9:45 AM - 10:00 AM
[S02-04] New deployment of seismic monitoring network by DAS, utilizing offshore windfarm facilities
光ファイバ自体をセンサとして、陸上局より海底に通信用として敷設された光ファイバに狭小パルスを送出し、その散乱波から散乱地点の振動を検知するDAS(Distributed Acoustic Sensing: 分布型音響センサ)方式による地震観測の実績がわが国でも報告され、海洋域での新しい恒常的地震観測手法として注目されている(Ide et al., 2021、Matsumoto et al., 2021、Baba et al., 2023; 2024)。しかしながら、海底光ファイバケーブルの確保は大きな課題になっている。
最近数年間で、日本でも洋上風力発電がクリーンエネルギー源として注目され、すでに2、3の洋上風力発電基地が商用ベースで稼働を始めている。この洋上風力発電で着目すべきは、発電された電力の送電線に組み込まれた通信用光ファイバである。この光ファイバには、送電線監視用としてのDASやDTS(Distributed Temperature Sensing: 分布型温度センサ)が組み込まれるケースがある。日本で稼働した洋上風力発電システムでは、DTSを用いて温度を計測し、ホットスポットを検知するレベルの用途にとどまっているが、欧米では、その温度変化の分析から許容電流値を算出し、設備の効率的な利用を行うことで電力事業者間の融通にも貢献している。加えて温度変化の分析から送電線の埋設状態も計算し、海中への露出が起きる前に予防措置を講ずる仕組みまで準備されている。更に、欧米の洋上風力発電では、ほとんどのシステムでDTSに加えDASが組み込まれている。これは漁網や投錨による外的損傷事故が発生した際に、その場所や時刻、被害の範囲の早期検知と警報発出、また場合によってはその航跡を分析することにより、原因船の早期特定にも重要な役割を果たしている。
ここでは海底送電線に組み込まれているDAS機能の地震観測への利活用を提案する。日本で現在稼働している、もしくは近々稼働する見込みの洋上風力発電施設では、通信用光ファイバの本数に余裕がある。この光ファイバの近端にDAS計測装置を接続することにより、従来観測空白域であった沿岸域で、数十km長の高密度海底地震観測網が構築される。ただし、以下に挙げる検討すべき諸条件がある。
(1) 信号方式
現在、DAS装置の出力の殆どは信号方式がhdf5である。一方、国内の地震情報のデータベースはSEG-Yで構築されており、これらを統合する仕組みが必要になる。
(2) 地盤カップリング
これまで国内で海底域で地震観測に用いられた光ファイバは通信用ケーブルの一部であるが、今後洋上風力発電に使用される送電線は、直径、重量ともに大きい(50 kg/m程度)。埋設される土壌とのカップリングでどの程度地震センサとしての機能を実現できるかを検証する必要がある。
(3) サンプリング周波数とデータ保存周波数
地震観測に用いられるサンプリング周波数は0.5~1K Hz程度である。一方、洋上風力送電線監視で外的損傷事故検出に用いられる周波数は一般的に1K Hzと同程度である。地震観測では最近resamplingによるデータの圧縮を行っており、この圧縮率を共通化する必要がある。
(4) 情報の統一化
DASによる観測は、極めて多種類で大容量の情報を出力する。この為、DASメーカがそれぞれの独自性をアピールするよりも、SEAFOM(Subsea Fiber Optical Monitoring Network)の形式に従うなど共通化が望ましい。
(5) データの保存と収集
洋上風力発電の場合、送電線の距離にも依るが数TB/日程度のデータが出力される。一方、電力事業者でのデータ保存期間はせいぜい数週間であるため、継続的にデータを保存するメディアが必要になる。期間中に何らかの事故があり、その分析が必要としても、この程度の期間を遡れば十分である。一方事故がない場合はデータを保存する必要がないため、削除(又は上書き)することになる。従って、その期間に地震観測として必要なデータを収集する必要がある。この為にも通信回線による接続が不可欠になる。
(6) 電力業界との連携
光ファイバを含む送電線の敷設、DAS装置の設置等の初期投資面においては電力事業者の貢献なくして成り立たない。長期的運用を見据えた連携体制の構築が必要である。
(7) タービンの振動ノイズ
洋上風力発電では極めて大きい風車が回転する事による振動が発生する。この振動がDASによる地震観測にどの程度の範囲で影響を与えるかの実証実験も必要になる。
(8) 浮体式洋上風力への布石
現在の国内での稼働例はすべて海底への着床式であるが、今後、沖合に展開するに従い浮体式が普及する。これに伴いDAS装置の測定距離を伸ばす方法、途中の洋上変電所等での観測機器設置などの構成が考えられる。更にはライザーケーブ等の、浮体式に応じた送電線が開発される。この場合の地震観測網に与える影響についても考慮する必要がある。
洋上風力発電の利活用による海底地震観測網の構築は、工夫次第で設置自治体への還元が可能である。電力事業者との連携を図り、実データに基づいた諸課題検討に取り組むことによって、効果的な地震観測網の構築を推進する。
最近数年間で、日本でも洋上風力発電がクリーンエネルギー源として注目され、すでに2、3の洋上風力発電基地が商用ベースで稼働を始めている。この洋上風力発電で着目すべきは、発電された電力の送電線に組み込まれた通信用光ファイバである。この光ファイバには、送電線監視用としてのDASやDTS(Distributed Temperature Sensing: 分布型温度センサ)が組み込まれるケースがある。日本で稼働した洋上風力発電システムでは、DTSを用いて温度を計測し、ホットスポットを検知するレベルの用途にとどまっているが、欧米では、その温度変化の分析から許容電流値を算出し、設備の効率的な利用を行うことで電力事業者間の融通にも貢献している。加えて温度変化の分析から送電線の埋設状態も計算し、海中への露出が起きる前に予防措置を講ずる仕組みまで準備されている。更に、欧米の洋上風力発電では、ほとんどのシステムでDTSに加えDASが組み込まれている。これは漁網や投錨による外的損傷事故が発生した際に、その場所や時刻、被害の範囲の早期検知と警報発出、また場合によってはその航跡を分析することにより、原因船の早期特定にも重要な役割を果たしている。
ここでは海底送電線に組み込まれているDAS機能の地震観測への利活用を提案する。日本で現在稼働している、もしくは近々稼働する見込みの洋上風力発電施設では、通信用光ファイバの本数に余裕がある。この光ファイバの近端にDAS計測装置を接続することにより、従来観測空白域であった沿岸域で、数十km長の高密度海底地震観測網が構築される。ただし、以下に挙げる検討すべき諸条件がある。
(1) 信号方式
現在、DAS装置の出力の殆どは信号方式がhdf5である。一方、国内の地震情報のデータベースはSEG-Yで構築されており、これらを統合する仕組みが必要になる。
(2) 地盤カップリング
これまで国内で海底域で地震観測に用いられた光ファイバは通信用ケーブルの一部であるが、今後洋上風力発電に使用される送電線は、直径、重量ともに大きい(50 kg/m程度)。埋設される土壌とのカップリングでどの程度地震センサとしての機能を実現できるかを検証する必要がある。
(3) サンプリング周波数とデータ保存周波数
地震観測に用いられるサンプリング周波数は0.5~1K Hz程度である。一方、洋上風力送電線監視で外的損傷事故検出に用いられる周波数は一般的に1K Hzと同程度である。地震観測では最近resamplingによるデータの圧縮を行っており、この圧縮率を共通化する必要がある。
(4) 情報の統一化
DASによる観測は、極めて多種類で大容量の情報を出力する。この為、DASメーカがそれぞれの独自性をアピールするよりも、SEAFOM(Subsea Fiber Optical Monitoring Network)の形式に従うなど共通化が望ましい。
(5) データの保存と収集
洋上風力発電の場合、送電線の距離にも依るが数TB/日程度のデータが出力される。一方、電力事業者でのデータ保存期間はせいぜい数週間であるため、継続的にデータを保存するメディアが必要になる。期間中に何らかの事故があり、その分析が必要としても、この程度の期間を遡れば十分である。一方事故がない場合はデータを保存する必要がないため、削除(又は上書き)することになる。従って、その期間に地震観測として必要なデータを収集する必要がある。この為にも通信回線による接続が不可欠になる。
(6) 電力業界との連携
光ファイバを含む送電線の敷設、DAS装置の設置等の初期投資面においては電力事業者の貢献なくして成り立たない。長期的運用を見据えた連携体制の構築が必要である。
(7) タービンの振動ノイズ
洋上風力発電では極めて大きい風車が回転する事による振動が発生する。この振動がDASによる地震観測にどの程度の範囲で影響を与えるかの実証実験も必要になる。
(8) 浮体式洋上風力への布石
現在の国内での稼働例はすべて海底への着床式であるが、今後、沖合に展開するに従い浮体式が普及する。これに伴いDAS装置の測定距離を伸ばす方法、途中の洋上変電所等での観測機器設置などの構成が考えられる。更にはライザーケーブ等の、浮体式に応じた送電線が開発される。この場合の地震観測網に与える影響についても考慮する必要がある。
洋上風力発電の利活用による海底地震観測網の構築は、工夫次第で設置自治体への還元が可能である。電力事業者との連携を図り、実データに基づいた諸課題検討に取り組むことによって、効果的な地震観測網の構築を推進する。