The 2023 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Sep. 16th)

Regular session » S16. Subsurface structure and its effect on ground motion

[S16P] PM-P

Tue. Oct 31, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P3 (F205 and 6 side foyer) (Hall Annex)

[S16P-01] Site amplification correction of OBS data for regular and slow earthquakes

*Shunsuke TAKEMURA1, Kentaro Emoto2, Suguru Yabe3 (1. ERI, UTokyo, 2. Kyushu Univ., 3. AIST)

臨時観測に加え,観測技術の発展によりDONETやS-netといった定常海底地震観測記録が増えてきた.長周期成分や1秒程度までのP波を用いることで,海域の地震や浅部超低周波地震のCMT解析が実施されている(例えば,Nakano et al., 2018; Yamaya et al., 2022; 山谷・他,本大会).1秒以下の短周期を用いることで,微小地震や浅部微動の解析も進められている(例えば,Yabe et al., 2019, 2021).短周期成分には海底面表層のサイト増幅効果が顕著に見られ,それらを補正することで地震現象の定量解析が可能となる.海底地震計の場合,コーダ波規格化法によるサイト増幅の補正は困難である(Takemura et al., 2023)ため,堆積層に対し鉛直下方から入射した実体波を用いたサイト増幅の推定手法が用いられる(例えば,Kubo et al., 2018; Yabe et al., 2019).DONET観測点の特に水平動では,F-netと比べて5~20倍程度のサイト増幅が推定されている.しかし,浅部微動などの震源は浅く,輻射された地震波は海底下の厚い堆積層へ斜め入射し,堆積層内にトラップされ複雑な波形形状と振幅パターンを示す(Takemura et al., 2020).浅部スロー地震の震源解析には,海底地震計データに含まれる厚い堆積層によるトラップ効果と海底下表層のサイト増幅の両方を丁寧に考慮する必要がある.そこで,合成波形を用いて海底面下表層のサイト増幅と堆積層の寄与を定量的に見積もることを試みる.
本研究では,DONET 1D(Nakano et al., 2013)の1次元P波構造にBrocher (2005, 2008)による経験則により他のパラメーターを与え,波数積分法(Herrmann, 2013)によりGreen関数を合成した.この構造モデルの最小S波速度は0.6 km/sであり,さらに低速度な層の影響は含まれていない.震源の深さを8.3 km(プレート境界),20 km,40 kmと3種類用意した.また,DONET 1D構造の堆積層を地殻物質に置き換えた,堆積層なしの1次元構造モデルも作成し、堆積層有無による波形の形状と振幅の差について調べた.1-2, 2-4, 4-8 Hzの周波数帯について特徴を調べた.
深さ20 kmと40 kmの場合,合成されたDONET1DのGreen関数はP波・S波がパルス的であり,厚い堆積層の影響で堆積層を仮定していないGreen関数と比べて,振幅は1.5倍程度大きくなった.すなわち鉛直下方入射を仮定し推定した海底地震計の10倍以上のサイト増幅の殆どは,海底下極表層によるものと考えられる.一方で,浅部微動を踏まえ,プレート境界に震源を仮定した場合,堆積層への斜め入射により堆積層内へ地震波がトラップされ,波形エンベロープの継続時間伸び,振幅も倍以上に大きくなった.これらの効果は,鉛直下方入射を仮定したサイト増幅推定には含まれておらず,厚い堆積層を仮定した合成波形エンベロープを浅部微動などの震源が浅い現象の解析に取り込むべきことを示唆する.

謝辞  防災科研DONET https://doi.org/10.17598/NIED.0008 およびF-net https://doi.org/10.17598/NIED.0005 を利用しました.本研究は、JSPS科研費21H05203,21H05205および21K03696の助成により実施されました.