16:15 〜 16:30
[S16-02] 国道3号DAS観測における地震波干渉法を用いた日奈久断層沿いの浅部構造推定
浅部の地下構造をイメージングすることは、建築計画や地下空間の利用といった、都市開発を進める上で非常に重要である。特に断層付近の地域等では、地盤の崩落や地震動の増幅によって大きな被害を受ける可能性があり、浅部構造の情報が地盤特性を評価するために必要である。浅部構造推定のために微動探査が一般に行われているが、広範囲での実施には多大な労力が必要であり、市街地での観測も難しい。近年、光ファイバーケーブル自体をセンサーとしてある場所での歪および歪速度を時系列で測定する、Distributed Acoustic Sensing(DAS)が地球科学分野において観測手法として普及している。DAS観測は低コストかつ超高密度で多点観測を行え、市街地でも既存ケーブルを利用して実施できる利点がある。例えば、火山性地震の震源決定やサイト特性の評価(Nishimura et al., 2021)や、都市部での浅部イメージングや交通ノイズ検知(Song et al., 2021)、断層帯のイメージング(Yang et al., 2022)など様々な研究にDASによる観測が利用されている。
本研究では2023年2月から3月までの約1ヶ月間、国土交通省熊本維持出張所にSilixa社のインテロゲーター(iDAS)を設置し、南方向の国道3号線に沿って国土交通省八代維持出張所まで約40kmの光ファイバーケーブルに接続し、DAS観測をおこなった。チャンネル間隔は4 m、ゲージ長は10 m、サンプリング周波数は400 Hzとし、総チャンネル数は9984チャンネルであった。期間中、22個の地震を観測することができた。しかしイベントの規模が小さいこと、そして国道を通る車両のノイズが多く含まれていたため、雑微動を用いて地下構造を推定する。
観測されたデータから日奈久断層沿いにあるチャンネル区間において、昼の時間帯(13時から15時)の3時間分のノイズ記録を用いた。まずデータはトレンドを除去し、1-30 Hzでバンドパスフィルタをかけ100 Hzにリサンプリングした。次にそれを10分間の時間窓で分割し、波形の1ビット化、スペクトルホワイトニングをした後、相互相関関数を計算し、最後に時間窓毎の相互相関関数を位相重み付けスタッキング(PWS)した。しかし、この通常の地震波干渉法のデータ処理では、非一様・非定常なノイズ源分布により安定した相互相関関数を得ることが難しかったため、さらにTSI法(Three-Station Interferometry)を採用した。TSI法は3つの観測点を使用し、1点を仮想震源、他2点を観測点とした相互相関関数を用いて、繰り返し地震波干渉法を適用し、抽出される表面波のSN比を向上させる手法である(Curtis and Halliday 2010, Song et al., 2022)。TSI法で計算した相互相関を使用し、表面波マルチチャンネル解析により分散曲線を推定した。推定した分散曲線から波長が36 mの時のレイリー波位相速度を求め、経験式(Brown et al., 2000)に基づき表層30 mの平均S波速度を示すVS30を導出した。
TSI法を適用した結果、元の相互相関関数よりSN比が向上し、長距離まで表面波を抽出することができた。TSI法は繰り返し適用することが可能であるが、1回だけで十分な結果が得られた。推定したVS30は、およそ360 m/sであり、J-SHISの表層地盤のデータとほぼ整合的であった。区間によってVS30の変動が見られたが、この詳細に関しては誤差評価を含め、さらに解析をする必要があると考えられる。
TSI法を用いても、表面波の抽出が困難な区間もあり、今後はノイズ源の考察や解析手法の向上を行い、測線全体における浅部構造の空間分布を推定する予定である。
(謝辞)今回の観測にあたりまして、国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所のご協力のもと、国土交通省所有の光ファイバーケーブルを使用させていただきました。
本研究では2023年2月から3月までの約1ヶ月間、国土交通省熊本維持出張所にSilixa社のインテロゲーター(iDAS)を設置し、南方向の国道3号線に沿って国土交通省八代維持出張所まで約40kmの光ファイバーケーブルに接続し、DAS観測をおこなった。チャンネル間隔は4 m、ゲージ長は10 m、サンプリング周波数は400 Hzとし、総チャンネル数は9984チャンネルであった。期間中、22個の地震を観測することができた。しかしイベントの規模が小さいこと、そして国道を通る車両のノイズが多く含まれていたため、雑微動を用いて地下構造を推定する。
観測されたデータから日奈久断層沿いにあるチャンネル区間において、昼の時間帯(13時から15時)の3時間分のノイズ記録を用いた。まずデータはトレンドを除去し、1-30 Hzでバンドパスフィルタをかけ100 Hzにリサンプリングした。次にそれを10分間の時間窓で分割し、波形の1ビット化、スペクトルホワイトニングをした後、相互相関関数を計算し、最後に時間窓毎の相互相関関数を位相重み付けスタッキング(PWS)した。しかし、この通常の地震波干渉法のデータ処理では、非一様・非定常なノイズ源分布により安定した相互相関関数を得ることが難しかったため、さらにTSI法(Three-Station Interferometry)を採用した。TSI法は3つの観測点を使用し、1点を仮想震源、他2点を観測点とした相互相関関数を用いて、繰り返し地震波干渉法を適用し、抽出される表面波のSN比を向上させる手法である(Curtis and Halliday 2010, Song et al., 2022)。TSI法で計算した相互相関を使用し、表面波マルチチャンネル解析により分散曲線を推定した。推定した分散曲線から波長が36 mの時のレイリー波位相速度を求め、経験式(Brown et al., 2000)に基づき表層30 mの平均S波速度を示すVS30を導出した。
TSI法を適用した結果、元の相互相関関数よりSN比が向上し、長距離まで表面波を抽出することができた。TSI法は繰り返し適用することが可能であるが、1回だけで十分な結果が得られた。推定したVS30は、およそ360 m/sであり、J-SHISの表層地盤のデータとほぼ整合的であった。区間によってVS30の変動が見られたが、この詳細に関しては誤差評価を含め、さらに解析をする必要があると考えられる。
TSI法を用いても、表面波の抽出が困難な区間もあり、今後はノイズ源の考察や解析手法の向上を行い、測線全体における浅部構造の空間分布を推定する予定である。
(謝辞)今回の観測にあたりまして、国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所のご協力のもと、国土交通省所有の光ファイバーケーブルを使用させていただきました。