11:15 AM - 11:30 AM
[S01-09] Detailed P-wave velocity structure of the uppermost crust off Sanriku, Japan using DAS, OBS and controlled seismic sources.
海域におけるP波速度構造は,制御地震探査および屈折法により推定されてきた.推定されるP波速度構造の水平分解能は受信点と発信点を結ぶ波線数によって決まる.そのため,観測点数を増やすことで,高い水平分解能でP波速度構造を推定できると考えられる.しかし,これまでの制御地震探査では,設置コストの高い海底地震計を受信点に使用することが一般的であり,その設置間隔は稠密な場合でも数km程度に限定される.その一方で,近年,Distributed Acoustic Sensing(以下 DAS)が地球科学分野に応用されるようになり,光ファイバをセンサとして,海域でも歪みを数m間隔で数十km以上の連続長距離観測が行えるようになった.このDASの観測点間隔は,海底地震計のそれと比較して稠密であり,DASデータに対して制御地震探査および屈折法を適用することにより,これまでとは格段に空間分解能が高いP波速度構造を推定できると考えられる.また,DASの観測点間隔はハイドロフォンストリーマーと同程度であるが,DASの各受信点は海底に固定されており,オフセット距離が長い地震動記録を解析に使用することができる.そのため,DASデータは 浅部から深部までのP波速度構造の高分解能推定へ適していると考えられる.また,海面と比較して,海底の方が,一般的にノイズが小さいことから,SN比が比較的に良い記録が得られると期待される(Jones 1999).
そこで,本研究では,岩手県三陸沖に敷設された光ケーブル式海底地震・津波観測システムを利用したDAS観測記録を用いて,ケーブル下の最上部地殻の詳細な地震波構造を推定した.まず,2020年に行われた制御地震探査DAS・海底地震計(OBS)データを用いてP波速度構造を推定した.制御震源にはエアガン4基を使用し,発震間隔は約100m,DASの観測点間距離は約5mである.P波速度構造はTau-sum inversion法 (e.g. Shinohara et al. 1994) により推定した.DAS記録とOBSに対して共通受信点記録を作成し,それぞれ距離-時間領域からτ(intercept time)-p(ray parameter)領域への変換を行った.DAS記録については,超稠密であることを利用して,隣接する51受信点のDAS記録を重合してτ-p領域変換を行い,1次元P波速度構造を求めた.また,DASデータは長い区間に渡って,連続的に収録されていることから,約250m間隔に1次元P波速度構造を推定し,それらを配置することで,測線下の二次元P波速度構造を作成した.受震点にOBSを用いた場合は,OBS直下の一次元構造に限定されるが,DASは長距離に渡って,観測点密度が飛躍的に高いため,空間的に連続した1次元速度構造を推定することにより,2次元構造を求めることができる(添付図1).推定されたP波速度構造は,P波速度とその深さ方向の勾配が異なる3層からなっており,各層目のP波速度の平均値は, それぞれ, 1.73 2.30, 4.40 km/sであり,各層の境界の深さは,それぞれ, 2 km以浅,2 – 5 kmである.稠密なDASデータを使用したことにより,顕著なP波速度構造の水平不均質が明らかにすることができた.例えば,第1層と第2層の速度不連続面は,深さ2.0 km程度から3.0 kmに水平距離50 –55 kmで急増することが把握された.さらに,本研究では,得られた2次元速度構造とシングルチャンネルハイドロフォンストリーマーから得られた反射断面との比較を行なった.その結果,速度境界の水平方向の不均質構造と反射断面における連続する反射点との間に良い整合性があることがわかった.
反射法では,水平分解能が高い反射断面を得ることが可能であるが,精度の高いP波速度を得ることができない. その一方で,稠密なDASデータを用いた屈折法であれば,精度の高いP波速度構造を反射断面と同程度な水平分解能で推定できる. また,近年,常時微動表面波解析をDASデータに適用することで,海域における堆積層・最上部地殻のS波速度構造を高分解能が実現している (e.g., Fukushima et al. 2022).この手法と本研究で提案するDASデータを用いた制御地震探査と組み合わせることで, P波速度とS波速度の比であるVp/Vsの分布を数km以下の水平分解能で把握することができる.このVp/Vsは空隙率や間隙流体圧の推定へ重要なパラメータであるため(e.g., Dvrokin et al. 1999),今後,断層特性の評価などをはじめとする様々な研究分野への応用が期待できる.
そこで,本研究では,岩手県三陸沖に敷設された光ケーブル式海底地震・津波観測システムを利用したDAS観測記録を用いて,ケーブル下の最上部地殻の詳細な地震波構造を推定した.まず,2020年に行われた制御地震探査DAS・海底地震計(OBS)データを用いてP波速度構造を推定した.制御震源にはエアガン4基を使用し,発震間隔は約100m,DASの観測点間距離は約5mである.P波速度構造はTau-sum inversion法 (e.g. Shinohara et al. 1994) により推定した.DAS記録とOBSに対して共通受信点記録を作成し,それぞれ距離-時間領域からτ(intercept time)-p(ray parameter)領域への変換を行った.DAS記録については,超稠密であることを利用して,隣接する51受信点のDAS記録を重合してτ-p領域変換を行い,1次元P波速度構造を求めた.また,DASデータは長い区間に渡って,連続的に収録されていることから,約250m間隔に1次元P波速度構造を推定し,それらを配置することで,測線下の二次元P波速度構造を作成した.受震点にOBSを用いた場合は,OBS直下の一次元構造に限定されるが,DASは長距離に渡って,観測点密度が飛躍的に高いため,空間的に連続した1次元速度構造を推定することにより,2次元構造を求めることができる(添付図1).推定されたP波速度構造は,P波速度とその深さ方向の勾配が異なる3層からなっており,各層目のP波速度の平均値は, それぞれ, 1.73 2.30, 4.40 km/sであり,各層の境界の深さは,それぞれ, 2 km以浅,2 – 5 kmである.稠密なDASデータを使用したことにより,顕著なP波速度構造の水平不均質が明らかにすることができた.例えば,第1層と第2層の速度不連続面は,深さ2.0 km程度から3.0 kmに水平距離50 –55 kmで急増することが把握された.さらに,本研究では,得られた2次元速度構造とシングルチャンネルハイドロフォンストリーマーから得られた反射断面との比較を行なった.その結果,速度境界の水平方向の不均質構造と反射断面における連続する反射点との間に良い整合性があることがわかった.
反射法では,水平分解能が高い反射断面を得ることが可能であるが,精度の高いP波速度を得ることができない. その一方で,稠密なDASデータを用いた屈折法であれば,精度の高いP波速度構造を反射断面と同程度な水平分解能で推定できる. また,近年,常時微動表面波解析をDASデータに適用することで,海域における堆積層・最上部地殻のS波速度構造を高分解能が実現している (e.g., Fukushima et al. 2022).この手法と本研究で提案するDASデータを用いた制御地震探査と組み合わせることで, P波速度とS波速度の比であるVp/Vsの分布を数km以下の水平分解能で把握することができる.このVp/Vsは空隙率や間隙流体圧の推定へ重要なパラメータであるため(e.g., Dvrokin et al. 1999),今後,断層特性の評価などをはじめとする様々な研究分野への応用が期待できる.