9:15 AM - 9:30 AM
[S18-01] Public Awareness Survey on the Recognition and Response of the Nankai Trough Earthquake Information
2019年から発表されている「南海トラフ地震臨時情報(以下,臨時情報)」は,地震発生時期等の確度の高い予測は困難であるという前提のもと,「臨時情報(巨大地震警戒)」が発表されても,日常生活を行いつつ,日頃からの地震への備えの再確認など,個々の状況に応じて,一定期間地震発生に注意した行動をとることが推奨されている.しかしながら,このような前提に関する説明が,国から一般への普及啓発資料には明示されていないため,臨時情報に対しても,従来の東海地震予知と同じように高い確度での地震発生予測が可能であるとの認識がもたれている可能性がある.そこで本研究では,そもそも臨時情報が発表された場合,どのくらいの地震発生確率だと認識されているのか,その確率だとどのような防災対応を取るのか,などを明らかにするためのインターネット調査を実施した.アンケート調査は2023年7月4日〜7月7日に実施した.対象は,東京都,静岡県,愛知県,大阪府,広島県,徳島県,高知県,宮崎県の8都府県の男女各40名の5世代(20,30,40,50,60代),合計3200人である.なお,徳島県男性20代(31名),高知県男性20代(25名),宮崎県男性20代(27名)に対しては,40名のサンプルが集まらなかったので,不足分を同性他世代に割り振って各県総計400名に調整した.図は『南海トラフ地震臨時情報の内,「巨大地震警戒」が発表された場合,警戒(注意)期間である「1週間以内」に,大地震が起こる確率はどの程度だと思いますか?最も近いものをお選びください』に対する結果である.発生確率80%以上と認識している割合が全体の4割以上になっている.発生確率50%以上でみると全体の7割以上となる.男女別で見ると,女性の方が発生確率を高く考えている人が多く,また,南海トラフ地震で大きな被害が予想される県(宮崎県,高知県,徳島県)でも発生確率を高く考えている人が多い.なお,国のガイドラインによれば,最初の地震が起きてから1週間以内にマグニチュード8クラスの後続地震が発生する確率は,半割れケース(臨時情報(巨大地震警戒)が発表される場合)で6.8%であり,この情報への期待は「実力」を大きく超えたものになっている.情報の認知度について,『南海トラフ沿いで巨大地震の発生する可能性が普段より相対的に高まった場合には,気象庁から「南海トラフ地震臨時情報」が発表されることになっています.この情報についてどの程度ご存じですか』という質問で聞いたところ,「インターネットなどで確認し,よく知っている」と選択したのは1〜2割程度,「テレビ番組の解説などで,どのような情報か聞いたことがある」は2〜3割程度と低かった.逆に言えば,半分以上がよく分かっていない(「耳にしたことはあるが,具体的にどのような情報かはわからない」「知らない」)ことを示している.臨時情報が出た場合の防災対応行動については,『南海トラフ地震臨時情報が出ても,実際には大地震が起きないことが想定されます.情報が発表されたあと,1週間以内に大地震が起こる確率がわかっていた場合,あなたはどのような行動をとりますか』という質問で聞いた.具体的には,地震の発生確率として80%,50%,25%,10%,5%,1%,0.1%の7つの確率を提示し,「地震が起きたときのことについて家族と話し合う」「非常持ち出し品の確認をする」「室内の家具固定を確認し,応急対策をする」「自宅の中の安全な場所で寝る」「食糧や燃料を買い込む」「会社や学校は休む」「近くに住む親戚や友人の家に避難する」「地域の避難所へ行く」という8種類の行動実施の意思を聞いた.地震発生確率によってとられる行動の割合は,すべての都府県,すべての想定確率でほぼ同じで,大きな違いは見られなかった.地震発生確率50%までは「何もしない」人は少なく,9割の人は何らかの行動をとると回答した.地震発生確率が低下するにつれ,何もしないとした人は増え,1%まで下がると50%以上の人が何もしないと回答した.地震の発生確率が低くなるにつれ行動の実施率が低下する傾向はすべての想定行動で共通していた.行動を実施する割合は項目によって異なり,「会社や学校は休む」「近くに住む親戚や友人の家に避難する」「地域の避難所へいく」の3つは,地震の発生確率が80%と高い場合でも,実施される割合は全ての都府県で3割を超えることはなかった.「地震が起きたときのことについて家族と話し合う」「非常持ち出し品の確認をする」「食料や燃料を買い込む」の3つは地震発生確率が80%,50%と高い場合には,実施される割合はすべての都府県で6割を超えた.「自宅の中の安全な場所で寝る」はやや低く,実施される割合は最大でも4割程度であった.地震発生確率によってとられる行動の割合は,すべての都府県でほぼ同じ値となり,大きな違いは見られなかった.