[S16P-03] Microtremor exploration in Okayama City
中国地方の主要都市の一つの岡山市域では,危惧される南海トラフの地震などで,同南部の一部で強い揺れが想定されている(地震調査研究推進本部(2020)).J-SHIS(防災科学技術研究所(2023))による深部地盤モデルでは,例えば,岡山県庁,市役所や拠点病院,岡山駅など重要機関構造物の集まる地域のS波速度(Vs) 3000 m/s相当層の地震基盤(ここではVs 3100 m/s)上面は,深さ130~250 m程度,Vs 1100 m/s層上面は20~30 mの構造が示されており,地表面の地震動の増幅率は1.5~1.8倍前後である.また,それらの地域内のK-NET岡山(OKY011)でのボーリングでは,深さ15 mでVs 360 m/s,これらより中国山地寄りのKiK-net岡山(OKYH03)では,深さ20mでVs 1551 m/s,80 mでVs 2422 m/sの層に達するとされ,三者三様の構造が示されている.この地域の地震基盤上面深度は,数百mを超えるような構造にはなっていないと推察されるが,岡山都市圏での地震基盤構造をはじめ,地表部分の速度構造も明確にしておくことは,地震防災上重要なことと考えられる.
そこで,本発表では,岡山大学津島キャンパスにおいて,微動アレイ観測を実施し,そのデータをもとに速度構造を推定することを試みた内容を報告する.観測には,強震計(3成分計)を7台使用し,現場の状況に応じて任意形状の2つの大きさの三角形の頂点とその重心に設置することによって,微動データを収録した.この観測(2018年12月実施)では,『中規模のアレイ』として,大(機器間距離100~330 m)中(同50~180 m)小(同20~90 m)の3つの三角形アレイサイズに対して,20~60分間のデータ収録を行った.こうして得られたデータをFK法(Capon(1969))により,周期0.5~2.0秒の範囲の位相速度を算出した.その際,周期ごとの位相速度の値にばらつきが大きかったため,アレイの中心点のH/Vスペクトル比をおおむね説明する速度構造を推定し,その構造モデルから算出した位相速度を参照にした.これを用いて,既存の複数の地下構造情報をもとに探索範囲を設定し,GAによる逆解析で速度構造を推定した(暫定モデル例:Vs 0.94, 1.55, 2.25, 3.38 km/s,各層厚0.17, 0.05, 1.613 km).しかしながら,周期0.5秒以下の短周期の帯域の位相速度が得られなかったことから,中規模アレイの中心点とほぼ同じ場所を中心とした場所で数~十m程度の『小規模のアレイ』を組み,微動観測を2023年8月に追加実施した.そこでは,加速度計(1成分計)を4台使用し,それを正三角形の頂点および重心位置に設置して,短周期帯域に焦点をあてた位相速度を算出することとした.追加観測によるデータをSPAC法やCCA法(Cho(2020))などによって,『小規模のアレイ』の位相速度を見積もることができ,その両者は周期0.5秒付近で接続できそうである.再度逆解析を行うことによって,浅い部分の低速度層を含めた微動データに基づくS波速度構造を推定することができると考えられる.また,『中規模のアレイ観測』におけるアレイ内での19点の機器間の地盤震動特性の比較もでき,過去のアレイ観測によるデータを活用した検討を盛り込む予定でもある.
微動アレイ観測には,岡山大学理学部の学生さんにもご協力頂きました.また,この研究の一部は,令和5年度拠点間連携共同研究およびJSPS科研費基盤(B) 22H01311の補助を受けています.関係者各位に記して,御礼申し上げます.
そこで,本発表では,岡山大学津島キャンパスにおいて,微動アレイ観測を実施し,そのデータをもとに速度構造を推定することを試みた内容を報告する.観測には,強震計(3成分計)を7台使用し,現場の状況に応じて任意形状の2つの大きさの三角形の頂点とその重心に設置することによって,微動データを収録した.この観測(2018年12月実施)では,『中規模のアレイ』として,大(機器間距離100~330 m)中(同50~180 m)小(同20~90 m)の3つの三角形アレイサイズに対して,20~60分間のデータ収録を行った.こうして得られたデータをFK法(Capon(1969))により,周期0.5~2.0秒の範囲の位相速度を算出した.その際,周期ごとの位相速度の値にばらつきが大きかったため,アレイの中心点のH/Vスペクトル比をおおむね説明する速度構造を推定し,その構造モデルから算出した位相速度を参照にした.これを用いて,既存の複数の地下構造情報をもとに探索範囲を設定し,GAによる逆解析で速度構造を推定した(暫定モデル例:Vs 0.94, 1.55, 2.25, 3.38 km/s,各層厚0.17, 0.05, 1.613 km).しかしながら,周期0.5秒以下の短周期の帯域の位相速度が得られなかったことから,中規模アレイの中心点とほぼ同じ場所を中心とした場所で数~十m程度の『小規模のアレイ』を組み,微動観測を2023年8月に追加実施した.そこでは,加速度計(1成分計)を4台使用し,それを正三角形の頂点および重心位置に設置して,短周期帯域に焦点をあてた位相速度を算出することとした.追加観測によるデータをSPAC法やCCA法(Cho(2020))などによって,『小規模のアレイ』の位相速度を見積もることができ,その両者は周期0.5秒付近で接続できそうである.再度逆解析を行うことによって,浅い部分の低速度層を含めた微動データに基づくS波速度構造を推定することができると考えられる.また,『中規模のアレイ観測』におけるアレイ内での19点の機器間の地盤震動特性の比較もでき,過去のアレイ観測によるデータを活用した検討を盛り込む予定でもある.
微動アレイ観測には,岡山大学理学部の学生さんにもご協力頂きました.また,この研究の一部は,令和5年度拠点間連携共同研究およびJSPS科研費基盤(B) 22H01311の補助を受けています.関係者各位に記して,御礼申し上げます.