9:00 AM - 9:15 AM
[S02-01] Trial of a Condition Assessment Method for River Levees Using Optical Fiber DAS
通信用に敷設されている光ファイバのうち、未使用の芯線(ダークファイバ)を活用し、計測機器(インテロゲータ)を接続することにより、ケーブル軸方向に生じた歪を極めて高密度に計測するDAS(Distributed Acoustic Sensing)が地震観測等の分野で注目されている。このような技術を活用することで、河川堤防のような長大区間にわたる構造物や周辺の地盤に生じた現象について、極めて稠密かつリアルタイムに把握することが可能である。また、近年課題となっている、インフラモニタリングに関わる人的コストの削減にも貢献可能と考えられる。そこで、国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)と応用地質株式会社(以下、OYO社)は、地震動予測のための地盤モデル高度化、および平時から災害時に活用可能な都市インフラのモニタリング技術開発を目的として、河川堤防に埋設された光ファイバを用いたDAS計測による河川堤防の状態把握手法に関する共同研究を実施している。本稿ではこの共同研究における1年目の成果について報告する。令和5年11月27日から12月1日にかけての約4日間にかけて、阿賀野川河川事務所内にインテロゲータ(Sintela社ONIX MK.1.0)を設置し、阿賀野川および早出川の堤防沿いに約25kmにわたって敷設されている光ファイバケーブルと接続してDAS観測を行った。なお、河川事務所から離れた後半の13kmでは低周波領域のS/Nを向上させた高感度計測を実施した。なお、通常計測・高感度計測ともにゲージ長は6.4m、サンプリング間隔は6.4m、サンプリング周波数は500Hzに設定した。観測開始後、最初にDAS観測記録のチャンネル(ケーブル長)と実際の光ファイバ埋設位置を対応付けるための試験(タップテスト)を、マンホール付近を中心に21箇所で実施した。結果、埋設位置は川裏法肩、法尻、堤防道路下等、場所により異なるが、堤防周辺にケーブルが埋設されていることを確認した。次に、光ファイバDASを用いた地盤モニタリング結果との比較検証を目的として、早出川堤防上の高感度DAS観測実施区間のうち0.3㎞区間において微動アレイ探査および表面波探査を実施し、S波速度の二次元断面を求めた。微動アレイ探査はOYO社製McSEIS-ATと固有周波数2Hzのジオフォンを使用した。受振点を5m間隔で15箇所設置し、5箇所をオーバーラップさせる方法で、測線方向に設置場所を移動させながら、合計7回の測定を行った。各測定時間は15分間とした。表面波探査はGeometrics社製Geodeとランドストリーマーを使用した。ランドストリーマーにはジオフォンが1m間隔で24個設置されており、それらを移動しながら2m毎に起振を行った。30分間のDAS観測記録を用い、Hayashi et al. (2021,Geophysics)の方法を用いて20m毎に位相速度を推定し、1/3波長による初期モデルから逆解析を行うことにより算出した結果、約1.2km区間における深さ約100m以浅のS波速度断面を得ることができた。これを微動アレイ探査における半日間の観測記録により推定した、上記のうち一部(約300m区間)のS波速度構造断面と比較した結果、約60m以浅において整合的な記録が得られた。また、同一区間において表面波探査記録から推定したS波速度構造断面とも、約15m以浅においては整合的な記録が得られた。以上からDASを用いることにより微動アレイ探査や表面波探査と比較して長大区間のS波速度構造を、より短期間の観測により推定可能であることが示された。さらに、阿賀野川堤防の約9km区間(高感度DAS観測実施)における11月28日21時から30分間の観測記録を用いて深度50m以浅のS波速度構造断面を算出した(添付図)。光ファイバ設置位置の標高を全て把握できていないため、厳密には同じ標高での比較にはなっていないが、測線付近のボーリングデータによるN値分布や堤防の基礎地盤の土質分布と比較したところ、DAS観測により得られたS波速度構造と整合的であることがわかった。このように、DAS観測記録を利用することで、従来の物理探査手法と比較して効率的に地下構造を推定することが可能であることが示された。今後も河川堤防を対象としたDAS観測の共同研究を継続し、より感度の高い観測が可能なインテロゲータを用いた観測精度の検証や、交通量のモニタリングや地震・水害等による河川堤防の状態変化の早期検知等に活用する技術開発を行っていく予定である。
謝辞:今回のDAS計測にあたっては、国土交通省北陸地方整備局阿賀野川河川事務所の関係者の方々に多大なご協力をいただいた。ここに記して謝意を表す。
謝辞:今回のDAS計測にあたっては、国土交通省北陸地方整備局阿賀野川河川事務所の関係者の方々に多大なご協力をいただいた。ここに記して謝意を表す。