変動場には、海溝でのプレート間固着や地震時・地震後の余効変動の影響が時空間的に複雑に内包されており、定量的な評価が課題である。一方、地震活動度を用いた評価も試みられており(Ogata, 2022)、歴史地震を含む地震活動カタログの利用や、余震の減衰時間と応力速度や地震の繰り返し間隔との関係も検討されている(Toda and Stein, 2018)。本研究では内陸地震発生確率評価に向けて、GNSS速度データから求められるひずみ速度の空間分布と、応力速度との関係が指摘されている余震継続時間の特性の検討を行う。
地殻変動データによるひずみ速度の空間分布の推定と短い空間波長成分の抽出
国土地理院F5座標データから、東北地方太平洋沖地震が発生する直前の2011年3月10日までの西南日本のGNSS観測点の水平成分速度を推定した。南北・東西変位速度ごとに、10kmごとのグリッドでクリギング法を用いて空間補間を行い、ひずみ速度に変換した。クリギング法では、既知のデータから求められた空間相関性をバリオグラムとしてモデル化し、任意の地点での最良線形不偏推定量を求める。今回は通常クリギング法を用いた。小林(2009)によると、クリギング法は長・短波の変動が混在する地殻変動場の空間特性を保ったまま補間することが可能である。一方、GNSSから得られるひずみ速度を直接的に地震発生確率評価に用いるためには、その場所の永年的な応力蓄積に寄与しない成分の客観的な評価が必要である。内陸で起こる地震の規模は最大でもM8で一般的には活断層のサイズで規定され、活断層がない場所では最大でもM7程度と考えられる。推定されたひずみ速度分布に移動平均法の適用を行い、短波長成分の抽出を行った。様々な距離で移動平均法を適用し、地震活動の空間分布との比較を行った。
地震カタログによる余震継続時間と定常的な地震活動
Toda and Stein (2018) やStein and Liu (2009)では、余震継続時間と応力速度や活断層での繰り返し間隔の関係が示されている。気象庁地震カタログを用いて過去30年以内に発生したM6.0以上の全国の主要な内陸地震の余震継続時間を、大森公式を利用して推定を行った。余震継続時間は、38年~9300年と地震によって大きく異なる値を示した。
結果と今後の展望
クリギング補間された中国・四国・九州地方のひずみ速度分布は、Okazaki et al.(2020)による結果と同様の空間特性を示し、地震活動が活発な山陰~山口県や徳島県で相対的に大きな地域が見られる。また、大分県~鹿児島県付近にも比較的大きな地域が見られる。移動平均法を適用し短波長成分のみを抽出すると、山口県付近や山陰地方、鹿児島県で局所的にひずみ速度が大きな地域が確認された。2005年福岡県西方沖地震や1997年山口県北部地震の震源付近では余効変動による大きなひずみ速度がみられた。2016年熊本地震や2016年鳥取県中部地震の震源付近では大きなひずみ速度の値は見られなかった。余震の減衰においては、活断層付近で発生した地震の余震継続時間のほうが、活断層が見つかっていない場所での地震よりも短い傾向を示し、活断層付近で大きな応力速度が示唆される。今後は移動平均法で抽出した短波長成分をNishimura (2021)の手法を適用し、内陸地震の発生確率の推定につなげていきたいと考えている。その際、地震履歴や定常地震活動度、活断層の密度と長さ等の先駆的情報を、当該地域の先天的な地震発生能力を示す指標として、中規模地震の余震減衰時間を応力速度の指標として評価することで、地震発生確率評価手法に組み込むことを検討している。また、地震発生能力を示す指標として、Sharma et al.(2020)のように蓄積されたひずみ速度と大地震によって解放された地震モーメントとの間のモーメント欠損の値についても組み込むことも検討している。
内陸地震発生の長期的な評価として、主要活断層の確率予測や活断層の地域評価が地震本部によって行われている。これらの長期評価では、地質学的手法による活断層調査に基づくデータが主に用いられていて、地震活動データは参考として示されているが、測地データは用いられていない。地域評価では、地表の長さが短い活断層も評価対象となっているが、伏在活断層や、そもそも活断層が存在しない地域での評価が課題となっている。Nishimura (2021)では、GNSS速度データから得られるひずみ速度の空間分布を用いて西南日本の内陸地震の発生確率の推定が行われているが、南海トラフのプレート間固着の影響をモデルに基づき除去したデータを用いている。日本列島の地殻変動場には、海溝でのプレート間固着や地震時・地震後の余効変動の影響が時空間的に複雑に内包されており、定量的な評価が課題である。一方、地震活動度を用いた評価も試みられており(Ogata, 2022)、歴史地震を含む地震活動カタログの利用や、余震の減衰時間と応力速度や地震の繰り返し間隔との関係も検討されている(Toda and Stein, 2018)。本研究では内陸地震発生確率評価に向けて、GNSS速度データから求められるひずみ速度の空間分布と、応力速度との関係が指摘されている余震継続時間の特性の検討を行う。
地殻変動データによるひずみ速度の空間分布の推定と短い空間波長成分の抽出
国土地理院F5座標データから、東北地方太平洋沖地震が発生する直前の2011年3月10日までの西南日本のGNSS観測点の水平成分速度を推定した。南北・東西変位速度ごとに、10kmごとのグリッドでクリギング法を用いて空間補間を行い、ひずみ速度に変換した。クリギング法では、既知のデータから求められた空間相関性をバリオグラムとしてモデル化し、任意の地点での最良線形不偏推定量を求める。今回は通常クリギング法を用いた。小林(2009)によると、クリギング法は長・短波の変動が混在する地殻変動場の空間特性を保ったまま補間することが可能である。一方、GNSSから得られるひずみ速度を直接的に地震発生確率評価に用いるためには、その場所の永年的な応力蓄積に寄与しない成分の客観的な評価が必要である。内陸で起こる地震の規模は最大でもM8で一般的には活断層のサイズで規定され、活断層がない場所では最大でもM7程度と考えられる。推定されたひずみ速度分布に移動平均法の適用を行い、短波長成分の抽出を行った。様々な距離で移動平均法を適用し、地震活動の空間分布との比較を行った。
地震カタログによる余震継続時間と定常的な地震活動
Toda and Stein (2018) やStein and Liu (2009)では、余震継続時間と応力速度や活断層での繰り返し間隔の関係が示されている。気象庁地震カタログを用いて過去30年以内に発生したM6.0以上の全国の主要な内陸地震の余震継続時間を、大森公式を利用して推定を行った。余震継続時間は、38年~9300年と地震によって大きく異なる値を示した。
結果と今後の展望
クリギング補間された中国・四国・九州地方のひずみ速度分布は、Okazaki et al.(2020)による結果と同様の空間特性を示し、地震活動が活発な山陰~山口県や徳島県で相対的に大きな地域が見られる。また、大分県~鹿児島県付近にも比較的大きな地域が見られる。移動平均法を適用し短波長成分のみを抽出すると、山口県付近や山陰地方、鹿児島県で局所的にひずみ速度が大きな地域が確認された。2005年福岡県西方沖地震や1997年山口県北部地震の震源付近では余効変動による大きなひずみ速度がみられた。2016年熊本地震や2016年鳥取県中部地震の震源付近では大きなひずみ速度の値は見られなかった。余震の減衰においては、活断層付近で発生した地震の余震継続時間のほうが、活断層が見つかっていない場所での地震よりも短い傾向を示し、活断層付近で大きな応力速度が示唆される。今後は移動平均法で抽出した短波長成分をNishimura (2021)の手法を適用し、内陸地震の発生確率の推定につなげていきたいと考えている。その際、地震履歴や定常地震活動度、活断層の密度と長さ等の先駆的情報を、当該地域の先天的な地震発生能力を示す指標として、中規模地震の余震減衰時間を応力速度の指標として評価することで、地震発生確率評価手法に組み込むことを検討している。また、地震発生能力を示す指標として、Sharma et al.(2020)のように蓄積されたひずみ速度と大地震によって解放された地震モーメントとの間のモーメント欠損の値についても組み込むことも検討している。