[S15P-18] Characterization and Comparison Method of the Spatial Seismic Intensity Distributions Using Independent Component Analysis
日本全国に展開している強震観測点により,地震発生後数分以内には各地の計測震度等の情報を入手できるようになっている.さらに,観測データとこれまで構築されてきた全国規模の地盤構造モデルを活用することにより,観測点が存在しない地点を含むメッシュ状の面的推定震度分布も防災科研や気象庁等から公開されている.これらの情報は,地震発生後の被害推定等に有用であり,災害対応を効果的に進めるために必要不可欠なものと言える.
一方で,被害地震の発生後に地震調査研究推進本部で行われる地震の評価では,主に地震が発生した位置や断層運動の様式,規模等の震源情報にもとづき,対象地震とその周辺で過去に発生した地震の比較が行われている.震源情報に加えて被害に直接関係する震度分布等の地震動の情報についても,その特徴を明らかにし過去の地震との類似性等を把握することで,より被害推定等に有効な地震の評価が行えるだろう.本研究では,強震観測データから得られる面的推定震度分布データを対象に,独立成分分析を適用し特徴の抽出を試みるとともに,分析結果にもとづいた類似度の評価を行った.
解析には,1997年から2019年までに震度5弱以上を観測した地震を対象とした.ただし全255地震のうち,対象地震以外の地震による影響のあった29地震は除き,最終的には226地震のデータを利用した.各地震の面的推定震度分布データの作成においては,防災科研のK-NET,KiK-netの観測データを活用した.各観測点の地震動データからリアルタイム震度を計算し,全観測点のリアルタイム震度を1秒ごとに約1km メッシュへ空間補間し,各メッシュで解析対象時間内の最大値をとることで,各地震の面的推定震度分布データを作成した.各震度分布データは38万1234メッシュ からなる.
各観測点のリアルタイム震度を1kmメッシュへ空間補間する際には,表層の地盤増幅率の不均質性を考慮し,以下の手順で実施した.1)リアルタイム震度を最大速度に変換),2)J-SHISによる表層地盤増幅率を用いて工学的基盤相当の最大速度を推定,3)逆距離加重法を用いて空間的に補間,4)表層地盤増幅率により地表最大速度を推定,5)地表最大速度を計測震度相当値に変換.
それぞれが複雑な分布を持つ面的推定震度分布データに対して独立成分分析を適用し,複数の独立成分と変換行列の積で面的推定震度分布データを表現する.ここで,独立成分数は50とした.得られた独立成分を確認すると,振幅の大きな領域が互いにばらついており,これらの線形和により日本周辺で発生した地震の震度分布を表現していると考えられる.
さらに,2005年宮城県沖の地震(M 7.2),2011東北地震の前震(M 7.3)および本震(M 9.0),2016年熊本地震の前震(M 6.5),本震(M 7.3),2016年4月16日に発生した余震(M 5.8)について,変換行列から各地震に対応する行ベクトルを取り出し,各独立成分の寄与を計算した.東北沖で発生した3地震と熊本で発生した3地震で,寄与の大きい独立成分の組み合わせに明瞭な差が確認できた.また,東北沖の地震の方が熊本の地震に比べて寄与している独立成分数が多かった.変換行列の分布が各地震の震度分布が持つ特徴を反映していると考えられ,その値を比較することにより,面的推定震度分布の類似度を評価できることが見込まれる.
一方で,被害地震の発生後に地震調査研究推進本部で行われる地震の評価では,主に地震が発生した位置や断層運動の様式,規模等の震源情報にもとづき,対象地震とその周辺で過去に発生した地震の比較が行われている.震源情報に加えて被害に直接関係する震度分布等の地震動の情報についても,その特徴を明らかにし過去の地震との類似性等を把握することで,より被害推定等に有効な地震の評価が行えるだろう.本研究では,強震観測データから得られる面的推定震度分布データを対象に,独立成分分析を適用し特徴の抽出を試みるとともに,分析結果にもとづいた類似度の評価を行った.
解析には,1997年から2019年までに震度5弱以上を観測した地震を対象とした.ただし全255地震のうち,対象地震以外の地震による影響のあった29地震は除き,最終的には226地震のデータを利用した.各地震の面的推定震度分布データの作成においては,防災科研のK-NET,KiK-netの観測データを活用した.各観測点の地震動データからリアルタイム震度を計算し,全観測点のリアルタイム震度を1秒ごとに約1km メッシュへ空間補間し,各メッシュで解析対象時間内の最大値をとることで,各地震の面的推定震度分布データを作成した.各震度分布データは38万1234メッシュ からなる.
各観測点のリアルタイム震度を1kmメッシュへ空間補間する際には,表層の地盤増幅率の不均質性を考慮し,以下の手順で実施した.1)リアルタイム震度を最大速度に変換),2)J-SHISによる表層地盤増幅率を用いて工学的基盤相当の最大速度を推定,3)逆距離加重法を用いて空間的に補間,4)表層地盤増幅率により地表最大速度を推定,5)地表最大速度を計測震度相当値に変換.
それぞれが複雑な分布を持つ面的推定震度分布データに対して独立成分分析を適用し,複数の独立成分と変換行列の積で面的推定震度分布データを表現する.ここで,独立成分数は50とした.得られた独立成分を確認すると,振幅の大きな領域が互いにばらついており,これらの線形和により日本周辺で発生した地震の震度分布を表現していると考えられる.
さらに,2005年宮城県沖の地震(M 7.2),2011東北地震の前震(M 7.3)および本震(M 9.0),2016年熊本地震の前震(M 6.5),本震(M 7.3),2016年4月16日に発生した余震(M 5.8)について,変換行列から各地震に対応する行ベクトルを取り出し,各独立成分の寄与を計算した.東北沖で発生した3地震と熊本で発生した3地震で,寄与の大きい独立成分の組み合わせに明瞭な差が確認できた.また,東北沖の地震の方が熊本の地震に比べて寄与している独立成分数が多かった.変換行列の分布が各地震の震度分布が持つ特徴を反映していると考えられ,その値を比較することにより,面的推定震度分布の類似度を評価できることが見込まれる.