The 2024 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 22nd)

Regular session » S01. Theory and analysis method

[S01P] PM-P

Tue. Oct 22, 2024 5:15 PM - 6:45 PM Room P (Main Hall (2F))

[S01P-12] Estimation of medium characteristic of rock samples with irregular heterogeneity

*Nana YOSHIMITSU1, Koyo MATSUDA1 (1. Kyoto University)

資源採掘や地熱発電などのエネルギー開発の現場や,CO2の地中貯留や放射性廃棄物の地層処分など,様々な現場で地中の利活用が進んでいる.地震波や人工的に透過させた弾性波は,地下状態のモニタリングに有効と考えられている.したがって,地中を透過した弾性波と,媒質の不均質特性の関係を知ることは非常に重要である.媒質の不均質性と波長の関係は,確率論的な考え方の下,ランダム不均質として表現されることが多い(Sato and Fehler, 1998).しかし,現実にはランダム不均質とは異なる不規則な不均質も存在すると考えられる.Matsuda et al. (2023, AGU)は,大小の空隙を含む岩石や,石基に対して不均質が占める体積が大きい岩石など,視覚的に不規則な不均質が認められた試料を用いて,弾性波の透過波試験を実施し,波動場の乱れを評価した.本研究では,彼らが用いた試料の不均質特性を定量的に評価し,ランダム不均質との相違を調べる.

岩石試料の不均質場の特徴推定は,西澤・他(2001)が試料の表面写真を元に調べた例に倣った.解析には青森県でサンプリングした,直径2 – 30 mm程度の様々な規模の空隙を無作為に含む安山岩質の試料(AO1),鉱物で満たされた直径2 - 3 mm程度の不均質が試料全体に密に分布した安山岩質の試料(AO2)を利用した.試料を切断して作成した薄片を写真撮影し,500 x 500 pixelの画像として計算機に取り込んだ.この際,写真は同じ光源,同じ設定で撮影された.画像の各行ごとに濃淡情報を取り出し,500行分の自己相関関数を計算した.さらに,不均質の特徴的スケールをa,速度揺らぎの大きさをεと置き,指数関数型の速度揺らぎを想定した場合と比較した.

各試料について得られた500の自己相関関数のばらつきは大きく,複数の異なる周期的ピークを示す場合や,なだらかに減衰する場合など,様々な形状を示した.この自己相関関数に指数関数型のランダム不均質を仮定して最適なa,εの値を推定したところ,AO1ではa = 1.5 mm, ε = 0.04,AO2ではa = 1.9 mm, ε = 0.05という結果を得た.しかし,これらのパラメタから得られる関数形状は解析から得られたデータ形状を十分に表しているとは言えなかった.一般的な花崗岩試料の不均質場の特徴については,指数関数型で表現されるという結果が得られている(西澤・他, 2001)が,本解析で得られた自己相関関数は花崗岩の場合とは異なった.ランダム不均質を表現する関数として,von Karman型やGaussianの自己相関関数形状が採用されることもあるが,これらも本解析で得られた関数形状には当てはまらなかった.この結果から,本研究で扱った不規則な不均質形状を持つ試料のように,一般的なランダム不均質媒質では表現しきれない媒質が自然フィールドにも存在する可能性が示唆された.